「好配当利回り株に投資したいが、具体的にどのような銘柄を選んだらいいか知りたい」というお問い合わせがありましたので、今日は、投資候補銘柄の絞り込み方について解説します。

(1)配当利回りは確定利回りではない、減配リスクの低い銘柄を選ぶことが大切

配当利回りは確定利回りではありません。減配があると利回りが低下するだけでなく、株価が下がることもあります。ですから、なるべく減配リスクが低い銘柄を選ばなければなりません。
私は、楽天証券でチーフ・ストラテジストに就任する前は、日本株ファンドマネージャーとして25年の運用経験を持っていました。私は、実際の運用で、なるべく減配リスクが低く配当利回りが高い銘柄を選ぶために、以下のスクリーニング条件を使っていました。

  • 配当利回りが高い
  • 時価総額が大きい
  • 営業利益率が高い
  • 自己資本比率が高い

(2)スーパースクリーナーで投資候補銘柄を選ぶ

それでは、楽天証券のスーパースクリーナーを使って、具体的に投資候補銘柄を選んでみましょう。先ほど、あげた条件で具体的にどんな数字を入れるかが重要です。まずは、非常に厳しいスクリーニング条件で銘柄を設定して選んでみましょう。

<1>非常に厳しいスクリーニング条件を設定

① 配当利回り  3%以上
② 時価総額 1兆円以上
③ 営業利益率 10%以上
④ 自己資本比率 60%以上

<1>スクリーニング結果

証券 コード 銘柄名 配当利回り 時価総額 営業利益率 自己資本比率
9437

NTTドコモ

3.53% 7.4兆円 18.7% 75%

条件が厳しすぎて、1銘柄しか出てきませんでした。では、好配当利回り銘柄へ投資するときは、NTTドコモ1社に集中投資すればいいのでしょうか?

私は、1銘柄への集中投資は望ましくないと思います。複数銘柄へ分散投資すべきです。というのは、今、どんなに減配リスクが低く見える銘柄でも、将来、環境がガラッと変わって減配になることはあり得るからです。

それでは、スクリーニング条件を全体にもう少し緩めて、出てくる銘柄数を増やしてみます。

<2>少し条件を緩めてスクリーニング

① 配当利回り  3%以上
② 時価総額 4000億円以上
③ 営業利益率 7%以上
④ 自己資本比率 50%以上

<2>スクリーニング結果

証券 コード 銘柄名 配当利回り 時価総額 営業利益率 自己資本比率
3405

クラレ

3.12% 4422億円 13.3% 67%
4502 武田薬品 3.67% 3.9兆円 7.8% 54%
4568 第一三共 3.41% 1.2兆円 10.0% 53%
4704 トレンドマイクロ 3.63% 4833億円 27.1% 54%
7751 キヤノン 4.09% 4.2兆円 9.0% 68%
9437 NTTドコモ 3.53% 7.4兆円 18.7% 75%

条件の緩め方は1通りではありません。たとえば、時価総額の条件を甘くして、その代わりに他の条件は最初の厳しい条件に戻すとどうなるか、見てみましょう。

<3>時価総額条件だけを緩めてスクリーニング

① 配当利回り  3%以上
② 時価総額 300億円以上
③ 営業利益率 10%以上
④ 自己資本比率 60%以上

<3>スクリーニング結果

証券 コード 銘柄名 配当利回り 時価総額 営業利益率 自己資本比率
3405 クラレ 3.12% 4422億円 13.3% 67%
4708 りらいあコミュニケーションズ 5.84% 690億円 13.1% 74%
6419 マースエンジニアリング 3.21% 424億円 20.9% 76%
7751 キヤノン 4.09% 4.2兆円 9.0% 68%
9437 NTTドコモ 3.53% 7.4兆円 18.7% 75%

時価総額の小さい銘柄が増えました。時価総額が小さいことによる不安定さはありますが、営業利益率や自己資本比率とも、とても高い銘柄を選ぶことができました。

もう1つ、違うパターンをやってみましょう。営業利益率の代わりに、ROEの高さを入れました。さらに、自己資本比率、時価総額の条件を変えました。

<4>営業利益率の代わりにROEを使うスクリーニング

① 配当利回り  3%以上
② 時価総額 5000億円以上
④ 自己資本比率 10%以上
⑤ ROE 10%以上

<4>スクリーニング結果

証券 コード 銘柄名 配当利回り 時価総額 自己資本比率 ROE
1878 大東建託 3.32% 7874億円 29% 29.6%
4523 エーザイ 3.78% 1.1兆円 47% 10.9%
7262 ダイハツ工業 3.39% 7047億円 37% 17.5%
8001 伊藤忠 3.12% 2.0兆円 24% 17.9%
8002 丸紅 3.30% 1.2兆円 18% 20.7%
8053 住友商事 3.43% 1.6兆円 26% 12.4%
9201 日本航空 3.70% 9303億円 46% 36.0%

(3)たかがスクリーニング、されどスクリーニング

スクリーニングは、魚群探知機のようなものです。価値の高い魚(好配当利回り株)が泳いでいそうな場所を探し当てるのに有効です。ところが、そこから竿を入れる人の腕が悪すぎると、食べられない魚ばかりが釣れたり、そもそも何も釣れなかったりすることもあります。最後に魚を釣り上げる腕を磨かなければなりません。

スクリーニングで挙がる銘柄を機械的に買っていっても、いい結果が出ないこともあります。とは言っても、スクリーニング銘柄の中に、価値の高い「好配当銘柄」が混じっていることも確かです。そこから先の選別能力も重要なのです。スクリーニング後の選別で重要な3つの選別ポイントを以下に挙げます。

  • 好不況の影響を受けにくい安定的なビジネスを行っているか?
  • 他社に真似できない独自の技術やビジネスモデルを持っているか?
  • 経営陣は、株主への利益配分を重要な経営目標と考えているか?

すべての条件を満たす銘柄などありません。また、すべて調べ上げることなど、そもそも不可能です。ある程度、調べたら決断するしかありません。有望と思うものを複数とりあわせて、分散投資するのがよいと思います。