今日、日本銀行の金融政策決定会合の結果が発表されます。黒田日銀総裁は、日本の景気回復とインフレ率の上昇に強い自信を示しており、普通に考えれば、追加の金融緩和はありません。

(1)追加緩和があれば不動産・金融にプラス。では、なければマイナスか?

短期筋は、追加緩和「あり・なし」を、短期的な相場材料ととらえています。あれば「ポジティブ・サプライズ(事前に予想されていなかった好材料)」で、不動産・金融株が買われることとなるでしょう。では、なければ、不動産・金融が売られるのでしょうか?私は、追加緩和がなくても都心不動産の上昇基調は変わらないと判断しています。つまり、追加緩和がなくても不動産株や、REIT(リート:東京証券取引所に上場して売買される不動産投資信託)の中期的な上昇基調は変わらないと判断しています。

(2)都心で空室率の低下が続いている

三鬼商事が発表した「最新オフィスビル市況(2014年6月号)」によると、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の5月の空室率は6.52%と、4月の6.64%からさらに低下しました。

都心5区の空室率は、2012年6月に9.43%で天井をつけ、その後はほぼ一貫して低下しています。東証REIT指数は、空室率の低下にしたがって2012年から底打ち、上昇してきています。

 
 

(出所)空室率は三鬼商事、東証REIT指数は東京証券取引所

(3)不動産市況が上昇する時、金利は上昇する

金利が上昇したら、不動産の上昇は終わると考える人がいますが、過去を検証するとそんなことはありません。金利が上がり過ぎると不動産市況を冷やしますが、金利が底値から上がってくる段階では、不動産のブームは継続しています。

まず、東証REIT指数の過去10年の動きから、近年の不動産市況の変動を見てみましょう。

 

日本の不動産は、2007年に「ミニバブル」と言われる急騰を経験しました。その後、急落しましたが、2013年から再び上昇し始めています。では、この動きを長期金利の変動と合わせて比較しましょう。

 

過去10年の動きをよく見ていただくとわかりますが、不動産の上昇期2003年~2007年には、長期金利は上昇しています。その後の不動産急落局面では金利は下落しています。最近は、日銀の「異次元金融緩和」の実施で、長期金利が下がる中で、不動産市況は上昇してきています。

<参考>追加緩和あり・なしの判断について

金融緩和の追加が「ある・なし」を議論する際に、1つ、問題になることがあります。「追加緩和」の定義がはっきりしていないことです。

今、日銀は長期国債を大量に買い付けています。その買い付ける金額を大幅に増やすことを追加緩和と定義するならば、かなり高い確率で、追加緩和はないでしょう。

ただし、別の方法で、追加緩和を「やった」と見せることは可能です。

ECB(欧州中央銀行)のように、マイナス金利を導入するとか、やったと見せようと思えば、手はあります。

しかしながら、最近の黒田総裁の発言を聞く限りでは、今日はいかなる形でも追加緩和の発動はないと予想しています。黒田日銀総裁は、金融緩和のやり過ぎで悪いインフレが起こるリスクも頭の片隅にあると考えられます。

(4)不動産ブームの恩恵を受ける参考銘柄

代表的な銘柄としては、都心の優良物件を保有している大手不動産株・REIT(上場不動産投資信託)があります。

コード 銘柄名 備考
8801 三井不動産 賃貸ビルの含み益1兆2159億円
8802 三菱地所 賃貸ビルの含み益2兆964億円
8830 住友不動産 賃貸ビルの含み益1兆1326億円
8951 日本ビルファンド 三井不動産が運営主体のREIT
8952 ジャパンリアルエステイト 三菱地所が運営主体のREIT