執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 日米とも景気回復色が鮮明になってきたことから、NYダウが史上最高値を更新し、日経平均も2万円台を回復。
  • 日経平均は徐々に下値切り上げと予想。ただ、8日のコミー氏議会証言は要注意。

(1) 政治不安の緩和、企業業績の拡大を受け、日経平均は上放れ

先週の日経平均は、1週間で491円上昇し、20,177円となりました。ロシアゲート疑惑に対する不安は続いていますが、米景気が好調で、NYダウ・ナスダック総合指数が史上最高値を更新したことが好感されました。出遅れ感が強まってきた日本株に外国人の買いが増加し、20,000円台達成となりました。

日経平均週足:2016年1月4日―2017年6月2日

(注:楽天証券マーケットスピードより作成)

2017年初からの値動きを簡単に振り返ると、以下の通りです。

2017年1-2月:ボックス圏

世界的な景気回復は続きましたが、世界的な政治不安が高まりました。トランプ期待が萎み、トランプ不安が広がりました。政治不安を受けて、円高が進みました。日経平均は、景気回復期待と、世界的な政治不安の高まりの綱引きで、ボックス推移となりました。

2017年3-4月前半:政治不安・米景気失速懸念から下落

北朝鮮が核実験・ミサイル発射を繰り返していることに対し、トランプ大統領が先制攻撃も辞さないと表明。朝鮮半島有事で、日本や韓国が巻き添えを食う不安が広がりました。また、仏大統領選で反EU派のルペン候補が当選し、EU崩壊が加速する不安も広がりました。この頃、米景気指標が軟化し、米景気への不安も出ました。政治不安と米景気の軟化を受けて円高が進み、日経平均が売られました。

2017年4月後半―6月2日:日米とも景気回復期待が強まり、日経平均は上放れ

北朝鮮情勢は、小康状態です。仏大統領選は、中道のマクロン氏が勝利し、安心感を与えました。米景気は、1-3月の減速は一時的で、4月から回復してきている模様です。日本の2017年3月期決算が発表されましたが、予想通り、好調でした。ロシアゲート疑惑の発生で、一時、反落する局面はありましたが、日本および世界景気が順調に改善していることを好感し、外国人の買いによって、日経平均は20,000円台を回復しました。

(2)やや弱めだった5月の米雇用統計

米労働省が2日に発表した5月の米雇用統計は、やや弱めの数字でした。米景気の短期的な状況をよく表す、非農業部門雇用者増加数(前月比)は、3ヶ月連続で、景気好調と判断される20万人増に届きませんでした。

米雇用統計:非農業部門雇用者増加数(前月比):2014年1月―2017年5月

(出所:米労働省)

ただ、米経済は、実質完全雇用に近い状態にあると考えられており、雇用増加数が20万人を下回っても、雇用の実態は強いとの見方もあります。

一方、完全失業率は、低下が続きました。

米雇用統計:完全失業率:2014年1月―2017年5月

(出所:米労働省)

5月の米雇用統計はやや弱めでしたが、米景気実態は好調で、6月14日のFOMC(米金融政策決定会合)で、0.25%の利上げ実施はほぼ確実という市場の見方は変わりません。ただ、それで、利上げに当面打ち止め感が出る可能性はあります。米インフレ率、米長期金利が伸び悩んでいること、5月の米雇用統計がやや弱めであることが影響します。

米景気は好調だが、長期金利の上値が重く、利上げのペースは遅くなりそうです。それは、米国株に良好な環境と言えます。景気好調でも金利がどんどん上昇すると、NYダウは売られやすくなります。景気好調でも金利の上がりにくい環境が、米国株にとって望ましいと言えます。

(3)今週の見通し

日経平均は徐々に下値を切り上げていく展開と考えます。20,000円台乗せで、国内投資家から利益確定売りが出やすくなっていますが、しばらく外国人の買いが続くと考えています。

リスクは、世界に広がる政治不安です。6月8日(木)に予定されているコミー前FBI長官の議会証言が注目されています。ロシアゲート疑惑の調査をやめるようにトランプ大統領がコミー氏に圧力をかけたか否かが問われます。トランプ大統領が追い詰められるような材料が、出ると、一時的に円高株安が進む可能性があります。