今年に入ってから、インド・インドネシアなど、新興国株の上昇が目立ちます。先週は、日本株が下がる中で、中国株の上昇も目立ちました。昨年パフォーマンスがよかった日本・アメリカ・ヨーロッパの先進国株を売り、昨年パフォーマンスが悪かった新興国株を買い戻す動きが出ています。日本株は特に売りのターゲットとなっているようです。

さて、この動きは、日本株の物色動向にも反映するでしょうか。具体的には、中国をはじめとした新興国の経済動向に影響を受けやすいと言われるコマツ(6301)三井物産(8031)JFEホールディングス(5411)いすゞ自動車(7202)三菱商事(8058)などの株式が、昨年パフォーマンスが悪かった新興国/中国関連株の見直しにつながるでしょうか。

(1) 3月以降、目立つ新興国株買い、日本株売り

以下のとおり、4月に入ってから、日本売り・新興国株買いの流れが鮮明です(グラフA)。

上昇する新興国株、下がる日本株

  • 昨年末を100として指数化。インドネシアはジャカルタ総合、インドはSENSEX、中国は上海総合、ブラジルはボベスパ、日本は日経平均。

(2) 現時点で、新興国復活を確信はできないが、少しずつ投資を始めるにはいいタイミングと判断

新興国の一部に回復期待も出ています。インド・インドネシアには、政治改革によって経済が回復する期待があります。中国・ブラジルはまだはっきりと回復の兆しをつかめていませんが、将来どこかで回復する期待はあります。

1つ言えることは、昨年1年間、新興国株は低迷したので、株価は全般に割安になっている可能性が高いということです。人口増加による成長が続く新興国株は、いずれどこかが買い場になるでしょう。ピンポイントで当てるのは難しいだけに、今から少しずつ投資を始めるのが望ましいと思います。

1つ参考になるのは、欧州の復活プロセスです。3年前には、まだ欧州の先行きに多くの人が悲観的でした。ところが、そこが、後から振り返ると欧州株や通貨ユーロの買い場でした。危機が深まる中で、欧州は徐々に経常赤字体質を改善していたのでした。

(3) 日本の新興国関連株は買いか?

新興国経済の復活を確信できないので、日本の新興国関連株もすぐに買いにいっても上値は重いままかもしれません。ただし、新興国経済の先行きへの悲観から、極端に割安になっている銘柄は少しずつ投資を始めてもいいと思っています。

その代表といえるのが総合商社株です。私は、日本の大手総合商社5社(伊藤忠(8001)丸紅(8002)三井物産(8031)住友商事(8053)三菱商事(8058))が、株価指標でみてあまりに割安なのを、常々不思議に思っています。

取材で見えてくる大手総合商社は、新興国でのビジネスリスクをうまくコントロールしているように思います。特定産業、特定事業に、過度な投資ポジションを取らずに、幅広い産業に分散しています。かつて資源事業にやや偏っていた事業構成も、食糧や電力など非資源の安定事業への投資を強化することで修正してきています。

世界中で幅広くビジネスをやっていますので、世界経済全体が悪化する局面では、大きな影響を免れませんが、そうでない限りは、新興国経済の成長の恩恵をうまく享受できるビジネスモデルを築きつつあると考えています。