2月12日のNYダウは、30ドル安の15963ドル。11日のイエレンFRB議長の発言を好感して192ドル上がった前日の勢いが続かず、反落となりました。NYダウに連動する形で足元リバウンドしてきた日経平均も、今日は、やや上値が重くなる可能性があります。

(1)ハト派発言を続けるイエレン氏

アメリカの金融政策を決定するFRBの議長発言は、世界の金融市場に大きな影響を与えます。世界中で流通するドルの量を決めるFRBは、事実上、世界の中央銀行の役割を果たしているからです。

FRBが金融引き締め
→ 世界的に金融が引き締まる
→ 世界的に株価が下がる
という関係が過去によく見られました。

逆に、FRBが金融を緩和
→ 世界的に金融が緩和
→ 世界的に株価が上がる
ということもありました。

だから、世界中がFRB議長の発言に注目するのです。

昨年10月、当時FRB副議長だったイエレン氏が、バーナンキ前FRB議長の後任に内定すると、アメリカの株式市場はイエレン氏の発言に敏感に反応するようになりました。
10月~12月にかけてアメリカの景気指標が予想以上に強くなる中で、イエレン氏は「相当長期にわたり金融緩和を維持」と発言し続けたので、アメリカの株式市場はイエレン発言を熱狂的に歓迎しました。「景気が強いのに、金融緩和が続く」という株式市場にとって最も都合のいい解釈が広がり、12月末にかけてNYダウは力強く上昇しました。この上昇相場は、「イエレン・ラリー(イエレン相場)」と呼ばれました(グラフA)

(グラフA)NYダウの動き(2013年10月1日~2014年1月11日)

イエレン・ラリーは世界の株式市場に波及しました。日本株にも外国人の大量買いが入って、日経平均も急騰しました(グラフB)。

(グラフB)日経平均の動き(2013年10月1日~2014年1月12日)

(2)FRBが金融緩和の縮小を開始すると、世界的に株価が下落

ところが、FRBは12月から、バーナンキ前FRB議長の下で、金融緩和の縮小を開始しました。折しも、1月から、アメリカの景気指標には、記録的な寒波の影響から弱いものが目立ち始めました。にもかかわらず、FRBは1月も12月に続く2度目の金融緩和縮小を実行しました。
「アメリカの景気が弱くなっているのに、FRBは金融緩和の縮小を続ける」という、最悪の環境にいきなり株式市場は突き落とされたわけです。昨年のイエレン・ラリーの時の「景気がいいのに金融緩和が続く」と、正反対です。NYダウは急落しました。イエレンに対する過剰な期待で昨年末に買い上がった投資家からは、突然はしごをはずされた恨み節から「イエレン・ショック」との言葉も出ました。
このショックは世界に波及しました。金融的に脆弱なアルゼンチン・南アフリカ・トルコの通貨や株が急落し、日経平均も、外国人の猛烈な売りが入って、急落しました。

(3)世界の株式市場は落ち着きを取り戻してきたが、一本調子の上昇は期待しにくい。

2月に入り、アメリカの景気は寒波の影響で弱くなってはいるが、「基調はそんなに弱くない」との見方が復活しています。また、2月からFRB議長に着任したイエレン氏の11日の議会証言から、「FRBもそんなに急に金融の引き締めに向かうわけではない」との見方が広がりました。
これで、1月の過剰な悲観が解消し、NYダウはリバウンドしてきました。ところが、昨年12月のような「景気は強いものの、金融は緩和され続ける」みたいなバラ色シナリオが、復活するわけではありません。

(4)NYダウも日経平均も、目先、大きくは上下とも動きにくい

ここから先、NYダウは上下とも大きくは動きにくくなると思います。すると、NYダウに振り回されている日経平均も徐々に上値が重くなってくる可能性があります。
私は、日本の景気と企業業績は2014年も強く、年末にかけて日経平均は再び上値トライをすると予想しています。ただし、短期的には、上値の重い展開になると予想しています。日経平均が再び上昇トレンドに入るまで数ヶ月間、14000円から15500円のボックス圏で推移すると考えています。