8日のNYダウは10.27ドル高の16256.14ドルと小反発しましたが、上値は重いままです。4日に発表された3月の雇用統計が良好で米景気回復期待が高まったにもかかわらず、NYダウは大きく下がり、そこから調整が続いています。米国株が下がったので、いつも通り円高が進み、日本株はNYダウ以上に下がりました。

なぜNYダウは売られたか?アメリカで話題になっているのは、アメリカの相場格言「Sell in May and go away」です。過去4年続けて、NYダウは5月に売られました。今年も5月に株が下がりそうだから、そろそろ株を売った方がいい、という思惑が働きます。日本にも、「節分天井、彼岸底」など季節ごとのいろいろな格言がありますが、まあ、当たる時もあれば外れる時もあります。アメリカの「Sell in May」はそんなに良く当たるのでしょうか?

(1) NYダウが下がった理由

大雪の影響で停滞していたアメリカの景気がいよいよ復活!という矢先にNYダウが下がった背景は、いろいろ考えられます。

  • アメリカの景気復調はおり込み済み
    NYダウは1-3月にほとんど下がっていません。1月に米景気変調を嫌気して急落しましたが、大雪の影響による一時的停滞という理解が広がり2-3月にはリバウンドしています。3月の雇用統計で実際に景気復調を確認したので、いったん利益確定売りが出たと考えられます。Buy the rumor sell the fact(噂で買って、事実で売る:アメリカの相場格言)というわけです。
  • これから始まるアメリカの決算発表(1-3月期業績)はあまり良くないという不安
    大雪の影響で経済が停滞したので、1-3月期の業績はあまり良くないと思われます。4月から景気が良くなっていれば、気にしなくてもいいはずですが、「Sell in May」もあり、いったん利益確定したいという心理が広がったかもしれません。

(2) アメリカの「Sell in May」はそんなによく当たるのか?

百聞は一見にしかず。まず、過去4年のNYダウの動きをチェックしてみましょう(グラフA・B)。

(グラフA)NYダウ2013年と2012年の動き(赤い線に挟まれているのが5月)

 

(グラフB)NYダウ2011年と2010年の動き

 

なるほど、過去4年は5月にNYダウが下がっていることがわかりました。ただし、それは過去4年、1-3月に好調だったアメリカ経済が4月から失速したことが多かったことも関係あります。もし今年も、4-5月からアメリカ景気が悪化するならば、同じことが起こるでしょう。

ところが、今年は、景気のリズムがやや異なります。昨年10-12月に絶好調に見えたアメリカ景気が今年1月から失速しました。それで今年は「Sell in January(1月に売れ)」になってしまったわけです。私は、4-6月はアメリカの景気復調が鮮明になると予想しています。

もし、NYダウが5月に下がるとしたら、別の理由になると思います。おそらく「アメリカの景気が強すぎて金融引き締めが早まる懸念が広がりNYダウが下がる」ことになるでしょう。そうならないように「ほどほどにアメリカの景気が強い」ことが、相場にとってはベストシナリオです。そのため、今後のNYダウの動きに注目です。

(チャートC)2014年のNYダウの動き