海運業は、第1四半期の業績が不振でした。ただし、今後は、業績回復が徐々に鮮明になり、2~3年は業績回復が続くと予想しています。株価は割安であり、今が買いの好機と判断しています。
(1)海運株は割安
まず、主要海運5社の株価バリュエーションを見てみましょう。PER・PBRなどで見て、割安です。
海運業の株価バリュエーション
株価:円 | PER:倍 | PBR:倍 | 配当利回り | |
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日本郵船(9101) | 307 | 15 | 0.72 | 1.6% |
商船三井(9104) | 387 | 12 | 0.68 | 1.6% |
川崎汽船(9107) | 251 | 13 | 0.60 | 2.0% |
NSユナイテッド海運(9110) | 269 | 11 | 0.99 | 1.9% |
飯野海運(9119) | 649 | 12 | 1.23 | 1.5% |
(2)第1四半期の業績は不振
第1四半期(4-6月)は、定期船部門の収益が改善したものの、不定期船(パナマックス)の市況が悪化しました。不定期船悪化の影響を受けた、海運大手2社(日本郵船と商船三井)が、通期(2015年3月期)業績見通しを下方修正しました。
大手2社の2015年3月期経常利益予想の下方修正
(金額単位:億円)
修正前 | 前年比 | 修正後 | 前年比 | ||
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日本郵船(9101) | 700 | 19.8% | → | 650 | 11.3% |
商船三井(9104) | 700 | 27.5% | → | 500 | -9.1% |
不定期船悪化の影響が大きく受ける商船三井(9104)の方が、下方修正幅が大きくなりました。
定期船の収益構成比が相対的に大きい川崎汽船(9107)は、業績予想を下方修正しませんでした。
(3)今来期と業績回復が続く見通しは変わらない
大手海運5社の今来期経常利益見通し
(金額単位:億円)
2015年3月期 連結経常利益 | 2016年3月期 | |||||
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会社予想 | 前年比 | 市場予想 | 前年比 | 市場予想 | 前年比 | |
日本郵船(9101) | 650 | 11.30% | 702 | 20.10% | 839 | 19.50% |
商船三井(9104) | 500 | -9.10% | 575 | 4.60% | 708 | 23.00% |
川崎汽船(9107) | 340 | 4.80% | 358 | 10.40% | 454 | 26.70% |
NSユナイテッド海運(9110) | 73 | -18.20% | NA | NA | NA | NA |
飯野海運(9119) | 59 | -0.90% | NA | NA | NA | NA |
第1四半期の業績が不振でも、今後、定期船を中心に収益回復が続く見通しは変わっていません。
(4)長期不況を脱しつつある日本の海運業
海運は好不況のサイクルが通常の景気循環よりも長くなります。船舶の需給調整に長い時間がかかることが好不況サイクルが長くなる原因です。
前回の海運ブームのピークは2007年でした。この時、世界中で船舶が不足し、海運市況は高騰していました。新興国の成長で海運需要は成長し続けるといわれ、世界中の海運会社が造船を大量発注していました。
造船会社は注文がいっぱいで5年は建造ドックがあかないと言っていました。つまり、2007年に発注しても船舶が引き渡されるのは5年以上後の2012~2013年になるという話でした。それでも海運会社は、大量の造船発注を続けました。海運ブームのピークだったので、船価も高騰していました。
2008年にリーマンショックが起こると、海運需要は急速に縮小しました。一気に世界中で船舶が余剰になりました。それでも容赦なく大量発注した船が2009年~2013年にどんどん竣工してきました。海運ブームのピークで発注した非常に割高な船舶です。世界の海運業は、需給改善を図って老朽船舶を廃棄しても、次々と新しい船が竣工するので、需給改善はまったく不可能でした。
泥沼の海運不況が続く中で、コストカット努力・需給改善をはかりつつ、ようやく世界の海運業は、業績の底を脱しつつあります。定期船が先に改善しています。中国景気の影響を受けやすい不定期船の需給改善は遅れています。
大量発注した船舶の竣工もようやく終わりつつあります。リーマンショックが起こった2008年以降は、船舶発注がほとんどされていませんでしたので、2015年以降は世界で竣工する船が極端に少なくなってきます。今後2-3年は海運業界の収益環境は改善すると予想しています。
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