三井不動産(8801)の決算説明会に行ってきました。都心の不動産は既に需給がタイトであることが確認できました。都心では、空室率の低下が続き、賃料も底打ちし始めています。都心で金額のまとまった物件は、売るよりも買う方がむずかしい状況になっています。

不動産株や東証REIT指数(東証に上場している不動産投資信託全銘柄を対象とした指数)の動きを見ていると、昨年5月以降、上昇の勢いが止まっているように見えますが、実物不動産の方は、一足先にホットになっているようです。

(1)都心5区の空室率低下が続く

東京都心5区 空室率(%)

東証REIT指数

(注)都心5区は、千代田・中央・港・渋谷・新宿の5区
(出所)空室率は三鬼商事、東証REIT指数は東京証券取引所

都心5区の空室率は、2012年6月に9.43%とで天井をつけ、その後は一貫して低下しています。東証REIT指数は、空室率の低下にしたがって2012年から底打ち、上昇してきています。

ただし、2013年から東証REIT指数の動きは、空室率の低下トレンドと、やや乖離した動きになっています。2013年1-3月は、アベノミクスによる景気回復と、日銀による金融緩和への期待で、不動産株や東証REIT指数が急騰しました。空室率は、2013年3月時点でまだ8.56%までしか低下していませんでした。まだ、実物不動産の需給がタイトではなく、賃料の下落が続いていました。実物がホットでない中、不動産株、REITだけ先に将来の期待で急騰している状況でした。

ところが、今は、その逆です。実物不動産が非常にホットになる中で、不動産株やREITは、まだ2013年4月の高値を抜けなくなっています。

私は、今後、不動産株・REITとも、遅れを取り戻す形で上昇が始まると予想しています。既に変化の兆しはあります。足元、不動産株やREITが上昇し始めているのは、実物不動産がブームになり始めていることが、不動産株やREITに反映し始めたものと考えています。

(2)二極化が顕著な不動産人気

今回の不動産ブームは、優良物件に限定したブームとなっています。一等地・優良物件・まとまった金額の物件への引き合いは多いが、古い小規模ビルからは、いまだにテナント流出が続いています。東日本大震災以降、耐震性能の高い物件に引き合いが強いことも、その傾向を助長しています。

日本には、戦後3回大きな不動産ブームがありました。

  • 1973年、列島改造論に刺激された不動産ブームで、全国の不動産が値上がりしました。
  • 1980年代後半に、過去最大の不動産バブル相場がありました。この時は、当初東京だけ値上がりしましたが、最終的には地方物件まで値上がりが波及しました。
  • 2007年の不動産ミニバブルでは、都心の物件中心に上昇し、ブームは地方までは波及しませんでした。

さて、今始まっている4回目の不動産ブームでは、よりシビアに優良物件だけが買われるようになっています。東京でも都心の一等地、優良物件に限定した引き合いが増えています。過去3回のブームを比較すると、より狭い範囲の優良物件だけのブームとなっています。

(3)不動産ブームの恩恵を受ける参考銘柄

まず、都心の優良物件を保有している大手不動産株・REIT(不動産投資信託)から投資するのがよいと思います。

コード 銘柄名 備考
8801 三井不動産 賃貸ビルの含み益1兆2159億円
8802 三菱地所 賃貸ビルの含み益2兆964億円
8830 住友不動産 賃貸ビルの含み益1兆1326億円
8951 日本ビルファンド 三井不動産が運営主体のREIT
8952 ジャパンリアルエステイト 三菱地所が運営主体のREIT