日本銀行の黒田総裁の発言に一喜一憂する相場が続いています。彼が「(追加緩和が)必要ならやる」と力強く発言すると円安が進み、かつ日経平均が上がり、追加緩和のメリットをうける代表的なセクターの不動産・金融株が買われる傾向があります。一方、「現時点ではやらない」と発言すると円高が進み、また日経平均が下がり、追加緩和メリット株が売られているようです。

黒田総裁が、日本の景気に強気の見通しを示しても、株は売られます。中央銀行総裁の発言は、どこの国でも純粋な景気見通しと見られないからです。「景気に強気」→「追加緩和する気なし」と解釈され、市場には失望が広がります。

(1)本当は、追加緩和より、今期の企業業績の方が重要

日本の実質金利は以下のとおり、既にマイナスです。
(注)「実質金利」の説明は、4月16日のレポートにあります。ご参照ください。

(グラフA)上段:長期金利(10年新発国債利回り)とコアCPI(前年比)
下段:実質金利(長期金利―コアCPI上昇率)

「実質金利マイナス」を保てば、金を借りて実物に投資するインセンティブを高めることができます。最初に、利回りで魅力の出てきた不動産市場への資金流入を促すことになるでしょう。最近の不動産株は「追加緩和のあるなし」の思惑で乱高下していますが、私は、追加緩和がなくても、今の緩和状態が続けば、日本の不動産および不動産株は上昇すると予想しています。

マイナスの実質金利が、設備投資に与える影響はどうでしょう。残念ながら金融緩和だけで設備投資を増やす効果は期待できません。ただし、円安で国内に設備投資が回帰する動きもありますので、「実質金利マイナス」を保てば、設備投資の回復にもいくらかは寄与すると考えています。

日本株は、短期的には「日銀の追加緩和あるなし」など材料に反応して乱高下していますが、株価水準は最終的には企業業績によって決定されるものです。私は、追加緩和がなくても、今の緩和状態が続けば、今期(2015年3月期)、日本企業の純利益は10%以上増加し、日本株も年後半には上昇トレンドに戻ると予想しています。

(2)追加緩和メリット株としての不動産株

私は、今後2~3年、東京など都心部の不動産価格は緩やかな上昇が続くと予想しています。利回り3~4%出る物件は、日銀の金融緩和で長期金利が0.6%程度と低く抑えられていることから、利回り魅力で再評価される余地があると考えています。海外マネーも日本の不動産への流入が進むと見ています。したがって、REIT(不動産投資信託)・不動産株についても、強気の見通しを継続しています。

「追加緩和なしで金利が上昇しても不動産株は買いか」という質問を受けることがありますが、それには以下のようにお答えしています。「前回の不動産ブームは2005~2007年にかけてありました。金利が上昇し、地価も上昇する中で起こったことです。地価上昇がない中では金利上昇は不動産市況にマイナスですが、ひとたび地価が上昇すると金利は上がってもREITや不動産は上昇します。過去を冷静に分析すれば、不動産市況や不動産株は、金利上昇期に上がっていることが明らかです。

(参考)東証REIT指数の推移