19日の日経平均株価は前日比65円高の1万8264円でした。2007年の高値(1万8261円)を上回り、14年9カ月ぶりの高値をつけました。日本株に投資してきた国内投資家に朗報です。ところが、日本株に投資してきた外国人投資家は必ずしもハッピーでありません。

今日は外国人投資家の目に映る日本株のイメージについて書きます。

(1)「円安にならないと日本株が上昇しないならば、日本株はいらない」

私は、これまで中東・中国・アメリカの日本株投資担当者と何回もミーティングをしてきました。彼らの気持ちはよくわかっているつもりです。日本株の投資方針について尋ねた時に何回も言われた言葉が、「円安にならないと上昇しないならいらない」です。

彼らの投資資金は、ドルです。ドルを円に転換した上で、日本株に投資します。日本株が上昇しても、円がドルに対して安くなると、その分、ドル建ての投資利回りは悪化します。彼らが利益を確定する場合は、日本株の売却資金を再びドルに戻して、ドル建てのリターンで投資成果をはかるからです。

過去2年、円安に連動して日本の株は上昇してきました。せっかく日本株が上昇しても、円安が進む分、かれらは為替で損をしてきたのです。

(2)ドル建て日経平均のパフォーマンスは、昨年はマイナスであった

まず、以下のグラフをご覧ください。

日経平均と、ドル建て日経平均の推移比較:2012年11月5日~2015年2月19日)

(注:2012年11月5日の水準を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成)

アベノミクスのスタート後、日経平均は大幅に上昇しました。2012年11月5日と比較すれば、日経平均は2倍以上に上昇しています。ところが、ドル建て日経平均は40%くらいしか上がっていません。日経平均(円建て)が上昇しても、円安が進むために、ドル建てのリターンは冴えないままです。

2013年に外国人投資家は日本株を15兆円以上買い越しました。外国人の口を借りて言うならば、「社会福祉を重視する民主党から、経済成長を重視する自民党に政権が変わったので、日本株の上昇期待が高まった」と日本株を必死に買ったわけです。

ところが、2014年はドル建て日経平均のパフォーマンスはマイナスでした。消費増税で景気が低迷した影響もありますが、それだけではありません。大幅に円安が進んだためにドル建て投資家にとっては、悪夢のマイナスリターンとなってしまったわけです。外国人投資家は、日本株に失望し日本株の買い意欲がかなり低下しました。それでも2014年に、外国人投資家は日本株を約8,500億円買い越しました。

2015年1月、外国人投資家は、日本株を2,236億円売り越しました。円安にならないと上昇しない日本株に愛想を尽かし始めていました。ところが、足元、再び買い越し始めています。

(3)2015年は円安が進まない中で日本株が上昇するシナリオを意識

私は、2015年末に日経平均が20,000円に上昇すると予想しています。円安・原油安・米景気好調のトリプル・メリットを受けて、以下の通り、日本の企業業績が拡大することが、日本株の上昇を牽引すると思っています。

全産業ベース(除く金融)経常増益率の今来期予想

2014年3月期 実績 +36%
2015年3月期 楽天証券予想 +9%
2016年3月期 楽天証券予想 +11%

(出所:楽天証券経済研究所)

今までのパターンですと、日経平均が1割上がる間に、為替は5~6%円安に動いていました。ところが今年、私は、円安が進まない中で、株高が進む可能性が出てきていると考えています。

円安が進みにくくなると考える理由は2つあります。

  • 今年アメリカで利上げが予想されていますが、仮に利上げがあっても米金利の上昇幅はあまり大きくならないと予想しています。一度利上げがあると、過去は5~6回連続で利上げが行われましたが、今回は、利上げがあっても1~2回で打ち止めになると思います。原油急落を受けて、アメリカを含めて世界中で低インフレ化が進んでいるからです。
  • 原油安の恩恵で日本の貿易収支が単月で黒字になる時期が近づいていると思います。

私の予想通りならば、外国人投資家にとって、やっと為替で損しないで日本株の上昇メリットを享受できる局面が訪れることになります。外国人投資家が長く待ち望んでいた日本株の買い場となります。私は、今年は為替が1ドル120円前後で安定する中で、外国人投資家の買いで、日経平均が20,000円に向かって上昇する年になると予想しています。