先週の日経平均株価は1週間で418円上昇し、18,332円となりました。2007年の高値(18,261円)を上回り、14年9カ月ぶりの高値をつけました。今週も、徐々に下値を切り上げる展開が続くと予想します。

(1)ギリシャ支援合意で、欧米株式が上昇

1月にギリシャで緊縮財政放棄を宣言しているチプラス政権が誕生したことから、ギリシャの信用不安が再燃し、世界の金融市場のかく乱要因となりました。2月末に期限が迫るギリシャの銀行支援をEUが延長するか否かに注目が集まっていました。20日に、とりあえず金融支援の4カ月延長が決まり、株式市場に安心感が広がりました。

NYダウと日経平均は、1月以降、ともに18,000の壁を越えられずに足踏みしていましたが、先週、18,000を越えました。

NYダウ日足:2014年10月1日~2015年2月20日

日経平均日足:2014年10月1日~2015年2月20日

(2)ドイツに攻撃的態度を取るギリシャがEUで孤立

チプラス政権がギリシャに緊縮財政を求めるEUの盟主ドイツに対して攻撃的態度を取り始めたことが問題を深刻にしています。10日に第二次世界大戦中のナチス・ドイツによるギリシャ占領で被った損害の賠償を請求する方針をドイツに伝えたことで緊張が高まりました。「ドイツに対して1,620億ユーロ(約22兆円)を請求する権利がある」と主張しています。

これを受けてドイツも態度を硬化させ、2月末のギリシャの銀行支援を延長しない可能性に言及し始めました。ギリシャの銀行は信用不安が高まり、預金を引き出す動きが広がりました。ギリシャも追い詰められた形で、財政改革のメニューを今後提出することに同意せざるを得なくなり、何とか目先4カ月の資金支援延長を取り付けました。

ギリシャの緊縮財政放棄の方針が、スペインやイタリアなど対外債務の大きい国に波及すると、欧州全体の信用不安が再燃する可能性がありましたが、今のところ、ギリシャの言動に欧州諸国はこぞって批判的で、ギリシャは孤立しています。

暫定的ではありますが、ギリシャが妥協姿勢を示したことで、目先、世界の株式市場にとって安心材料となりそうです。

(3)ギリシャ問題、今後の展開

2つの可能性を考えておく必要があると思います。

  • メイン・シナリオ:EUとギリシャが互いに妥協

ギリシャはEUを批判しながらも、EUの求める財政改革をある程度は受け入れます。その結果、ギリシャはEUに留まり、EUはギリシャ支援をだらだらと続けます。この場合、ギリシャに対する信用不安は、一旦収束しますが、ギリシャはEUの火種としていつまでも残ります。

  • ハード・ランディング・シナリオ:ギリシャがEUを離脱

ギリシャは、緊縮財政を押し付けるEUやドイツに対する国民の不満を抑えきれず、ドイツやEUに攻撃的言動を繰り返した末、ついにEU離脱に至ります。この場合、ギリシャの銀行から資金流出が止まらず、ギリシャでは銀行破綻が広がります。ギリシャ国債もデフォルト(債務不履行)に至ります。ギリシャは、共通通貨ユーロを使用できなくなり、旧通貨ドラクマに戻りますが、ドラクマはユーロに対して暴落します。そこで、ギリシャにはハイパー・インフレが起こり、深刻な景気後退に陥ります。

このようなギリシャ危機が起こると、世界の金融市場を一時的に不安に陥れます。ただし、危機を経て、ギリシャの赤字体質は強制的に矯正されることになります。深刻なインフレと不況によって消費は落ち込みます。一方、ギリシャの通貨暴落によって、ギリシャの海運業や観光業が活性化します。厳しい危機を乗り越えて、何年かたてば赤字体質から脱却できることになります。

ハード・ランディングは、世界に金融危機を引き起こしますが、長期的には、EUを正常化する効果もあります。EUはギリシャが抜けることで、信用が強化されるでしょう。EU内の他の過重債務国も、EUを離脱したギリシャの悲惨な状況を見ることによって、EUを追い出されないように、財政をコントロールするようになるでしょう。

(4)ギリシャ問題の日本への直接の影響はほとんどない

ギリシャ問題がどう進展するか読みにくいですが、日本への影響は限定的と考えています。日本株は、景気・企業業績の回復を好感して、上値トライが続くと予想しています。