8日の日経平均は281円高の17,167円でした。7日のニューヨ-ク市場でWTI原油先物が反発したことを好感してNYダウが反発した流れを受けました。原油下落でメリットを受ける海運・空運・ゴム(タイヤ)株の値上がり率が高くなりました。

8日のNYダウは323ドル高の17,907ドルと大幅続伸しました。良好な米経済や、デフレ懸念の高まった欧州でECB(欧州中央銀行)が追加緩和に踏み込む見通しが強まったことが好感されました。WTI原油先物は、前日比0.14ドル高の1バレル48.79ドルと小幅続伸しました。

※ WTI原油先物はオープンアウトクライ価格

(1)原油が反発した方がNYダウも日経平均も上昇しやすい

ニューヨークのWTI原油先物(期近)の動き:
2014年12月23日~2015年1月8日

冒頭の文章を見て、「あれ、変だ」と思った方もいるかもしれません。7日の「原油先物反発」を受け、8日に日本で「原油安メリット株が大きく上昇」という話しです。原油安メリット株が、なぜ原油が反発した日に買われるのでしょうか?

それは、こういうわけです。原油の下げがあまりに急できついと、「逆オイル・ショック」で世界景気が悪化する懸念が高まります。そうなると、原油安メリット株でも、需要が減少して業績が悪化する懸念が生じます。1バレル50ドルを割れるような下げは、逆オイル・ショックの不安を高めるために、原油安メリット株も含めて、株は全般に売られてしまうわけです。

世界景気にとって都合がいいのは、NY原油先物が1バレル60ドル程度まで戻って、そこで安定することです。1バレル60ドルでも、原油安メリット株は十分に大きなメリットを受けます。世界景気がショック安になるのを防ぐために原油が60ドル辺りまで戻った方が、原油安メリット株も買われやすいのです。

(2)アメリカでも逆オイル・ショックの懸念が強まる

長い目で見れば、日米欧先進国は、原油下落の恩恵を受けます。世界中の天然資源を大量消費してきた中国やインドも、エネルギー輸入コストが低下する恩恵を受けます。

ただし、短期的にはアメリカですら、原油急落のダメージが拡大しそうな気配です。アメリカはシェール・オイル大増産で原油安を引き起こしている張本人です。安価な国産エネルギー増産の恩恵で、消費が拡大し、内需産業が活況です。

そのアメリカでも、あまりに急激な原油の下落からはダメージを受けます。原油価格が1バレル60ドルを割れると、採算割れに陥るシェール油田が増えます。50ドルまで割り込んだ現在、採掘業者に破綻が出てきています。シェール・オイル開発に絡むビジネスが急失速しています。採掘業者への融資を抱える地方銀行では、不良債権増加の懸念が広がっています。

油価が1バレル60ドルまで戻れば問題ないが、50ドル割れが定着すると、アメリカですら短期的にはダメージが大きくなる可能性があります。

(3)原油安で世界的にインフレが鎮静化、米長期金利も低下

2015年の世界の株式市場で特に警戒すべき2大リスクは、以下の通りです。

  • 逆オイル・ショック発生懸念
  • 年央と見られるアメリカの利上げでドル金利が上昇する懸念

この2つのリスクが同時に顕在化すると、世界の株式市場は大きなダメージを受けることになるでしょう。ところが、幸いにして、この2つは同時には起こりにくいと言えます。

原油が急落する前は、米景気好調からドル金利が上昇し、米FRBが早期利上げを実施される懸念が高まっていました。ところが、原油が下落したおかげで、アメリカも含め、世界的に期待インフレ率が低下しました。これを受けて、世界的に金利が低下しています。

米長期金利の動き:2014年12月15日~2015年1月8日

つまり、原油急落のおかげで、アメリカの早期利上げ懸念はやや低下し、欧州や中国で金融緩和が行われる可能性が高まったと言えます。

今後、原油下落が一服し、仮に1バレル60ドルまで反発すれば、世界的に株は大きく上昇するでしょう。ただし、そうなると、今度は米長期金利が上昇し、早期利上げ懸念を、株式市場は懸念しなければならなくなるでしょう。

私は、現時点で、原油価格は下げ過ぎで、いずれ反発すると予想しています。そこで、日本株が上昇する流れは一度とっておきたいと思います。そのためには、今、日経平均17,000円前後で、日本株を買っておきたいと思います。

ただし、実際に原油の下落が一服し、株が上昇する局面では、早めに利益確定をしたいと考えています。アメリカの利上げに絡んで世界的に株安が起こる可能性を警戒した方がいいと思っているからです。