最近出た景気指標に、日本の景気の基調が強いと判断できるものが増えています。日本株に強気判断を継続します。
(1)日銀短観は、7月からの景気復調を示唆
昨日発表された日銀短観で一番注目度の高い「大企業製造業DI」は、良好な内容でした。6月(現状)は+12と、事前予想(+14~+15)を若干下回りましたが、3月時点の予想(+8)を上回りました。9月(予想)は+15と7月からの景気復調を示唆するものでした。
大企業製造業DI
大企業製造業DIは、昨年6月に景況感の分かれ目である0(ゼロ)を超えて、プラス圏に入り、その後プラス圏での推移が続いています。消費増税の影響で今年の4-6月に一時的に低下しましたが、9月には上昇が見込まれており、景気の基調は良好と判断できます。
(2)消費増税は、ほぼ完全に価格転嫁されました
総務省が発表した2014年5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコア指数)は前年同月比3.4%上昇しました。消費税引き上げがあった4月(前年比3.2%上昇)に続き、高い上昇率となりました。消費税の未転嫁で、企業業績が悪化するリスクは少なくなりました。
消費者物価指数上昇率(生鮮食品を除くコア)
消費増税が物価に与える影響は、4月で+1.7%5月で+2%と推定されています。消費増税の影響を除くベースでは、コア消費者物価は3月に前年比1.3%・4月に1.5%、5月に1.4%上昇したことになります。
3月 | 4月 | 5月 | |
---|---|---|---|
消費物価コア指数上昇率 | 1.3% | 3.2% | 3.4% |
消費税引き上げの影響 | なし | 1.7% | 2.0% |
消費増税影響を除くベース | 1.3% | 1.5% | 1.4% |
(出所:総務省資料より楽天証券経済研究所が作成)
消費増税はきちんと価格転嫁されたものの、インフレ率が加速する気配はありません。円安による物価押し上げ効果が一巡することで、秋口に向けて消費者物価上昇率は、やや低下するという見通しもあります。
<参考>消費税の価格転嫁がスムーズに実現した2つの理由
(1) 国内景気が好調で、値上げが通りやすかったこと
(2) 価格転嫁がきちんと実行されるように、政府が目を光らせていたこと
「消費税転嫁対策特別措置法」を2013年10月から施行し、転嫁促進をはかっていました。この法律で、大規模小売業者が消費税増税分を価格転嫁しないで、納入業者に値引きを強制する行為は違法とされました。
政府が旗振りをして、消費税転嫁を進めた効果は意外に大きかったようです。大手小売業は4月に値上げをしなかったら、中小納入業者に値引きさせてないか調査対象になりかねないからです。便乗値上げでも何でも、とにかく値上げしておけば文句を言われないので、今回は思い切って値上げを決断したところが多かったようです。
1997年に消費税が3%から5%に引き上げられた時は、今とは逆の状況でした。政府は「便乗値上げは許さない」を旗印にしていました。この時は、増税分を上回る値上げをする業者が、やり玉に上がる傾向がありました。
(3)雇用情勢は改善が続いています
完全失業率
有効求人倍率
総務省が先月27日に発表した5月の完全失業率(季節調整値)は3.5%と、1997年12月以来の低水準となりました。摩擦的失業(転職による一時的失業等)を除くと、完全雇用に近い水準と考えられます。
また、厚生労働省が27日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.09倍と、1992年6月以来の高水準となりました。1人の求職者に対して平均すると1.09人分の求人がある状態です。雇用情勢から見ても、景気は好調といえます。
このような環境が続くと、いずれ設備投資も回復に向かうと考えられます。
(4)リスクとして意識しておくべきこと
今、私が意識しているのは、以下の2つです。
- 地政学的リスク
世界で、国家間・民族間の紛争が増えています。イラク・ウクライナ情勢が金融市場に深刻な影響を及ぼす事態に発展するとは考えていません。ただし、万一、日中間で緊張が高まるようなことが起きれば、日本株は売られる可能性が高く、注意が必要です。 - 米金利上昇リスク
アメリカは景気が好調で、米FRBは金融緩和の縮小を続けています。それでもアメリカの長期金利は2.6%前後で安定しています。もし長期金利が3%を超えて上昇すると、世界的に株が調整する可能性が高まります。インフレ率が落ち着いているので、アメリカの長期金利が大きく上昇するリスクは低いと考えています。それでも、金融緩和の縮小が続く間に、金利が予想外に上昇することがないか、注意して見ている必要があります。
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