建設・土木株は、ようやく「利益なき繁忙」を脱し、「利益を伴う繁忙期」に入りつつあると考えています。ここ数年、建設・土木業界は、決算が出るたびに投資家を失望させてきました。仕事はたくさんあっても人出不足でこなせず、人件費や資材費の上昇が利益を圧迫する問題が顕著でした。ところが、前期(2014年3月期)決算から、会社予想を上回る利益を出すゼネコンが増えました。

(1)利益度外視の受注競争から、利益重視の選別重視に転換

仕事量が絶対的に不足していた時代は、最低限の稼働率を確保するためにゼネコン各社は安値受注を繰り返していました。特に、都心部の大型開発では、各社が一斉に安値入札をする結果、落札したほとんど全社が赤字受注というケースが後を絶ちませんでした。 風向きが変わったのが、ここ1~2年です。仕事はいくらでもあるが、労働者の確保ができなくて、工事が進まない例が増えました。直近、さらに民間建設需要が戻ると、受注量確保より人員など施工能力の確保の方が大変になってきました。 こういう環境のもとで、ゼネコン各社は安値での受注合戦をやめました。低採算の案件を謝絶し、高採算の案件を選別受注する余裕が出てきたのです。業界の環境変化を反映し、発注価格も徐々に上昇しつつあります。 ゼネコン各社は、仕事量の増加と受注単価の上昇で、今後2-3年、利益が拡大基調に入ると予想しています。

(2)東京オリンピックで、東京再開発が加速

東京オリンピックの波及効果はかなり大きくなりそうです。オリンピック需要を、競技場や選手村施設などの建設だけととらえると、実態を見誤ります。オリンピックはたかだか20日程度のイベントです。直接必要になる建設需要はたいしたことがありません。しかも、実際の建築工事は2015年以降に出るわけで、まだ先の話です。 大きいのは、オリンピック招致をきっかけに、東京のインフラ再構築を一気に進める動きが出ていることです。高速道路や地下鉄の拡張・耐震補強、老朽化した建築物の建て替え、通信網の再整備や電線の地中化など、これまで懸案になって手がつけられていなかったことが、オリンピック誘致をきっかけに一斉に動き出す気配があります。オリンピックで訪れる外国人観光客の「おもてなし」を口実に、東京を新しい都市に作り替えてしまおうとする試みです。私は、オリンピック誘致にこだわった東京都の狙いはそこにあると思います。 さらに、都心部で空室率の低下が続いていることから、民間の建築需要が回復している効果も大きいです。耐震基準を満たしていない古いビルを集約して大型のオフィス・商業スペースの複合施設に作り替える計画が、東京都内で多数動き始めています。

(3)建設・土木関連の参考銘柄

コード 銘柄名 業務内容 今期経常利益 市場予想が会社予想を上回る率
会社予想(億円) 市場予想(億円)
1414 ショーボンドHLDG 橋梁補修トップ 75 86 14.7%
1801 大成建設 大手ゼネコン 380 459 20.8%
1812 鹿島建設 大手ゼネコン 300 324 8.0%
1824 前田建設工業 中堅土木 115 123 7.0%
1881 NIPPO 道路舗装トップ 290 353 21.7%
1893 五洋建設 海上土木トップ 85 96 12.9%
1926 ライト工業 地盤改良トップ 48 67 39.6%
5232 住友大阪セメント セメント大手 220 235 6.8%
5233 太平洋セメント セメントトップ 650 676 4.0%
9678 カナモト 建機レンタルトップ 155 172 11.0%

(注)会社予想は各社決算短信、市場予想は6月16日時点のIFISコンセンサス予想

建設・土木各社は、今期(2015年3月期)業績予想を保守的(低め)に出していますが、実際の利益は上ブレすると予想しています。