16日の日経平均は、484円高の19,049円でした。9年半ぶりの米利上げというイベントを控えて12月に入ってから、外国人投資家から日経平均先物に売りが出ていましたが、16日には「利上げ後に波乱なし」を想定した買い戻しが入りました。

日本時間で今朝(17日午前4時)、米FRBが0.25%の利上げを発表しました。事前の市場予想通りなので、金利・為替とも、発表後に大きくは動いていません。NYダウは発表直後に下げましたが、「追加利上げペースは遅くなる」との解釈が広がり、前日比224ドル高の17,749ドルまで上昇して引けました。 日本時間午前6時現在、CME日経平均先物は19,360円(前日の日経平均終値 対比+311円)、ドル円為替レートは1ドル122.20円となっています。

(1) 米FOMC(金融政策決定会合)結果は、市場予想通り

米FRBはとうとう0.25%の利上げを実施しました。具体的には、FF金利の誘導目標を0~0.25%から0.25~0.5%へ、0.25%引き上げました。米FRBはこれまでFF金利を実質ゼロ%に誘導していました。今回の利上げで、事実上のゼロ金利に終止符が打たれました。ただし、これはイエレンFRB議長による「市場との対話」で、事前にほぼ織り込み済みでした。

市場の注目点は、利上げの有無ではなく、来年の追加利上げのペースに移っていました。FOMC声明文では、利上げ後の金融政策のスタンスについて「緩和的であり続ける」としています。それも、事前の予想通りです。

ただ、FOMCメンバー17人による2016年末のFF金利の予想(中央値)が1.375%のままで変更されなかったことは、ややサプライズ(驚き)と受け止められます。「利上げは実施されるが、2016年末のFF金利の予想は引き下げられる」が事前のコンセンサスだったからです。

FOMCメンバーによるFF金利の予想(中央値)

  9月時点 今回発表 今回変更
2016年末 1.375% 1.375% なし
2017年末 2.625% 2.375% 0.25%低下
2018年末 3.375% 3.250% 0.05%低下
長期 3.500% 3.500% なし

(出所:米FRB)

米FOMCメンバー17人の予想(中央値)では、今回0.25%―0.5%に引き上げられたFF金利誘導水準が、2016年末に1.25%-1.5%まで引き上げられることになります。2016年中にFF金利が1%上昇すると想定されているわけです。1回に0.25%ずつ利上げすると仮定すると、2016年中に、4回利上げが実施されることになります。2016年3月・6月・9月・12月に0.25%ずつ追加利上げが実施されるイメージです。

市場では、そんなに速いペースで利上げが実施されるとは見ていません。最初の追加利上げが3月か、あるいは6月以降か、見方が割れています。FOMCメンバーの2016年末予測(中央値)が1%辺りへ下がっていれば、「追加利上げ時期は6月ころ」という見方が優勢になる可能性がありましたが、そうはなりませんでした。

(2)イエレンFRB議長の発言もほぼ事前予想通り

今朝4時半から、イエレンFRB議長の記者会見が始まりました。「利上げショックが世界の金融市場に広がらないようにハト派的(追加利上げを急がないトーン)で話しをする」ことが、事前に市場で期待されていました。

いつも通り、イエレン流玉虫色の表現で、先行きに言質を与えるような内容はありませんが、それでも「金利正常化のペースは緩やかになる」と話したことから、市場では「追加利上げを急いでいるわけではない」と受け止められました。

「金融政策の変更が、金融市場にサプライズとならないように、市場と対話する」が米FRBの基本方針ですが、今回、利上げ発表後に、金利・為替・株とも、大きな波乱は起こりませんでした。米FRBが、方針通り、市場と対話できていたことを示します。

(3)日本株市場への影響、日銀金融政策決定会合が次の注目点

米利上げ実施後に大きな波乱がなく、NYダウが上昇していることから、今日の日経平均は続伸が見込まれます。昨日のニューヨークWTI原油先物が、アメリカの原油在庫増加を嫌気して下がっていることはマイナス材料ですが、今日は、それよりも米利上げイベントを無事通過したことが好感されそうです。

実は、日本株市場で今週注目されているイベントは、米FOMCだけではありません。今日と明日実施される日銀の金融政策決定会合も、大きな注目点です。黒田日銀総裁は、これまで追加緩和を近々に実施すると受け止められる発言はしていませんでしたので、もし追加緩和があれば、サプライズになります。ただし、外国人投資家の一部には、日銀が追加緩和することへの期待が根強く残っています。昨日の日経平均大幅高は、「米利上げ後の波乱なし」を事前に織り込んだ側面が大きいですが、日銀の追加緩和への期待も、少しは入っていた可能性があります。

黒田総裁の発言で、最近1つ話題になったことがあります。11月30日の名古屋の講演で、「デフレというすくみの状況を打破するには、誰かが断固たる決意を持って物事を変えなければなりません」と発言したのち、「まず行動すべきは日本銀行です」と発言したことです。これは、追加緩和への示唆と取れないこともありません。

そうはいったものの、日銀は年間80兆円の国債買い取り、3兆円のETF(日本株)買い取りなどを実施中で、これ以上の追加緩和の余地が大きくないのも事実です。マーケットを吹っ飛ばすような「黒田バズーカ」の再来は期待できないと思います。

結論として、今日明日の金融政策決定会合で、追加緩和が発表される可能性は低いと思いますが、なんらかの小粒の追加緩和が発表される可能性は、否定できないと思います。

(4)来年の上昇局面に備えて日本株は買い場の考えを維持

来年の日本株を考えると、米利上げが続く見通しであること、中国や資源国経済への不安が続くことがリスク要因となりますが、米景気堅調・資源安の恩恵を受ける日本の企業業績拡大は続くと考えています。

日経平均の短期変動の予測は難しいものの、来年の上昇に備えて、日本株を買い増ししていく局面との考え方は、変りません。