5日の日経平均は、48円高の18,751円でした。短期的に過熱が指摘される日本株市場ですが、大きく下げることもなく、下値は堅い印象です。市場関係者に広がっているのが「下がれば日銀とGPIF(公的年金)が買う」という安心感です。
6日は、一時1ドル120円台まで円安が進んだことを好感して、日経平均は上昇して始まることが予想されます。
(1)2014年の日本株の主体別売買代金差額
投資主体 | 売買代金差額 | 備考 |
---|---|---|
信託銀行 | 2兆7847億円 | 主にGPIFなど公的年金の買い |
事業法人 | 1兆1017億円 | 主に自社株買い |
外国人 | 8526億円 | 投資判断に基づく買い |
銀行 | ▲1290億円 | 持合い解消売り |
投資信託 | ▲2104億円 | 投資判断に基づく売り |
生保・損保 | ▲5037億円 | 持合い解消売り |
個人 | ▲3兆6323億円 | 新規公開株の売りと、投資判断に基づく売り |
(2)買い手は、公的年金と日銀が中心
去年1年間の売買で目立つのは、公的年金と日本銀行の買いです。公的年金は、信託勘定を通じて、日本株を大幅に買い増しました。日本銀行は、個別株式ではなく、ETF(指数連動型上場投資信託)を2014年中に1兆2842億円買っています。これが官製相場と言われる理由です。
事業法人が1.1兆円買い越していますが、これは主に上場企業の自社株買いと考えられます。株主への利益配分の一環として、自社株買いが広がってきたことがわかります。ただし、自社株買いは、いわゆる値上がり狙いの純投資とは異なります。
こうして見ると、純粋な投資判断で買い越しているのは、外国人だけといえます。ただし、たとえ8526億円だけでも外国人投資家が買い越しているのは、心強い限りです。なぜならば、外国人投資家は、何のしがらみもなく、純粋な投資判断で売買する主体だからです。外国人投資家は、日本に景気回復の兆しが見えてきたことを評価して日本株を買い増していると考えられます。
(3)売り手は、個人投資家と金融機関
売り手は、個人と投信(個人が中心)、生損保・銀行(持合い解消売り)です。持合い解消売りは、長期的なリスク削減のためにやっていることで、純粋な投資判断とはいえませんが、個人投資家が大量に売り越しているのが、気がかりです。個人投資家も、何のしがらみもなく、純粋な投資判断で動く主体だからです。
なお、個人投資家の売り越しには、新規公開株を引き受けて上場後に売った分も含まれます。新規公開株の引き受けは買いにカウントされず、売りだけがカウントされるからです。
(4)日銀とGPIFには、まだ大きな買い余力がある
GPIFの報告書によると、2014年末時点で、GPIFは約130兆円ある運用資産のうちの19.8%を日本株に投資しています。この時点でのGPIFの基本ポートフォリオにおける日本株組み入れターゲットは25%±9%です。今後、ターゲットの25%まで日本株の組み入れを引き上げるためには、GPIFは1月以降さらに6.8兆円の日本株を買わなければなりません(資産の時価変動がないと仮定)。
また、日銀が、年間3兆円のETFを買う方針を打ち出しています。日銀とGPIFはどちらも、2014年に続いて2015年も日本株の買いを牽引する主体となりそうです。
(5)日本株は、官製相場で上がっているだけか?
私は、そうは思いません。最もドライな投資判断をする外国人が2月も買い越しているからです。私は、日本の景気・企業業績の回復期待が高まったことから、外国人投資家主導で年末には日経平均が20,000円へ上昇すると予想しています。
ただし、足元の株価上昇ピッチが速すぎることから、短期的には調整のリスクを警戒した方がいいと思います。日本株にやや過熱感が出ており、目先、外国人の買いが細れば、個人投資家の売りで、日経平均は下がるでしょう。
短期的な相場動向は、目先の需給で決まりますが、中長期の方向性は、日本の景気・企業業績がどうなるかによります。私は、今年、日本景気・企業業績の回復基調が鮮明になると見ていますが、市場参加者はそれにまだ確信が持てていません。日経平均は、19,000円前後でしばらく上値が重くなると見ています。
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