先週の日経平均は、1週間で768円下がり、14,532円となりました。世界的に広がったリスク資産「パニック売り」の連鎖に巻き込まれて、予想以上に大きな下げとなりました。私は、ここは日本株を割安に買う好機と判断します。

(1)なぜ世界中にリスク資産のパニック売りが広がったか?

なぜこれほどの下落が急に起こったのか?その背景を考えてみます。欧州経済不安・エボラ出血熱・地政学リスク・・・さまざまな要因が絡み合った「複合ショック」としかいいようがありませんが、背景にはアメリカの金融政策変更への恐怖があったと思います。

日経平均週足:2012年11月~2014年10月17日

(注:楽天証券経済研究所が作成)

アベノミクスが実質的にスタートした2012年11月以降、日経平均は3回大きなショック安に見舞われています。いずれも、アメリカの金融政策変更に関する思惑がからんでいます。

  • 2013年5月バーナンキ・ショック

    アメリカの金融政策を決めるFRBのバーナンキ前議長が、「将来、金融緩和の縮小(テーパリング)が必要になる」と述べただけで、世界中のリスク資産が一斉に売られました。16,000円手前まで上昇していた日経平均は一気に12,500円近くまで売られました。バーナンキ発言によって引き起こされた世界同時株安だったので、この急落は「バーナンキ・ショック」と呼ばれました。この時は緩和縮小の可能性に言及しただけで、実際には量的緩和の拡大は続いていました。市場は次第に落ち着きをとりもどし、再び上昇に転じました。

  • 2014年1月緩和縮小(テーパリング)開始決定後の急落

    2013年12月に米FRBは、1月からテーパリングを開始することを決定しました。これを受けて米長期金利が一時3%超まで上昇しました。1月は、アルゼンチンの通貨が急落したことをきっかけに、世界中の株やリスク資産が売られました。米景気が寒波の影響で一時的に減速したことも下落要因と考えられていますが、私は、それよりも影響が大きかったのは、テーパリング開始への警戒だったと思います。ただ、後から振り返ればこの時は緩和の「拡大ペース」を縮小し始めただけで、実際にはまだ緩和拡大が続いていました。したがって、この株急落も過剰反応でした。次第に世界の金融市場は落ち着きを取り戻し、再び上昇に転じました。

  • 2014年10月QE3終了ショック?

    10月にアメリカの金融緩和縮小は完了します。つまり、QE3(金融緩和第3弾)がついに終わるわけです。レバレッジをかけてリスク資産に投資してきた世界のヘッジファンドは、QE3終了にあわせてリスク資産の持ち高を縮小することを検討していました。そこに、欧州景気の後退懸念、エボラ出血熱騒動、地政学リスクなどの不安が重なり、世界中の株が下がり、売りが売りを呼ぶ「リスク資産全面安」に発展しました。

(2)米FRBは、実質「世界の中央銀行」

なぜ、アメリカの金融政策変更に、世界中の金融市場がこれほど大きく反応するのでしょうか?私は、アメリカの金融政策を決めるFRBは、事実上、世界の中央銀行の役割を果たしていると考えています。ドルは世界中の金融市場およびビジネスで使われています。FRBが金融を緩和してドル供給が増えると、世界中の金融市場が緩和します。一方、FRBが金融を引き締めると、世界中の金融市場が引き締まります。レバレッジをかけてリスク資産に投資しているヘッジファンドは、FRBの金融政策動向を注視していて、引き締めにつながる話が出てくると、一斉にポジション手じまいに動きます。それが、2013年5月のバーナンキ・ショック、2014年1月の株急落、そして、今回の株急落の背景にあると思います。

(3)米長期金利は既に低下、早期引き締めリスクの懸念は薄らいだ

世界的な株安を受けて、米長期金利は一段と低下しました。当初、アメリカの金利が上がり、FRBが早期利上げに動くことが心配されていましたが、その懸念は薄らいだと言えます。

米長期金利の動き:2013年10月~2014年10月

(注:楽天証券経済研究所が作成)

(4)日本の景気・企業業績の回復は続く

世界株安に巻き込まれて大幅安になった日本株ですが、今週は反発上昇が見込まれます。先週の金曜日は、米景気がしっかりしていることを背景に、ニューヨーク市場で、リスク資産が反発しました。NYダウが大幅上昇、為替も106円台の円安に戻り、原油価格も反発しました。日本株にも、買戻しの動きが広がると予想しています。

焦点は、日本の景気・企業業績ですが、私は、ゆるやかな回復が続くと考えています。円安効果・米景気好調・原油価格下落が日本経済の追い風になります。また、追加の景気対策が発動され、日本の景気を支えることになると予想しています。