先週のマーケットレビュー(7月18日-7月22日)

ドル円1時間チャート

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18日(月):ドル円106円台を回復。トルコクーデター鎮圧で。

週明けのドル円は、トルコのクーデターが失敗に終わったことで、先週終値の104円台後半から105.99円まで急反発。トルコリラ/円も一時36.08円まで回復しました。今回のクーデターは鎮圧されたとはいえ、トルコの政情不安の収拾はついておらず、また軍の混乱がテロにつけ入る隙を与えるとの懸念のもと、機関投資家は、トルコリラ先安観を強めています。

ドル円は、東京市場が休場のため、動意を欠いたまま105円台半ばを中心とした取引が続きましたが、NY市場で再び円売りが旺盛になると、106.26円まで上昇。クロス円も連れ高となり、ユーロ円は117.69円まで上昇しました。

一方NZドルは下落。NZドル/円は、この日発表されたNZの4-6月期CPIは予想ほど伸びていなかったことを理由に、75円台後半から74.45円まで大きく値下がりしました。海外時間に入って値を戻しましたが、上値は重い状況です。

一方ポンド円はしっかり。ウィール・MPC委員は8月のBOE会合で利下げに票を投じないと表明、大型利下げが必要とのホールデンMPC委員とは異なる立場を示しました。このタカ派的発言で、ポンド円は前日比2円以上上昇。NY時間には更に値を伸ばして、141.30円の高値をつけました。また先週からのドル円とポンド円の上昇は、日本の大手ソフト会社による英半導体会社の買収にからむ為替取引が大きな要因といわれています。
 

19日(火)ドル円は106円台半ばに上昇。全体的なドル高相場。

休日明け東京市場のドル円は、一時105.64円まで緩んだものの、下値は堅く、海外時間には再び106円台を回復。しかし106.53円の高値をつけた後は伸び悩み、前日とほぼ同レベルの106.12円(前日比-0.046円)で引けました。

一方、欧州通貨は対ドルで下落。ポンドドルは1.3073ドル、ユーロドルは1.1000ドルまで売られ、6月27日以来の安値をつけました。

RBAはこの日議事録を公表し、「データを精査して金融政策が適正となるよう調整する」姿勢を明示しました。RBAが監視している指標は、インフレ率、失業率、そして住宅市場関連の3つで、その中でもインフレ率を最も重視しています。RBAが次回利下げするかどうかは、したがって、来週の第2四半期CPIの結果次第ということになるでしょう。現在金利市場はRBAの利下げ確率を60%織り込んでいます。豪ドル円は東京時間朝方の80.59円を高値に79.332円まで下落しました。

一方、NZドルは続落。RBNZが、住宅市場のバブル退治のために不動産取引の厳格化方針を打ち出したことが引き金となりました。NZドル/円は、75.27円を高値に、東京時間午前には一時79.19円まで大きく値を下げました。

20日(水):ドル円は6月10日以来の107円台まで円安進む。

東京時間のドル円は106円を挟んで小動き。日経平均株価が7営業日ぶりに反落して、円安の動きも小休止となりました。しかし、海外時間に入ると再びドル買い・円売りが活発になり、英国民投票直前の高値を上抜けすると107.01円まで急上昇。安値は東京時間につけた105.83円、終値は106.881円(前日比+0.761円)でした。

英国のEU離脱という一大イベントがようやくこなれてきて、マーケットの関心は再び米国の経済指標へと移りつつあります。著名FEDウォッチャーは、9月利上げの可能性もあると述べています。

全般的なドル高を背景にユーロは軟化。6月27日以来の1.1000ドルを割って、一時1.0997ドルまで下落しました。ただし、円安が進んだことでユーロ円は、117円台後半へ上昇しています。

ポンドは堅調。BOEの企業調査によると、英国民投票後に経済が急減速しているという明らかな証拠はないとの認識が示されました。8月利下げの可能性が低まったとして、ポンドは対ドルで1.3226ドル対円でも141.48円まで上伸。フォーブス・MPC委員が「利下げを急ぐ必要はない」と語ったこともポンド買いを誘いました。

トルコリラは対ドルで過去最安値を更新。クーデター未遂後、エルドアン・トルコ大統領は教職員、警察官、判事などを大量に解任し、メディア規制にも乗り出すなど粛清を強化しています。トルコの混迷は長引くとの見方でS&Pがトルコの格付けをジャンク級に引き下げ、見通しを「ネガティブ」としました。ムーディーズ、フィッチは、まだトルコを投資適格(IG、インベストメント・グレード)に据え置いていますが、格付けを見直すのか注目されています。

21日(木):ドル円は105円台半ばへ急反落。黒田総裁が「ヘリマネ」を否定。

ドル円は東京時間の朝に107.49円まで上昇。政府・与党が、経済対策の事業規模を、10兆円から倍増させて20兆円規模とする方向で検討に入ったとの報道が、一段の円安に向かうきっかけとなりました。経済対策は来月初めにも正式発表される予定ですが、その直前に日銀金融政策決定会合が開かれるため、日銀が財政ファイナンスに協力する形で、ヘリコプターマネー的な追加緩和を発表するのではと期待が集まりました。

しかし、黒田総裁がヘリコプターマネーについて否定したことが伝わるとドル円は急反落。もともと経済対策と追加緩和の期待が押し上げていた相場だけに、浮力を失った途端に、105.42円まで一気に下落することになりました。ただしその後、黒田総裁の発言は6月時点のものだったことが判明して、106円台まで値を戻しましたが、上値は重く、終値は105.814円(前日比-1.067円)でした。

この日会合を開いたECBは、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.00%に据え置くことを決定。上限金利の限界貸出金利0.25%、下限金利の中銀預金金利-0.40%も変更ありませんでした。

ドラギ総裁は記者会見で、「ブレグジットによる影響を見極めるのは時期尚早」とする一方で、「欧州経済のリスクは依然として下向き」との考えを示しました。いまのところインフレ見通しにマイナス影響はないが、明るい材料もないということで、ユーロドルは1.1057ドルまで上昇後、1.0979ドルへ戻すなど、反応も限定的でした。

RBNZはこの日の朝発表した経済見通しで、利下げを強く示唆、またNZドルは6月会合時点の予測の上限以上に高くなっていると警告しました。市場はすでに8月利下げを90%程度織り込み、あとはRBNZがどれだけ大胆に切り下げるのかということが関心事になっています。NZドル/ドルは0.7000ドルから0.6950ドルまで急落。NZドル/円は75円台前半から一時74円台半ばに値を下げた後、ドル円が急落したこともあって、73.74円までさらに売られました。

エルドアン・トルコ大統領は3ヵ月間の非常事態を宣言。トルコリラ/円は34円前半まで値を下げています。

22日(金)ドル円は106円前半に戻す。指標悪化でポンドが急落。

東京時間のドル円相場は上値が重く、106円台前半から105.55円台まで下押し。海外時間に入って106円台に戻しましたが、特段の円安材料もなく高値は106.398円まで。終値は106.206円(前日比+0.392円)でした。

欧州市場ではポンドが急落。この日発表があった英7月PMIは、製造業、サービス業ともに、景況判断の分かれ目である50を下回りました。
景気悲観見通しが急増したことで、BOEの8月利下げが避けられないとして、ポンドドルは1.3290ドルから1.3078ドルまで、またポンド円は141.10円から138.43円(20:213)まで売られました。

ユーロも頭が重く、ユーロドルは1.10ドル前半から1.0955ドルまで、ユーロ円は116.21円まで値を下げました。

今週はFOMCと日銀金融政策決定会合という二つの重要な政策会合が予定されています。
FOMCの利上げ見送りはほぼ確実視されています。一方で、英EU離脱決定からひと月経って、金融市場に大きな動揺もなく、FOMC委員が次回9月の利上げにより前向きになっていることも考えられます。最近の株価上昇は、中央銀行の低金利継続を前提にしている部分もあるため、米利上げ確率が高まることで株価が急落するリスクにも注意が必要です。また、ドル円に関していえば、日銀会合の方が影響は大きいかもしれません。日銀が追加緩和をするかどうかで市場の意見は分かれています。

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