2日の日経平均は、420円安の15,661円と急落しました。足元の国内景気が予想よりも弱いことに警戒感が広がる中、為替が円高にふれたことをきっかけとして大きな下げとなりました。欧州や中国の景気指標が悪化していることも警戒されています。

(1) 景気停滞が長引く

(日経平均週足:2012年11月~2014年10月2日)

アベノミクスが実質的にスタートした2012年11月以降の日経平均を示したのが上の図です。日経平均が上がったのは最初の半年だけで、後は、15,000円を中心としたボックス相場が続いています。

9月に入って、円安(ドル高)が進んだことを好感し、日経平均はボックスを抜け出して上昇の構えを見せました。ところが、国内景気の停滞色がいまだに強いことが確認されたため、昨日はボックスに押し戻された形です。

(2) 米指標が弱く、円高(ドル安)にふれたことが日経平均急落のきっかけ

大幅な株安のきっかけとなったのは、円高への反転です。10月1日にアメリカで発表された景気指標(9月のISM製造業指数)が悪化したことを受けて、円高(ドル安)が進みました。一時1ドル110.08円まで上昇していたドルが、2日には一時108.32円まで売られました。これが、円安を頼りに上昇していた日経平均が急落するきっかけとなりました。

(米ISM製造業景況指数)

(出所:米供給管理公社)

(3) 日本の景気は、予想より弱いことを再確認

「消費増税の影響で4-6月の景気は落ち込むが7月から回復に向かう」が、7月ころまでの市場コンセンサスでした。ところが、実際は、7月以降の回復は弱いことがわかりました。

  • 消費増税のマイナス影響が4-6月で終わらず、7-9月も続いています。
  • 円安にもかかわらず輸出数量が回復していません。
  • 夏場の天候不順も消費の不振に影響しました。

今週、発表された景気指標で、ネガティブ・サプライズだったのは、9月30日発表の鉱工業生産です。8月が前月比▲1.5%のマイナスとなり、事前の市場予想(0.2%のプラス)を下回りました。

鉱工業生産指数(前月比)

(出所:経済産業省)

半年以上にわたって生産がマイナス圏に留まっており、欧米では「景気後退」と判断される可能性のある状態です。2日の日本経済新聞朝刊の報道によると、本田技研は10月から11月にかけ、国内で自動車の生産調整に踏み切ります。消費増税後の販売低迷で増えた在庫を減らす狙いもあるとのことです。

今週発表で、もう1つネガティブであったのは、10月1日発表の日銀短観です。注目の大企業・製造業DI(景況判断指数)は、小幅に改善しました。しかし、大企業・非製造業DIが大きく悪化しました。中堅企業・中小企業のDIも軒並み悪化しました。

(出所:日本銀行)

(4) 次の注目は、米雇用統計とISM非製造業指数

9月のISM製造業景況指数が低下して、2日はドル安(円高)が進みました。ただし、ISM製造業指数の低下だけで「アメリカの景気が強い」という見方が変わるものではありません。

次の注目は、今日の夜、アメリカで発表される9月雇用統計と、ISM非製造業指数です。強い数字が出て、もう一度ドル高(円安)が進むか否かが、注目されます。

(5)日本が景気後退に向かっているわけではない

7-9月も景気停滞が続いていることから、日本の景気の先行きに悲観論が出ていますが、私は、景気回復が遅れているだけで、これから景気後退に向かうわけではないと考えています。

しばらく景気実態を見極める必要がありますが、日本株がさらに大きく下がるようならば、押し目買いの好機になると考えています。