4月30日の日経平均は急落し、▲538円の19,520円となりました。外国人投資家による日経平均先物の売りが下げを主導しました。

  • 1-3月の米GDPが年率+0.2%に急減速し、米景気への信頼感が大きく低下しました。
  • それでも米FRB(中央銀行)が今年利上げする方針であることが、嫌気されました。

アメリカ発の悪材料が日経平均急落のきっかけとなったのですが、NYダウよりも日経平均の下落率の方が大きくなりました。最近の日経平均は、国内投資家が売る中、外国人投資家の買いで上昇していました。そのため、外国人が売りに回った30日は、下げが大きくなりました。

また、4月30日午後に日銀の金融政策決定会合の結果が発表されました。事前予想通り、追加金融緩和はありませんでしたが、追加緩和を期待していた一部の外国人投資家には失望要因となったようです。

4月29日まででNYダウの年初来パフォーマンス+1.2%に対し、日経平均は+14.9%でした。日本株の上昇ピッチが速過ぎただけに、下げが大きくなりやすかった面もあります。なお、なお、4月30日のNYダウは、前日比195ドル安の17,840ドルと続落しています。

(1)米景気は急速に悪化?

IMFによる2015~16年の先進国GDP成長率見通し

  2015年 2016年
米国 3.1% 3.1%
日本 1.0% 1.2%
ユーロ圏 1.5% 1.6%

(出所:IMF)

IMFによると、2015~16年の成長率は、先進国では米国が一番高くなる見通しです。シェールガス・オイル革命で、安価な国産エネルギーを大量に獲得した米景気の勢いは、簡単には衰えないと考えられています。

ところが、2015年1-3月期の米GDP(速報値)は、前期比年率+0.2%でした。これでは、年率3.1%で成長する国に、とても見えません。1-3月は、アメリカの企業業績にも急ブレーキがかかりました。主要企業の平均EPS(一株当たり利益)は、前年比でマイナスであった可能性もあります。

米景気はなぜ、いきなりこんなに減速したのでしょうか?

(2)1-3月の米景気を悪化させたのは、一時的要因と構造的要因のミックス

1-3月の悪化要因には一時的なものが多く、今年後半にかけて米景気は再び成長率を高めていくと予想しています。ただし、ドル高による輸出の減少など、構造的要因もあるので今後の米経済の動向には注意を要します。

  • 一時的要因

    ◆港湾労働者による大規模ストライキ
    1-3月はこの影響で、物流や生産に悪影響が出ました。このストライキは既に終了しています。

    ◆寒波の影響で経済が停滞
    2年連続で寒波が米経済の足を引っ張りました。

  • 一時的と言い切れないものの、年後半にマイナス影響が薄れる見込みのもの

    ◆原油価格急落の影響
    エネルギー価格の低下は、エネルギー多消費国のアメリカ経済に最終的にはプラス影響をもたらすと考えられます。ただし、原油価格の下げピッチが速過ぎたために1-3月はマイナス効果が先行しました。シェールオイル掘削業者に破綻するところが出るなど、石油関連産業の利益が大きく減りました。また、資源開発関連の設備投資にも急ブレーキがかかりました。
    シェールオイルの生産が減り始めたことを受けて、年後半には原油価格が1バレル60~70ドルに反発すると予想されます。したがって、年後半には原油急落のマイナス影響は薄れると考えられます。一方、エネルギー価格低下が住宅投資や消費を支える効果は、年間を通じて続くと考えられます。

  • 構造的要因

    ◆ドル高が続いたためにアメリカの輸出競争力が低下している
    米経済は近年、IT・金融・消費関連産業中心に成長しており、輸出に依存する体質にはなっていません。ドル高のマイナス影響は現時点ではそんなに大きいとはいえません。ただし、ドル高による輸出減少が続くと、ボディーブローのように米経済にダメージを与えていく可能性はあります。

(3)下げ局面は日本株の良い買い場になると考えています

これから、日本の景気・企業業績の回復色が少しずつ強まっていくとの見方は変わりません。下げたところは買い場と判断しています。