先週の日経平均は、1週間で220円上昇して15,539円となりました。アメリカの利上げ時期が早まるとの思惑が出てドル高(円安)が進んだことが日本株上昇に寄与しました。

(1) 日経平均は、今週も15,500円中心の狭いレンジで推移へ

毎週、同じ話で恐縮ですが、日経平均は今しばらく15,000円台で膠着が続きそうです。「大きく上がれば売り、下がれば買い」の投資スタンスでいいと思います。

まだ上値トライする条件は整っていません。下値を試すほどの悪材料も出ていません。

日経平均(2012年11月~2014年8月22日)

(注)楽天証券経済研究所が作成

(2) 世界景気の回復力は、期待したほどに強くない

直近の1カ月で出てきた世界の景気指標は、世界景気の回復力が思ったほど強くないことを示しています。

  • 欧州の弱さが目立ちます。
    ドイツの4-6月GDPはマイナスとなり、ユーロ圏全体でインフレ率は7月で前年比0.4%まで低下しています。欧州の銀行が1990年代の日本の銀行のように不良債権を抱えたままであることも、景気を下押しする材料として意識されるようになりました。欧州は、先行きかつての日本のようにインフレ率がマイナスに突入する懸念も出ています。
  • 日本の景気回復力もさほど強くない
    消費増税で消費の落ち込んでいる上に、輸出の回復も鈍く、景気停滞局面にあります。
  • 中国景気にも不安
    中国も、大都市の不動産が下落を始めており、ここから景気が失速する懸念が払拭できません。
  • 米国は好調をキープ
    唯一、景気好調が続いているのが、米国です。

(3) 先週、米ドルが対円、対ユーロで上昇した理由

直接のきっかけとなったのは、8月20日に公開された7月のFOMC(金融政策決定会合)議事録です。内容が、市場予想よりもタカ派(早期利上げ容認)的と受け止められたことが、ドル高に動くきっかけとなりました。

ただし、今回のドル高(ユーロ安・円安)は、米景気が強いことが原因というよりは、欧州や日本の景気が予想よりも弱いことが原因と考えた方がいいと思います。欧州と日本に追加の金融緩和期待が出る中で、米国は相変わらず金融引き締め時期をめぐる議論が盛んです。

金融政策の方向性が異なることから、ここからさらにドル高/ユーロ安・円が進みやすくなっていると考えられます。

(4) ドル円為替レートの見通し

ドルの長期金利が上昇すれば、さらに円安が進むと考えられます。円安が進めば、日経平均は一段と上昇する余地が出ます。

日米の長期金利差と、ドル円為替レートの推移
2011年9月~2014年8月22日

上の図を見るとわかるように、ドル円為替レートの変動要因として、一番大きいのは、アメリカと日本の長期金利差です。

長期金利差は、米景気が強い中で、欧州・日本の景気がさほど強くないので、今後、拡大する可能性があります。ただし、足元、実際にドル長期金利が大きく上昇したわけではありません。このまま一本調子でドル高円安が進む環境でもありません。

アメリカの利上げがいつか、ヨーロッパと日本の追加緩和はいつか、議論が続く限り、当分、ドルは下がりにくく、上がりやすくなると思います。

なお、長期金利差だけで為替が決まっているわけではありません。日本の貿易収支が過去最大の赤字に落ち込んでいることも、円安要因となっています。