休み前の28日の日経平均は、前日比75円高の20,058円でした。20,000円前後で大きくは上下とも動きにくい状況が続いています。ただし、今日の日経平均は下落して始まると考えられます。CME日経平均先物(円建て)は日本時間30日午前6時時点で、19,805円まで下落しています。

1-3月のアメリカのGDP(速報値)が前期比年率0.2%増に減速したことが嫌気されました。米港湾ストや寒波など一時的要因で悪化した面もありますが、ドル高で輸出が悪化するなど、構造的な要因も影響しています。

これを受けて、アメリカの利上げ時期は、12月までずれ込むとの予想が増えました。注目のFRB(アメリカの中央銀行)のイエレン議長の会見では、米景気の成長率が低下していることへの言及がありました。ただ、利上げの時期が遅くなると取れる内容ではあったものの、早期利上げの可能性を完全に否定する内容ではありませんでした。

日本が休みの間のNYダウの動きは以下の通りです。

  • 4月28日:18,110.14ドル(前日比+72.17ドル)
  • 4月29日:18,035.53ドル(同▲74.61ドル)

ドル円為替レート(日本時間30日午前6時)は1ドル119.10円です。米GDP減速で一時1ドル118.54円へドル安(円高)が進みましたが、イエレン会見が思った程ハト派ではなかったことから、再び119円台に戻しています。

(1)日経平均は大きく動かないが、個別銘柄は乱高下

28日は、利益の8割を株主に還元する方針を発表したファナック(6954)が一時前日比7%高まで買われました(大引けは3.3%高)。一方、米アプライドマテリアルとの経営統合が取りやめになると発表した東京エレクトロン(8035)は、前日比▲14%と売り込まれました。

今まさに2015年3月期の決算発表が佳境を迎えていますが、今回の決算発表では、日本企業の変化を感じさせる発表が増えています。以下の2つの変化を感じます。

  • 株主への利益配分重視への変化
  • 競争力回復に伴う経営者の自信回復

(2)株主の利益配分を積極化させる日本企業

ファナック(6954)は、連結配当性向(連結純利益から配当金に回す割合)を現在の30%から60%に引き上げると発表しました。これで、28日時点の予想配当利回りは2.1%に引き上がりました。ファナック(6954)は、自社株買いも機動的に行い、配当に自社株買いを加えた総還元性向を80%にする方針としました。株主との対話や株主還元に消極的な代表企業と見られていたファナック(6954)の大きな方針転換は、株式市場の期待を上回る内容でした。

トヨタ自動車(7203)は、個人株主が投資しやすいように、元本毀損リスクを抑えた特殊株式(AA型種類株式)を7月にも最大5,000億円発行すると発表しました。株式数増加による希薄化(1株当たりの株式価値の低下)を避けるために、新型株式の発行株数と同数の普通株を自社株買いで買い取る予定です。

トヨタ自動車(7203)は、元より増配や自社株買いを積極的に行う会社でした。それだけではなかなか個人株主が増えなかったために、さらに一歩踏み込んだ個人株主獲得の手を打ってきたわけです。自社株買いを行いながら個人株主を増やすための特殊株を発行することで、個人株主獲得に真剣に取り組む姿勢が感じられます。

この他にも、増配・自社株買いを発表する企業が多く、株主利益重視の流れは定着しつつあると思います。以下の2つの要因が株主利益重視の流れを強めていると思います。

  • 実質無借金になる企業が増加

    日本にはこれまで借金返済を優先するために株主への利益配分に消極的な企業がたくさんありました。近年、日本企業の財務内容は著しく改善し、実質無借金も増えています。借金が少なくなるにつれ、日本企業はキャッシュフローの使い道として、株主の利益配分を重視するようになっています。

  • 日本版スチュワードシップコード(責任ある機関投資家の諸原則)策定

    政府が旗振りをして、企業統治改革を進めています。政府の策定した日本版スチュワードシップコードを受け入れる機関投資家が増えた結果、株主の利益を無視する経営には、議決権行使で機関投資家から「NO」が突きつけられる時代となりました。最近話題になっているのは、ROE(自己資本利益率)が低すぎる企業の経営陣再任に、否定票が投じられるようになってきたことです。自社株買いを行ってROEを引き上げる企業が増えてきた背景には、こうした機関投資家からの企業統治圧力の増加も影響しています。公的年金(GPIFなど)が日本株を大幅に買い増しする時代となりました。将来の年金支払いを増やすために、公的年金からも株主配分を高める要求は強まると思います。

(3)自信を取り戻しつつある日本企業

2015年3月期の決算発表が佳境を迎えています。投資家の関心は、終わった期の実績よりも、新年度(2016年3月期)の予想に向かっています。今のところ、新年度の予想は保守的(低め)の発表が多くなっています。

ただ、それでも決算説明会を聞くと、先行きに経営陣の自信を感じさせる発表が増えています。リーマンショック以降に続けてきた構造改革に、円安・原油安の追い風が加わって、国際競争力を取り戻している企業が増えているからです。NEC(6701)・川崎重工業(7012)・アイシン精機(7259)・安川電機(6506)・日本電産(6594)など、将来に自信を持つ企業が増えていると感じています。