執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 企業業績の改善と政治不安の緩和を受けて日経平均は上放れ。
  • 自動車は不振。設備投資関連が好調。

(1) 政治不安の緩和、企業業績の拡大を受け、日経平均は上放れ

先週の日経平均は、1週間で438円上昇し、19,883円となりました。一時、20,000円に迫りましたが、週末にかけて利益確定売りが出ました。

2016年以降の日経平均の動きを、以下の週足チャートで簡単に振り返ります。

日経平均週足:2016年1月4日―2017年5月12日

(注:楽天証券マーケットスピードより作成)

2016年1-3月:経済不安・政治不安が同時に高まり日経平均が急落

世界景気が悪化。同時に、世界的に政治不安が広がり、円高が進みました。6月には、英国民投票で、ブレグジット(英国のEU離脱方針)が可決され、世界の株式市場はショック安となりました。

2016年7-10月:日経平均反発

この頃から、世界景気が回復基調に入り始めました。世界的な政治不安は続いていましたが、世界景気改善の織り込みが始まりました。

2016年11-12月:トランプ・ラリー

世界景気の回復色が徐々に強まる中で、米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選しました。トランプ氏が積極的な景気刺激策を表明し、トランプ政権への期待が広がりました。米景気改善・米利上げ(12月)・政治不安の緩和を受けて、円安が進みました。

2017年1-2月:ボックス圏

世界的な景気回復は続きましたが、世界的な政治不安が高まりました。トランプ期待が萎み、トランプ不安が広がりました。政治不安を受けて、円高が進みました。日経平均は、景気回復期待と、世界的な政治不安の高まりの綱引きで、ボックス推移となりました。

2017年3-4月:政治不安・米景気失速懸念から下落

北朝鮮が核実験・ミサイル発射を繰り返していることに対し、トランプ大統領が先制攻撃も辞さないと表明。朝鮮半島有事で、日本や韓国が巻き添えを食う不安が広がりました。また、仏大統領選で極右ルペン候補が当選し、EU崩壊が加速する不安も広がりました。この頃、米景気指標が軟化し、米景気への不安も出ました。政治不安と米景気の軟化を受けて円高が進み、日経平均が売られました。

2017年5月:政治不安が緩和、景気回復期待が強まり、日経平均は上放れ

米国・中国・ロシアが連携して北朝鮮に圧力をかけ、対話路線にも含みを持たせていることから、朝鮮半島有事のリスクは低下したと見なされました。仏大統領選は、中道のマクロン氏が勝利し、安心感を与えました。米景気は、4月の雇用統計が強く、1-3月の減速は一時的との見方が広がりました。政治不安が緩和し、円安が進む中、日本の企業業績に回復色が強まったことを受け、日経平均は上放れました。

(2)今後の展開

日経平均は、下値を切り上げ、20,000円台が定着すると考えています。景気・企業業績の改善が続くことが、日経平均の押し上げ要因となりそうです。

不安材料は、自動車セクターの業績不振です。米自動車販売が、減少に転じていることが、影響します。米景気は好調ですが、自動車販売は、ピークアウトした可能性があります。

一方、設備投資関連は好調です。世界的に受注が伸び、業績モメンタムが改善しています。米国で、設備投資が盛り上がりつつあること、中国で産業用ロボット・工作機械・FA機器の受注が盛り上がりつつあることが、日本の設備投資関連の追い風となっています。半導体関連も、業績に勢いがついてきました。

日本株のポートフォリオで、自動車の組み入れを減らし、機械・半導体関連の組み入れを増やすべきタイミングと思います。