23日の日経平均は53円高の20,187円でした。外国人投資家の買いが続いている模様です。上昇ピッチの速さに警戒感がありますが、原油安・円安の恩恵を受ける日本の企業業績の回復期待を背景に、外国人は日本株の組み入れを増やしつつあるようです。
最近、注目できるのは、配当利回りやPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)などの株価指標で見たバリュー(割安)株を見直す流れが出ていることです。しばらくこの流れが続くと予想されます。
(1)日本たばこ産業(2914)が急騰
23日の東京株式市場で、日本たばこ産業(2914)が前日比5%高と急騰しました。日本たばこ産業(2914)は、23日時点で配当利回りが2.4%と魅力的な水準にあります。増配や自社株買いに積極的で、今期は上限1,000億円の自社株買いを発表しています。株主還元姿勢について、日本たばこ産業(2914)、日本電信電話(9432)、NTTドコモ(9437)など、国が直接または間接に大株主となっている企業は、いずれも積極的です。国が大株主として、しっかり利益配分を行うように監視していると考えています。
日本たばこ産業(2914)は昨年パフォーマンスが不振で、株価には出遅れ感がありました。株式市場で「ロシア関連株」と見られていることがパフォーマンス不振の原因でした。昨年は、ロシア経済が急速に悪化する中で通貨ルーブルが急落しました。日本たばこ産業(2914)はロシアで高い利益をあげているので、ルーブル建ての利益を円に換算する際に、目減りすることが嫌気されました。ただし、ロシアを除けば、順調に海外で利益を拡大させている状況は変わりません。
最近、通貨ルーブルが急速にリバウンドしていることがきっかけとなり、23日は日本たばこ産業(2914)の値上がり率が高くなりました。日経平均の上昇ピッチが速い中、出遅れの安定高収益株を探す流れにも乗っていると考えています。
ロシア・ルーブルの対米ドル為替レート推移:2012年12月末~2015年4月23日
日本たばこ産業(2914)は、3月末で飲料事業から撤退するなど、高収益でも事業の構造改革に手を緩めません。飲料事業では「桃の天然水」「ルーツ」などのヒット商品を出し、長年にわたって利益を稼いできましたが、直近2期は赤字でした。国内の飲料市場に成長が見込めない中、今後さらなる競争激化が見込まれるため、撤退を決断しました。医薬事業も赤字が続いていますが、こちらは早ければ2016年度に黒字が見込め、事業を継続します。
(2)大手銀行株は典型的なバリュー株
最近、3メガ銀行の株価上昇が目立ちます。3メガ銀行は、配当利回り・PER・PBRなどの株価指標で見て、割安です。バリュー株を見直す流れに乗っていると考えています。
大手銀行の株価バリュエーション:4月23日時点
コード | 銘柄名 | 4月23日株価 | 配当利回り | PER:倍 | PBR:倍 |
---|---|---|---|---|---|
8306 | 三菱UFJ FG | 861.7円 | 2.1% | 12.7 | 0.90 |
8316 | 三井住友FG | 5219.0円 | 2.5% | 10.1 | 0.89 |
8411 | みずほFG | 232.2円 | 3.0% | 10.4 | 0.80 |
配当利回りを見ると、東証株価指数(東証一部平均)が1.6%ですが、大手銀行は2~3%とそれを上回る水準です。
次に、PER(ピーイーアールまたはパーと読みます)を見てください。これは、株価が1株当たり利益の何倍になっているかを示すものです。倍率が低いほど、株価は収益価値に対して割安ということになります。東証株価指数のPERは約19倍ですが、大手銀行株は10~12倍台と割安です。
次に、PBR(ピービーアールと読みます)を見てください。これは、株価が1株当たり純資産の何倍になっているかを示すものです。倍率が低いほど、株価は資産価値に対して割安ということになります。東証株価指数のPBR1.6倍に対し、大手銀行株は0.8~0.9倍と1倍を割り込んでいます。
こうして見てみると、大手銀行株は、配当利回り・PER・PBRいずれで見ても、割安と言うことができます。
大手銀行株が割安に放置される理由は明らかです。成長性が低いことが不人気の理由と考えられます。ただし、私は、3メガ銀行に、新たな成長の芽が出てきたと考えています。以下2分野が、期待されます。
- 海外事業を拡大:アジアの地場銀行への買収・出資を積極化して、海外での事業拡大をはかっています。
- ノンバンク業務を拡大:証券・リース・消費者金融などノンバンク業務を拡大し、
ユニバーサルバンクとして成長を目指しています。
ただし、銀行の成長は長期的にゆっくり進むもので、始まったばかりの新年度(2016年3月期)については、業績の伸びがあまり期待できません。
(3)原油関連株にも注目
23日の東京株式市場では、国際石油開発帝石(1605)、三菱商事(8058)、三井物産(8031)など原油・ガス資源関連株の上昇率も高くなりました。昨年、原油価格が急落した影響で、資源株の株価は軒並み不振でした。株価指標で見て割安な、バリュー株が多くなっています。
私は、アメリカのシェールオイルの生産がようやく減少し始めたことを受け、現在1バレル56ドル近辺にあるNY原油先物(期近)は、年後半に60ドル~70ドルへ上昇すると予想しています。
割安な原油関連株にも分散投資する価値はあると考えています。
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