日経平均は、しばらく15,000円を中心としたボックス圏で推移する見込みです。さて、こんな時には、まず好配当利回りの日本株やREITへの長期投資から始めたらいいと思います。私は特に、分配金利回りが平均約3.7%と魅力的で、東証に上場しているREIT(不動産投資信託)を見直していいと考えています。

(1)不動産への小口投資を可能にしたREIT

個人投資家の不動産投資というと、ワンルームマンションからアパート1棟までさまざまですが、資金規模からおのずと直接投資できる対象は限られます。

REITを通じて投資すれば、都心一等地の大型ビルに投資することもできます(図A)。

(図A)REITを通じて大型物件に投資

一等地の大型ビルにテナントが集中し、競争力のないビルからテナントが流出する「不動産の二極化」が顕著にみられる時代になりました。二極化の勝ち組である強いビルへの小口投資も可能にしたREITの存在は貴重です。

(2)不動産市況は底打ちが顕著になってきた

日本の不動産市況は、2007年に「ミニバブル」という急騰があり、その後急落しましたが、足元は底打ちしつつあります。その動きが、東証REIT指数からわかります(グラフB)。

(グラフB)東証REIT指数の動き(2014年3月11日まで)

(作成:楽天証券経済研究所)

東証上場REITの分配金利回り(約3.7%)と、長期金利(約0.6%)のスプレッド(差)は、3%以上あり、REITは利回りから魅力的です。今後、一等地のビルについては、空室率の低下や賃料の底打ちが期待できるので、これからREIT指数のさらなる上昇が期待できると判断しています。

(3)金利上昇と不動産価格の関係

不動産市況の見通しについてお話しすると、「今後、金利が上昇すると、不動産市況にネガティブな影響が及ぶのでないか」という質問をよく受けます。

その通りです。金利上昇自体はネガティブです。ただし、過去を振り返ると、金利底打ち期には不動産市況が上昇することが多かったのも事実です。グラフBに示している「不動産ミニバブル期」には長期金利は上昇していました。

一方、「ミニバブル崩壊期」の初期(2008年)はまだ金利が上がり続けていますが、その後は金利が低下する中で不動産価格が下がり続けています。

まとめると、以下のことがわかります。

  • 金利上昇初期~中期には、不動産市況は上昇する。
  • 金利上昇末期に、不動産市況は下落し始める。

これから日本では、長期金利の底打ちが予想されますが、0.6%の長期金利が1~1.5%になる辺りまでは、不動産市況を壊す要因にならないと考えています。

(4)さまざまな種類があるREIT

本日は、REITの中でも、主にオフィスビルに投資するオフィスREITの話をしました。REITには、さまざまな種類があります。賃貸マンションなどに投資するレジデンシャルREIT、小売り施設に投資するリテールREIT、物流施設に投資する物流REITなどがあります。投資対象によって、利回りや価格変動のパターンは異なります。

<参考>過去の不動産バブル

日本の不動産は、過去に3回、バブルを経験してきました。

  • 最初のバブル
    1970年代前半、田中角栄首相の「列島改造論」を受けて不動産価格が急騰しましたが、1973年に第一次石油ショックが起こると急落しました。
  • 過去最大のバブル
    1980年代後半の「バブル景気」で、不動産価格が急騰しましたが、1990年代の「失われた10年」不況に入ってから急落しました。
  • ミニバブル
    2005年~07年都心再開発ブームを背景に不動産価格が急騰してミニバブルと言われましたが、2007年以降、金利上昇と世界景気の悪化を受けて急落しました。