18日の日経平均は、178円高の16,067円でした。一時、1ドル108.87円まで円安が進んだことが好感され、輸出株を中心に買われました。

(1) 日米金融政策の違いが、ドル高(円安)に寄与

17日の米FOMC(金融政策決定会合)声明で、金融緩和からの出口戦略ガイドラインが示されたことを受け、ドルが主要通貨に対して全面高になりました。

アメリカは、景気好調で金融引き締めの可能性が語られるようになっています。一方、日本およびヨーロッパの景気は停滞しています。日本は追加緩和の可能性が語られるようになり、欧州も金融緩和を打ち出しています。日米欧の景況感の差、金融政策の方向性の差が、ドル高・円安・ユーロ安につながっています。

(2)インフレ率は、アメリカも低下

「アメリカだけ景気好調で日本とヨーロッパは弱い」が、市場コンセンサスになっていますが、インフレ率を見ると、やや異なる絵が見えます。

消費者物価指数(総合指数)の前年比変化率推移

(注:日本の4月以降の消費者物価指数上昇率は、消費増税の影響を除いたベース。消費増税の影響は4月で1.7%、5月以降は2.0%。楽天証券経済研究所が作成)

日本・ヨーロッパだけでなく、米国のインフレ率も足元は低下してきています。FOMC声明が発表された17日、米国の8月の消費者物価指数(総合指数)が発表されました。前月比で▲0.2%のマイナスで、前年比の伸び率は+1.7%に縮小しました(7月の前年比は+2.0%)。FOMC声明とは裏腹に、足元の米国のインフレ率は鎮静化してきています。

ユーロ圏のインフレ率は0.4%まで下がっており、先行きデフレ(インフレ率がマイナスになる)の可能性も出ています。日本のインフレ率(消費増税の影響を除くベース)も、じりじりと低下してきています。インフレ率だけ見ると、日米欧そろって低下しつつあります。ここを見ると、米FRBのイエレン議長がたびたび繰り返している「アメリカの労働市場の実態はよくない」「アメリカの景気回復にかつての勢いはない」という発言にもうなずけるところがあります。

(3)アメリカの長期金利の上昇幅は、さほど大きくない

日米独の長期金利(10年国債利回り)推移

景況感の差を反映し、日独の長期金利が下がる中、米長期金利は高止まっています。ただし、米長期金利も3%に向かって上昇していく気配はありません。米インフレ率が鎮静化しているので、すぐに金利が上昇する環境にはありません。

(4)目先は「いいとこ取り」相場が続く見通し

今のアメリカの金融市場の状況を簡単に言い表すと、以下のようになります。

  • アメリカの景気が好調で、将来利上げが懸念される。
  • だから、ドル高(円安)が進む。
  • でも、アメリカのインフレ率は落ち着いている。
  • だから、アメリカの長期金利はあまり上昇しない。
  • だから、アメリカの株も堅調。

これは、金融市場にとってとても居心地がいい状態です。「いいとこ取り」相場ともいえます。アメリカの景気は、強すぎず弱すぎず、程よく強いというわけです。しばらくは、この居心地のよい状態が継続しそうです。日経平均は、この環境が続く中で、昨年来高値を更新し上昇が続くと考えています。

リスク要因は、米金利の大きな上昇ですが、米インフレ率が落ち着いている限り、それは起こらないと考えています。