昨日のNYダウは231ドル安。日経平均は、しばらく上値の重い展開が続きそうです。ただ、私は2~3ヶ月後には再び上昇トレンドに入ると予想しています。ここはじっくりと、いい銘柄を仕込んでいく局面と考えています。
今日は、巨額の含み益を持つ銘柄への投資アイディアを紹介します。
(1)賃貸不動産に巨額の含み益が存在する銘柄のリスト
2010年より、上場企業には、賃貸不動産の時価開示が義務付けられました。それ以来、賃貸不動産に巨額の含み益がある企業が明らかになりました。不動産・電鉄・倉庫業で含み益が大きい上位3社をあげると以下の通りです(表A)。
(表A)賃貸不動産の含み益が大きい企業
証券コード | 銘柄名 | 賃貸不動産の 含み益 |
|
---|---|---|---|
不動産 | 8802 | 三菱地所 | 2兆676億円 |
8830 | 住友不動産 | 1兆15億円 | |
8801 | 三井不動産 | 9,205億円 | |
電鉄 | 9020 | JR東日本 | 8,617億円 |
9021 | JR西日本 | 1,862億円 | |
9005 | 東急電鉄 | 1,485億円 | |
倉庫 | 9301 | 三菱倉庫 | 1,719億円 |
9302 | 三井倉庫 | 1,101億円 | |
9303 | 住友倉庫 | 521億円 |
(出所)2013年3月期有価証券報告書より楽天証券経済研究所が作成
すごいでしょう。トップの三菱地所は、なんと2兆円を超える含み益があります。念のため、含み益とは、時価と簿価(帳簿上の価格)の差額のことです。たとえば、1兆円で買った不動産の時価が、1兆3,000億円に値上がりしていたら、そこに3,000億円の含み益が存在することになります。その不動産を時価で売却すると、3,000億円の利益が上がります。
あり得ないことですが、もし三菱地所が保有する賃貸不動産をすべて時価で売却すると、2兆676億円の利益を得られるわけです。
(2)「実質PBR」で真の割安企業を見つける
「含み益の大きい企業を買えば儲かる」という程、株式投資は単純ではありません。賃貸不動産の時価自体は、開示情報です。そこに存在する含み益は、各社が公表している有価証券報告書を使えば、誰でも計算することのできる数字です。含み益を織り込んで、株価が既に高くなっていれば、投資魅力が高いとは言えません。
そこで見るべきは、PBR(株価純資産倍率)という指標です。PBRとは、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを示す指標です。資産価値からみて、株価がどの程度割安であるかがわかります(表B)。
(表B)含み益の大きい各社の3月13日時点の連結PBRと実質PBR
証券コード | 銘柄名 | 連結PBR | 実質PBR | |
---|---|---|---|---|
不動産 | 8802 | 三菱地所 | 2.6 | 1.3 |
8830 | 住友不動産 | 2.9 | 1.5 | |
8801 | 三井不動産 | 2.2 | 1.5 | |
電鉄 | 9020 | JR東日本 | 1.4 | 1.1 |
9021 | JR西日本 | 1.1 | 0.9 | |
9005 | 東急電鉄 | 1.5 | 1.3 | |
倉庫 | 9301 | 三菱倉庫 | 1.0 | 0.7 |
9302 | 三井倉庫 | 0.8 | 0.4 | |
9303 | 住友倉庫 | 0.7 | 0.6 |
(出所)各社有価証券報告書から楽天証券経済研究所が作成
(注)実質PBRは、実効税率を35%として含み益の65%を自己資本に加えて計算
ここで、注目していただきたいのは、実質PBRです。解散価値といわれるPBR1倍を下回っている銘柄(青文字で記載しているところ)は、割安と判断することができます。
(3)持っているだけでは意味がない、活用してこそ価値がある「含み益」
では、実質PBRの低い銘柄を買えば、将来値上がりする可能性が高いといえるでしょうか?買収が活発に行われる国では、実質PBRが極端に低い企業に対しては、敵対的買収がかかります。すると、株価は即座に上昇します。ただし、日本は敵対的買収が起こりにくい国なので、そのようなことはあまり期待できません。
あくまでも含み益を活用して、企業価値を高めていく経営をしているか否かが、重要です。含み益の上に、ただあぐらをかいているだけの企業は、投資してもなかなか株価は上がりません。今日ご紹介した9社は、保有不動産を活用して企業価値を拡大していく意識のある会社と考えています。中でも、最高益を更新していく企業には注目できます(表C)。
(表C)2014年3月期の純利益予想(青文字は最高益)
証券コード | 銘柄名 | 純利益 (会社予想) |
前年比 | |
---|---|---|---|---|
不動産 | 8802 | 三菱地所 | 580億円 | 27.5% |
8830 | 住友不動産 | 680億円 | 13.7% | |
8801 | 三井不動産 | 650億円 | 9.3% | |
電鉄 | 9020 | JR東日本 | 1,920億円 | 9.5% |
9021 | JR西日本 | 605億円 | 0.5% | |
9005 | 東急電鉄 | 500億円 | 16.1% | |
倉庫 | 9301 | 三菱倉庫 | 86億円 | 0.1% |
9302 | 三井倉庫 | 42億円 | 32.7% | |
9303 | 住友倉庫 | 65億円 | 4.5% |
(出所)各社の決算短信および業績予想開示資料
住友倉庫は、2014年3月期に最高益に近い純利益を計上する見込みです。私は2015年3月期には最高益を更新すると予想しています。
実質PBRの計算方法
実質PBRとは、各社が保有する含み益の65%を自己資本に加えて、計算したPBRのことです。三菱地所を例にとって説明しましょう。三菱地所には、2013年3月末時点で、2兆676億円の含み益が存在します。もし、賃貸不動産をすべて売却すると2兆676億円の売却益が得られますが、売却益には税金がかかります。税率を35%と仮定すると、税引き後で、含み益の65%に当たる1兆3439億円が残り、自己資本に加えられます。実質PBRは、自己資本に含み益の65%に当たる1兆3,439億円を加えて計算したものです。
PBRを理解するためのイメージ図
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