3月決算発表もいよいよ大詰めを迎えています。決算発表期に特有の現象ですが、決算発表銘柄から、急騰急落する銘柄が出ています。12日は、陸運株に急騰するものが目立ちました。
(1)陸運(トラック輸送)株の上昇目立つ
11・12日に決算を発表し、12日の株価上昇率の高かったトラック輸送関連株
コード | 銘柄名 | 12日株価 | 前日比上昇率 | 前期営業利益 | 増益率 | 今期営業利益予想 | 増益率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9025 | 鴻池運輸 | 1370 | 6.4% | 93.6 | 17.9% | 105.0 | 12.2% |
9047 | 名糖運輸 | 775 | 5.9% | 4.8 | 6.6% | 7.5 | 56.9% |
9065 | 山九 | 593 | 6.7% | 212.5 | 28.3% | 220.0 | 3.5% |
9066 | 日新 | 350 | 6.1% | 46.6 | 15.4% | 54.0 | 15.8% |
9068 | 丸全昭和運輸 | 428 | 2.6% | 47.7 | 11.2% | 51.0 | 6.9% |
【注】前期は2015年3月期、今期は2016年3月期。今期連結営業利益(会社予想)の出所は各社決算短信。業種分類は日新のみ倉庫運輸関連、その他は陸運業。
トラック輸送業は、前期に引き続き、今期も業績好調が見込まれます。業績好調が続いていることがわかり、12日の株価上昇率が高くなりました。
山九(9065)は12日13時に決算を発表し、その内容が好感されて13時以降に株価が急騰しました。それ以外の株は、11日15時以降に発表した決算内容を好感して12日に株価が上昇しました。
(2)株価指標(PERやPBRなど)から見て割安な陸運株
トラック輸送業は、長年、構造不況業種でした。内需が低迷する中で、過当競争が続いてきたからです。そのため、長い間、不人気株でした。最近、業績好調を好感して株価が上昇してきていますが、それでも、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などが低く、株価指標から見ると、割安な銘柄が多くなっています。
12日の株価上昇率の高かったトラック輸送関連株の株価バリュエーション
コード | 銘柄名 | PER:倍 | PBR:倍 | 配当利回り |
---|---|---|---|---|
9025 | 鴻池運輸 | 12.3 | 0.9 | 2.4% |
9047 | 名糖運輸 | 20.8 | 0.7 | 1.9% |
9065 | 山九 | 14.8 | 1.4 | 1.5% |
9066 | 日新 | 13.3 | 0.7 | 2.3% |
9068 | 丸全昭和運輸 | 10.0 | 0.6 | 2.1% |
【注】名糖運輸は、6月26日開催予定の株主総会における承認を前提に、2015年10月1日に株式会社ヒューテックノオリンとの経営統合を予定している。上の表のPERは、経営統合の影響を勘案しない名糖運輸のみの業績予想(会社予想)から計算した。名糖運輸は、中間期のみしか配当予想を出していない。同社配当利回りは、中間決算の配当利回りを年率換算したものである。
(3)多忙のトラック輸送業に料金引き上げ機運
トラック輸送業は、近年国内需要の拡大で復活の芽が出ています。無店舗販売の増加と景気回復を受けて多忙になってきています。国際物流を手がける会社は、国際物流も拡大してきています。
それでも、2013年までは、利益なき繁忙が続いていました。ドライバー不足が深刻化し、人件費が増加する中、十分な運賃引き上げができなかったからです。2013年までは料金引き上げが通りにくい中でコストアップが続く「利益なき繁忙」状態に置かれていました。
ところが、2014年から風向きが変わり始めました。ようやくトラック輸送業で料金引き上げが通るようになってきたのです。昨年は、まず日本通運(9062)、ヤマト運輸(9064)や佐川急便が料金引き上げを実施しました。大手がそろって値上げに動くことで、中小の事業者も料金を引き上げる余地が出ました。低迷していた輸送単価がようやく上昇に向かいつつあります。
(4)建設・土木産業と、トラック輸送業の共通点
建設・土木株とトラック輸送株には、3つの共通点があります。
- 近年、国内需要が拡大:建設・土木、物流とも需要が拡大基調です。
- 人手不足が深刻:日本中で人手不足が問題になっていますが、建設・土木技術者、トラック運転者の不足はとりわけ深刻です。
- 料金引き上げが通り始めた:建築単価・輸送単価がようやく上昇に向かいつつあります。
建築・土木業、トラック輸送業界とも、ようやく「利益なき繁忙」から「利益を伴う繁忙」に移行しつつあると考えています。
(5)決算内容を嫌気して急落した主な銘柄
- ファンケル(4921)
12日の株価は前日比8%下落しました。11日の決算発表にて、2016年3月期の営業利益(会社予想)が前年比▲63%の15億円と発表したことが嫌気されました。 - 石油資源開発(1662)
12日の株価は前日比7%下落しました。12日14時の決算発表にて、2016年3月期の営業利益(会社予想)が前年比▲72%の91億円と発表したことが嫌気されました。
(6)12日15時以降に好決算を発表した主な銘柄
- 2015年3月期の連結営業利益は前期比12%増の7,412億円でした。続く2016年3月期の営業利益(会社予想)は、11%増の8,200億円で、最高益を更新します。会社予想利益から計算される今期予想PERは14.6倍で、株価は割安と判断します。
KDDI(9433) - 三菱マテリアル(5711)
2015年3月期の連結営業利益は前期比8%増の718億円でした。続く2016年3月期の営業利益(会社予想)は、18%増の850億円です。会社予想利益から計算される今期予想PERは9.1倍で、株価は割安と判断します。 - ミクシィ(2121)
2015年3月期の連結営業利益は前期比110倍の526億円でした。続く2016年3月期の営業利益(会社予想)は、52%増の800億円で、最高益を大幅に更新します。会社予想利益から計算される今期予想PERは7.5倍で、株価は割安と判断します
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