日本の輸出企業が競争力を失っているという話をよく聞くようになりました。たしかに、ソニー・シャープ・パイオニア・TDK・任天堂など、かつての日本を代表する輸出企業が最近、元気がありません。ただ逆に、最近、競争力を高めてきた企業もたくさんあります。私は、発電所・鉄道・上下水道など社会インフラを輸出する企業群に注目しています。

(1)インフラ構築を急ぐ新興国で、日本製品への注目が高まる

今年は、インフラ輸出が、日本の新しい成長産業として存在感を増す年になると考えています。日本のインフラ輸出に今、3つの追い風が吹いています。

  • 新興国で大気汚染が深刻化 : 公害防止技術にすぐれた日本の発電システムを導入する機運が出つつあります。
  • 安倍政権の成長戦略が始動 : インフラ輸出を国家としてバックアップする体制を取り始めました。
  • 円が主要通貨に対して全面安 : 日本製品のコスト競争力が回復しつつあります。

(2)火力発電で日本の商機が広がる

世界で今、日本の火力発電技術に注目が集まっています。慢性的な電力不足に悩む新興国で旧式の石炭火力発電の増設が進んだ結果、大気汚染がもはや無視できないくらい深刻な問題になったからです。世界最高峰の発電効率と公害防止技術を持つ日本の石炭火力とガス火力を見直す機運が出ています。

慢性的な電力不足に悩む新興国では、発電コストの低い石炭火力発電が電力供給の主流を占めています(グラフA)。中国では発電量の約8割、インドでは約7割を石炭火力に依存しています。

(グラフA)発電電力構成における石炭・ガス依存度(2009年)

(出典:G20比較、IEA,Energy Balances 2011より楽天証券経済研究所が作成)

火力発電が増えているのは、新興国だけではありません。脱原発を宣言したドイツでは、石炭火力への依存が高まりました。原発停止が続く日本でも、石炭火力発電の増設が始まっています。

中国・インドで大気汚染が深刻化しているのは、石炭火力への依存が高いことだけが原因ではありません。発電効率が低い旧式の石炭火力発電が多いことも問題です。旧式の石炭火力発電では、大気汚染・酸性雨の原因となる二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物が大量に排出されます。

発電効率が高く、公害を出さない石炭火力発電を作ることにおいて、日本は世界トップの技術力を有します。横浜にある「電源開発」(証券コード:9513)の磯子石炭火力発電で公害を出さない超々臨界圧石炭火力発電が実用化されています。ここには、煙を出さない200メートルの煙突があります。環境に配慮した最新鋭の石炭火力発電所で、住宅街に近接していても環境上の問題はありません。

ただし、近年は、日本からの技術流出もあり、超々臨界圧石炭火力では、中国・韓国もかなりキャッチアップしてきています。これからは、より高度な技術のブレークスルーが必要になっています。その候補として、石炭をガス化してガスと水蒸気で二重に発電する「石炭ガス化複合発電」が注目されています。日本はすでに実証試験を始めています。

日本は、ガス火力発電においても、高い技術を持ちます。これから本格的に使われる技術として、「ガスタービン複合発電」が注目されています。安価な天然ガスを大量に入手できる新興国では、石炭ガス化発電よりも、ガスタービン複合発電が主流になっていくと予想されます。石炭ガス化複合発電でも、ガスタービン複合発電でも、日本の技術の活躍が期待されます。

(参考銘柄)火力発電ビジネスを手がける日本企業

証券コード 銘柄名
6501 日立製作所
7011 三菱重工業
7012 川崎重工業
7013 IHI
8031 三井物産
8058 三菱商事

(3)日経平均は底打ち

25日の日経平均は213円高の15,051円。底打ち機運が強まっていると考えられます。