執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 4月後半から外国人買いが増加し、日経平均の上昇を牽引。景気・企業業績の回復モメンタムが強いので、今は、政治不安があっても株が上昇する局面と考えている。
  • 6-8月頃、21,000円前後で、日経平均が年内の高値をつける可能性もある。ただし、海外での突発事項によって日経平均が、異なる展開となる可能性もある。

(1)外国人の売買で動く日本株

4月後半から、日経平均の上昇が続いていますが、上昇を牽引しているのは、外国人投資家です。

日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と日経平均先物の合計):
2016年1月4日―2017年6月5日(外国人売買動向は5月26日まで)

(出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成)
(注:上のグラフの外国人売買で、棒グラフが上(プラス方向)に伸びているのは買越、
下(マイナス方向)に伸びているのは売越を示す)

日本株を動かしているのは、外国人投資家です。外国人が買うと日経平均が上がり、売ると下がる傾向が、20年以上、続いています。外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値を叩いて売ってくる傾向があります。

2016年は年初から外国人の売りが急増し、日経平均は急落しました。2016年11-12月は、外国人の買いが急増し、日経平均の上昇を牽引しました。

2017年に入ってから、外国人の買いが止まると、日経平均はボックス推移となりました。3月に外国人の売りが増えると、日経平均は一時、ボックスを下へ抜けました。ところが、4月後半から、外国人の買いが増加すると、一転して日経平均は上昇に転じました。5月後半ロシアゲート疑惑の調査にモラー特別捜査官が任命されると、一時、外国人が小幅に売り越しました。

ただし、まだ統計は出ていませんが、5月29日―6月2日は、再び外国人が日本株を買い越していると考えられます。外国人好みの大型株が出来高を伴って上昇しているからです。

外国人から見ると、日本株は「世界景気敏感株」で「世界の政治不安敏感株」です。世界景気回復の見通しが強まる時、世界の政治不安が緩む時、外国人は日本株を買い越す傾向があります。

(2)日経平均の年内高値はいつ頃か?

2017年の日経平均の動きについて、昨年12月29日に書いた予想は、以下の通りです。

12月29日のレポートを抜粋再掲

「2017年は日本株にとって、どんな年になるでしょうか?私は、前半高・後半安のイメージを持っています。2016年後半から、世界景気の回復色が徐々に強まってきたことを受けて、世界的に債券(安全資産)を売って株式(リスク資産)を買う流れが出ています。この流れがしばらく続くと考えています。

とは言っても、2016年11-12月の日経平均の上昇ピッチが速かったため、2017年1月はスピード調整が起こる可能性もあります。それでも1月から日本の景気・企業業績の改善を示すニュースが増えるので、深押しはないと予想しています。年前半は、企業業績の拡大を評価し、上昇基調が続くと考えています。

年後半になると、世界景気の回復を買う流れは一巡し、再び、世界の政治・経済に対する不安から、世界的に株が下がるイメージを持っています。良い材料も悪い材料も循環するので、上昇相場でも警戒を怠らず、下落相場では過度に弱気にならないことが大切です。

2017年の日経平均は、17,000円から22,000円の範囲で推移すると考えています。先に示した業績予想に基づき、PER16.2倍まで買われると、日経平均は22,000円になります。」

レポート全文は以下からお読みいただけます。

これまでの日経平均の動きは、概ね想定通りでした。今しばらく日経平均は、「政治不安はあっても景気・企業業績の回復の勢いが強いので上昇する」局面が続くと考えています。現時点での企業業績の予想に基づき、日経平均がPER16倍まで買われると、22,600円まで上昇することになります。世界の政治不安が強まっているので、私は、そこまで上昇することはないと考えています。

私は現在、年内の高値は21,000円くらいと考えていますが、外国人の買いの勢いがさらに強まると、一時的に22,000円に近づくこともあるかもしれません。

高値をつける時期はいつになるでしょうか?世界景気の回復の勢いが強い間は、上昇が続き、世界景気回復の勢いが低下すると、下落に転じる可能性があります。

高値をつける時期を予想することは、難しいものの、現時点では、6月から8月になると予想しています。

(3)短期的な相場予測に賭けるべきではない

日本株は、PER(株価収益率)・配当利回りから見て、割安と考えています。長期投資で報われると考えています。

ただし、世界経済や政治に異変が起こると、日本株に外国人投資家の売りが増えて、急落することもあります。日本株が、予測しようのない海外の突発事態によって、急落急騰を繰り返す資産であることは、これからも変わらないでしょう。

投資と投機は異なります。短期的な相場予測に賭けて投機的ポジションを取るのではなく、堅実な方法で、日本株に長期投資をしていく方が良いと思います。

定時定額を買い付ける方法(たとえば毎月1万円)、あるいは、お持ちの金融資産の一定比率を長期的に日本株に投資する方法(たとえば金融資産が3百万円あるとして、1百万円を日本株に投資)を選び、じっくり投資していくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。