24日の日本株市場で、珍しく地方銀行株が急騰しました。地方銀行を含め、小型割安株の値上がりが全般に目立ちました。人気の高い小型成長株よりも、不人気株の小型割安株の方がよく値上がった1日でした。これはとても珍しいことです。

主力株を買いにくい環境の中で、消去法で買われた感もありますが、株価が非常に割安な銘柄が多く、しばらく地方銀行株の上昇が続くと思います。

(1) 何も買い材料のない中で、地方銀行株が軒並み急騰

24日は、とりたてて何も買い材料が出ていない中で、地方銀行株が大きく上昇しました(表A)。

(表A)銀行株の前日比値上がり率上位10社(3月24日)

証券コード 銘柄名 株価上昇率 PBR (倍) PER (倍) 配当利回り
8338 筑波銀行 9.5% 0.32 8 1.4%
8390 鹿児島銀行 8.5% 0.45 13 1.5%
8600 トモニHLDG 8.3% 0.39 8 2.0%
8337 千葉興業銀行 8.0% 0.5 6 NA
8339 東京都民銀行 7.6% 0.5 12 1.9%
8368 百五銀行 7.5% 0.35 10 2.0%
8522 名古屋銀行 7.3% 0.36 18 1.8%
8527 愛知銀行 7.3% 0.28 12 1.4%
8409 八千代銀行 7.0% 0.43 7 2.2%
8344 山形銀行 6.9% 0.52 12 1.5%

(2) 株価が割安なことが、唯一の買い材料

表Aを見るとわかる通り、地方銀行株のPBRは、非常に低くなっています。解散価値といわれるPBR1倍を下回るだけでなく、なんとPBR0.5倍すら下回っている銘柄が多いのは驚きです。純資産価値をこれだけ大きく下回るのは、昔は倒産懸念株だけでした。今は、財務内容に問題ない、堅実経営の地方銀行でも、このような極端な安値に置かれるのが当たり前になってしまいました。

(3)金融機関同士の持ち合い解消売りが、地方銀行株を安値に落とした

1998~2002年にかけて、日本では不良債権をかかえて破綻する銀行が相次ぎ、金融システム不安が蔓延していました。この頃も、地方銀行株はPBRで見て安く放置されました。不良債権の不安があったので、当然かと思います。

驚くことに、不良債権問題から解放された今の地方銀行株は、PBRで見て、当時よりも全般的に安い水準に放置されています。これには、わけがあります。

地方銀行は、これまで大手銀行や大手保険会社と、株式を持ち合っていました。しかし、銀行や保険会社の自己資本規制が国際的に強化される中で、10年くらい前から大手銀行や保険会社は、一斉に地方銀行株に対し、持ち合い解消の売りを出すようになったのです。買い手不在の中で、五月雨的に続く持ち合い解消売りによって、地方銀行株は、軒並みきわめて割安な水準に売られました。

(4)成長性がなく、収益性が低いことから、大幅な上昇は期待薄

今の日本株市場では、ただ安いだけの買い材料のない株は、いつまでも安いままに放置される傾向があります。地方銀行には、ほとんど成長性の期待を持てません。これまで、割安に注目して一時的に上昇することはあっても、人気化して大きく上昇することはありませんでした。これからも、それは変わらないでしょう。

ただし、これだけ株価が安いと、下値リスクもあまり大きくないと考えられます。いつか安いものを評価する市場になることを期待して、少しだけ地方銀行株を保有しておくのも、悪くはないと私は思います。