11日の日経平均は58円高の18,732円でした。10日のNYダウが前日比332ドル安と大きく下がった割にしっかりしていたといえます。ただし、日本株にはやや過熱感があり、目先は調整局面という見方は変わりません。なお、11日のNYダウは、前日比27ドル安と、続落しています。

今日は欧州のマイナス金利について後半でコメントします。

(1)公的年金や日銀の買いで下げ渋ることが多い日本株

最近、日経平均が下がり始めると、GPIFなどの公的年金や日銀が日本株やETF(指数連動型上場投資信託)を買ってきて下値を支えることが多くなっています。11日も、あくまでも推定ですが、日本株に公的年金の買いが入っていた可能性はあります。

なお、日銀は毎日のETF買い付け額を公表していますが、11日は買い付けを実施していません。

日本銀行による3月のETF買付

日付 日経平均前日比:円 日銀のETF買付額
3月2日 28.94 -
3月3日 ▲ 11.72 352億円
3月4日 ▲ 111.56 352億円
3月5日 48.24 -
3月6日 219.16 -
3月9日 ▲ 180.45 352億円
3月10日 ▲ 125.44 -
3月11日 58.41 -

(出所:ETF買付額は日本銀行、楽天証券経済研究所が作成)

ご覧いただくとわかる通り、日本銀行は、日経平均が下がった日にETFを買い付ける傾向があります。

(2)欧州で量的緩和スタート、マイナス金利が広がる

3月9日から、ECB(欧州中央銀行)は、量的金融緩和を開始しました。毎月、金融機関から欧州各国の国債など600億ユーロ(約8兆円)買い取るというものです。ドイツ国債などECBの買い取りで品薄になる国債もあり、いよいよ欧州ではマイナス金利が広がりました。

欧州主要国の2年・5年もの国債利回り(日本時間3月11日19時)

  2年 5年
ドイツ -0.242% -0.164%
オランダ -0.178% -0.072%
スウェーデン -0.172% 0.243%
ベルギー -0.158% -0.048%
フランス -0.145% -0.023%
スペイン 0.129% 0.490%
イタリア 0.158% 0.398%
イギリス 0.403% 1.255%

(出所:ブルームバーグ)

参考:マイナス金利とは

国債を買うと、金利を受け取ることができます。国債を買って満期まで保有すれば、利回りはプラスになるのが普通です。

ところが、中央銀行が国債をどんどん買い上げて国債の価格が高くなると、マイナスの利回りが生じることがあります。高くなった価格で国債を買って償還まで保有すると、償還差損が発生します。償還までに受け取る金利をすべて合計しても、償還差損より小さければ、満期まで保有する利回りはマイナスとなります。この状態を、「マイナス金利」と呼んでいます。

(3)欧州経済のデフレ色強まる

マイナス・インフレに低金利は、かつては日本に特有な現象でした。近年、欧米のインフレ率・金利が構造的に低下する現象を、欧米では「ジャパナイゼーション(日本化)」と呼んでいました。

とうとう、欧州は日本の先を行く、デフレ・マイナス金利経済に入ってしまったわけです。欧州経済の低迷は長期化しそうであり、この状態は、短期的には解消しないかもしれません。

欧州の量的緩和実施を受けて、欧州の株式市場にお金が流れ出してきています。量的金融緩和が、先行き、欧州経済の回復に直結するのか、単に需給面で株を押し上げているだけなのか、今後の欧州経済の動向を注視していきたいと思います。