昨日、6月のアメリカの雇用統計が発表になりました。注目の非農業部門雇用者数は、前月比28.8万人の増加と、事前予想(21.6万人増)を上回りました。景気好調と判断される20万人を大きく上回る増加数です。失業率は、6.1%と、事前予想(6.3%)よりも、低水準でした。

(1)6月の米雇用統計は強い

アメリカの非農業部門雇用者数(前月比)

(出所:米労働省)

アメリカの完全失業率

(出所:米労働省)

雇用統計発表の直後に、為替はややドル高(円安)に動き、1ドル102円20銭をつけました。ただし、雇用統計を受けて一時上昇した米国債利回りが上げ幅を縮小したことから、NY市場の午後に入り、ドル買いの勢いは一服しました。

NYダウは雇用統計を好感し、前日比92.02ドル高の17,068.26ドルと最高値を更新しました。米国債利回りが上昇する気配がなかったこと、リビアが原油供給を増やす見通しから原油先物が低下したことから、幅広い銘柄が買われました。NYダウとS&P500は終値で3日連続の最高値更新となったほか、米ナスダック市場も2000年以来の高値で引けました。なお、NY市場は本日(4日)休場となります。

(2)世界景気の見通し

日米が強く、中国が停滞する構造は、変わらないと思います。

2014年の世界景気見通し

(注)7月以降は予想、楽天証券経済研究所が作成

(3)アメリカ景気の基調は強い

今、アメリカ景気の追い風になっているのが、シェール・ガス革命です。安いシェール・ガス、シェール・オイルを大量に産出するようになったおかげで、アメリカ経済は強くなりました。5~10年後には、アメリカが世界一の産油国になるという予想もあります。安いガスを原料に使う石油化学産業は、突如国際競争力が高まりました。運輸産業や住宅産業、自動車産業も、安いエネルギーの恩恵を受けて活況です。

不振なのは、ガス採掘業者です。ガス価格が安すぎて、採掘業は利益を出しにくくなっています。ガス価格を引き上げて採掘業者の利益を正常化する目的で、アメリカはシェール・ガスの輸出を解禁しようとしています。日本への輸出も始まる見込みです。

(4)アメリカ関連株を見直し

アメリカで利益を出している日本株に注目です。

参考:アメリカで競争力のある事業を展開している日本企業

証券コード 銘柄名 米国事業の近況
4063 信越化学工業 子会社シンテック社は、アメリカの塩ビ事業で高い競争力を有する。米住宅建設復調で需要も好調。原料に天然ガスを使うので、シェール・ガス革命の恩恵を受ける。
5105 東洋ゴム工業 トラック・バスなどに使われる大型タイヤを得意とする。大型タイヤが北米で好調。一般のタイヤと異なり、大型タイヤには安値の中国品が存在しないので、値崩れしない。
6326 クボタ トラクター・米作用農業機械で世界シェア高い。アメリカではトラクター販売で高い競争力を持つ。
7203 トヨタ自動車 アメリカで高級車が売れ始めた恩恵が大きい。北米2009-10年にアメリカで起こした大規模リコール問題は、米司法省に12億ドルを支払うことで和解。今年度中に燃料電池車を発売すると発表。
7270 富士重工業 アメリカで自動車販売が好調な恩恵をフルに受ける。円安進行で収益力が一段と高まる。