25日の日経平均は109円安の15,266円。24日に新成長戦略(アベノミクス成長戦略の改訂版)が発表されましたが、内容はほぼ事前に発表されていた通りでしたので、織り込み済みとの反応となりました。

(1)日本経済を強くすることに徹した内容

去年6月の成長戦略が、発表と同時に株式市場で失望されたのと比較すると、今回発表された新成長戦略は、少なくとも失望される内容ではありません。法人税改革(実効税率の20%台への引き下げ)・イノベーション推進・岩盤規制の改革など、基本方針は経済を強くすることに徹した内容と言っていいと思います。

もちろん、個々の政策には賛成できないものもあります。全体として、日本経済を強くする意志を前面に出した点は、株式市場から評価される内容といっていいと思います。

(2)実行力には疑問符がつく

今回打ち出したのはあくまでも基本方針であって、細部の決定は、今後の政策運営にかかっています。法人実効税率の引き下げだけでも、「本当に実行できるか?」疑問を感じる向きもあります。財源を確保できないことを理由に、減税が骨抜きになる可能性もないとは言えません。今後は、冷静に実行力の有無を見極めていくことになります。

(3)改革が動き出せば、外国人投資家の買い復活も

世界の株式市場を動かしている投資マネーは、経済を強くする改革を打ち出す国に向かう傾向があります。去年は、景気が減速している新興国から流れ出した投資マネーが、アベノミクスを評価して日本に向かいました。その結果、昨年、外国人投資家は、日本株を約15兆円買い越しました。

ところが、今年に入ってから一時アベノミクスに失望して、投資マネーは日本から離れつつありました。1-3月に外国人投資家は約2兆円も日本株を売り越しています。今年は、インドのモディ政権が打ち出している経済改革を評価して、インド株など新興国に投資マネーが逆流しています。

ただし、6月に入ってから、新成長戦略の概要が徐々に明らかになる過程で、外国人投資家は再び、日本株を買い越しに転じつつあります。日本へのマネーの流れを復活させられるか、これからが正念場です。

(4)イノベーション推進は、素直に評価

産業の新陳代謝を促し、イノベーションを推進する方向を打ち出していることは、評価できます。ロボット技術の活用、水素活用社会の実現、インフラ輸出の促進、世界最高水準のIT社会の実現などに具体的目標を設定していることも評価できます。日本の得意分野をさらに強くすることで、日本経済全体を強化する方向は評価できます。

日本は、自動車王国であり、ロボット王国でもあります。自動車産業とロボット・機械産業が、日本の強さを牽引している事実は変わっていません。次世代自動車・次世代ロボットでも、日本が世界のトップを走れるように政策支援する方向を打ち出したことは、評価できます。

水素社会実現の工程表の中で、世界最速の燃料電池車普及の方針が打ち出されていることには、特に注目しています。「水素関連銘柄」は、長期的な成長テーマとして評価できます。具体的な参考銘柄については、6月20日のレポート「水素社会実現へ政府が工程表、水素関連銘柄に注目」をご参照ください。