例年3月初旬から、配当や株主優待で魅力の高い銘柄が物色される傾向があります。3月に決算を迎える銘柄を3月26日(水)までに購入すると、3月末の株主に割り当てられる配当や株主優待を受け取れるからです。権利取りをねらって3月初旬から買い始めるのも悪い戦略ではありません。ただし、注意すべき点が、3つあります。

(1)まず、決算期を確認しましょう

まず、買おうと思っている銘柄の、決算期を確認しましょう。日本では大半の銘柄が3月決算ですが、一部異なる決算期の会社もあります。

小売業には、2月決算銘柄もたくさんあります。たとえば、ローソン(証券コード2651)は2月決算です。予想配当利回りは3.09%(2月27日時点)と魅力的ですが、2月末の配当を取るには2月25日(火)までに買わなければなりませんでした。既にその期日は過ぎています。ローソンの場合は、今から買っても受け取れる配当は、8月末の中間配当からとなります。

中間配当がある会社かどうかも確認しましょう。日本では、ほとんどの企業が中間配当を実施しています。年間配当の約半分を9月末の株主に支払い、残り半分を3月末の株主に払うことが多くなっています。配当利回り3%といっても、9月と3月に半分ずつ支払う場合が多いのです。

たとえば、NTTドコモ(証券コード9437)は、3月決算で、予想配当利回りは3.56%と魅力的ですが、昨年9月の中間配当で約半分を支払済みですから、今から投資して3月末に権利を確定できるのは、3.56%の約半分(税引前)です。

なお、配当金について源泉分離課税を選択している場合は、今年から約20%の源泉税が差し引かれます。非課税のNISA口座で保有している銘柄については、配当から源泉税が引かれることはありません。

(2)配当取りの買いで既に値上がりしている銘柄は避けた方がいい

3月決算の好配当利回り銘柄を、3月26日に買えば、買ってすぐ配当を受け取る権利が確定します。得をした気分になりますが、実は、必ずしも得にならない場合があります。

好配当や、魅力的な株主優待で有名な銘柄は、権利取り確定日にかけて株価が急上昇し、権利確定直後に、権利落ちで株価が急落することもあります。受け取れる配当価値以上に株価が上昇し、権利確定後に、受け取った配当以上に株価が下がることがありますので、要注意です。

どういうことかイメージをつかんでいただくために、以下に架空の好配当利回り株の配当取りと配当落ちの過剰反応の例を示しました(グラフA)。株価は1,000円で、配当取りと配当落ちのほか1カ月動きがないと仮定しています。また、配当と株主優待の価値を合わせると30円(3%)の権利が確定できるとしています。

小型の好配当利回り株で、上記のような乱高下が見られることがあります。大型株では値動きがもう少しマイルドになります。なお、上記は過去に観察された配当取りの過剰反応の一例を示しただけです。実際には、権利取りが2月から始まる場合や、権利取りの動きが全く見られない場合など、いろいろあります。今年どうなるかはわかりません。

(3)業績が急速に悪化している銘柄は避ける

今出ている配当利回りは、あくまでも予想配当に基づく利回りです。業績が著しく悪化している銘柄では、決算確定後に減配が発表されることもあります。予想配当利回りが極端に高い銘柄、たとえば6%とか7%には、減配リスクの高い銘柄が多いので要注意です。