いよいよ注目の9月中間決算発表が本格化しました。28日の決算でサプライズ(驚き)だったのは、ジェイエフイーHLDG(5411)の上期決算が予想以上に良く、通期予想を上方修正したことです。決算説明会の会場では「これは驚いた」というつぶやきが、多くのアナリストから聞かれました。

(1)予想以上に良かった上期業績

ジェイエフイーHLDG(5411)の経常利益

(金額単位:億円)

  会社予想 前年比 実績 前年比
上期 700 -5.9% 919 23.6%
  前回予想 前年比 今回予想 前年比
通期 1,800 3.6% 2,000 15.2%

(出所:同社資料、上期は2014年4月~9月、通期は2015年3月期)

事前に、一部アナリストからジェイエフイーHLDG(5411)の上期業績は会社予想よりも低く、通期予想が下方修正になるとの予想も出ていました。そうしたネガティブな予想を受けて、最近、株価下落率が比較的大きくなっていました。ところが、発表された決算はその逆で、ポジティブ・サプライズでした。

(2)メタル・スプレッドが改善

今回、ジェイエフイーHLDG(5411)の業績が上ぶれした最大の理由は、メタル・スプレッド(鉄鋼業の利ざや、製品価格と原料価格のスプレッド)が広がったことです。弱気の見通しでは、メタル・スプレッドの縮小が予想されていました。

<事前に広まった弱気見通しの根拠>

最近、原料価格(鉄鋼石・石炭)の価格が大きく下がっています。これは、基本的に鉄鋼業にとってプラスですが、その効果はすぐに出ない場合があります。高値で買いつけた原料在庫が残っているためです。

一方、原料価格が下落すると、製品価格を値下げさせられる場合があります。過去の鉄鋼不況時には、原料価格が急落する時、原料安効果よりも、製品価格低下効果の方が大きくて、メタル・スプレッドが悪化することが多かったのは事実です。

<今回の決算発表でわかったこと>

  • メタル・スプレッドが拡大 製品価格が会社想定ほどには値下がりしませんでした。その結果、メタル・スプレッドが拡大しました。今は、鉄鋼不況ではなく、鉄鋼業の利益拡大期にあることを再確認できました。
  • 国内の鉄鋼事業利益が予想以上に拡大 国内需要は、当初見通しよりやや低いものの、基調は強いです。また、内需が好調だと従来は韓国から安値の輸入品が増えましたが、円安韓国ウォン高が進んだ結果、今は安値の輸入品が増加しません。そうした環境下で、国内の鉄鋼市況は下がりにくくなっています。
  • 輸出環境は良くないが、中国鉄鋼メ-カー増産の影響は小さい 円安で、輸出競争力が高まっているにもかかわらず、輸出は伸びにくくなっています。世界景気が停滞しているためです。中国メーカーが不況下で増産し、輸出攻勢をかけてきたことが、アジアの鉄鋼市況を軟化させてきましたが、日本の大手鉄鋼メーカーへの影響は限定的です。ジェイエフイーHLDG(5411)が輸出するのは自動車用などの高級鋼板が中心で、中国メーカーが輸出ドライブをかけている汎用品とはほとんど競合しないからです。

(3)今来期とも業績拡大続く見込み

私は、ジェイエフイーHLDG(5411)の今期経常利益(会社予想)2,000億円はさらにいくらか上ぶれ余地があると考えています。メタル・スプレッドが開いた状況で、国内需要好調が続くと考えているからです。

同社の来期経常利益の市場予想(アイフィス・コンセンサス予想)は、10月28日時点で2,454億円(今期見込み比+23%)ですが、メタル・スプレッドを維持したまま需要が伸びると、2,500~2,800億円の経常利益の確保が視野に入ってくる可能性もあると考えています。

(4)鉄鋼業は全般に予想より好調か?

まだ、鉄鋼業では、ジェイエフイーHLDG(5411)以外の決算が発表されていないので、現時点で明確に判断することはできませんが、他の鉄鋼業の決算も好調との期待が高まりました。

鉄鋼業の株価は全般的に割安で、今後の株価には上値余地があると予想しています。

主要鉄鋼株の株価バリュエーション

コード 銘柄名 株価:円 PER:倍 PBR:倍 配当利回り
5411 ジェイエフイーHLDG 2,013.5 9.7 0.72 2.0%
5401 新日鐵住金 262.8 9.5 0.93 1.9%
5406 神戸製鋼所 166 10.9 0.90 1.8%
5413 日新製鋼 919 7.0 0.48 1.6%
5423 東京製鐵 558 8.1 1.09 0.7%

(出所:ジェイエフイーのPERは会社が今回発表した2015年3月期予想から計算、他の4社は2015年3月期のアイフィス・コンセンサス予想利益から計算、楽天証券経済研究所が作成)