6月雇用統計でドル相場に戻るか

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前回の雇用統計でドル円は106円台に

6月の米雇用統計の予想は、非農業部門雇用者数変化(NFP)が+17.5万人(前回+3.8万人)、失業率は4.8%(前回4.7%)となっています。また地区連銀が公表した雇用指数は、フィラデルフィアが-10.9(前回-3.3)、リッチモンドが-1(前回 4)、NY連銀製造業指数は0.0(前回 2.1)と一様に悪化しています。

前回を振り返ると、5月は非農業部門雇用者数が、前月比16万人の予想に対して前月比+3.8万人と、大幅に落ち込みました。米大手通信会社のストライキの影響といわれる3.4万人程度の一時的なマイナスを除いても、ベンチマークといわれる+20万人どころか、+10万人にさえ届きませんでした。イエレン議長の落胆した顔が目に浮かぶようです。市場も、米雇用市場は堅調だと安心しきっていただけに、衝撃を受け、ドル円は発表前の109円台から一気に106円台半ばまで急落。それ以降現在まで一度も109円台に戻っていません。

雇用統計が改善しても利上げはしない

しかしイエレン議長は気を取り直し、「単月で判断することはしない」として、次回の結果を見極めたいと述べました。この時点では、7月利上げの可能性もまだゼロではなかったのです。そのため今回は、FRB利上げ判断に関わる重要なデータとして大きな注目を集めるはずでした。

ところが、英国のEU離脱で世界経済の様相は良くない方向へと変わってしまいました。FRBの利上げスケジュールも大幅な変更を強いられることになるでしょう。

7月の利上げは当然見送りとしても、英国が本格的なEUとの交渉を始めるのは、次の首相が
決まる9月以降ということを考えると、その時の市場の混乱具合では9月の利上げも難しくなるかもしれません。そうするうちに、米国では米大統領選挙の時期が到来します。

FRBの利上げは、年内1回程度だというのが現在の市場予想ですが、来年以降に繰り延べされる可能性も高くなってきました。今年1月時点には年4回と考えていたのですから、かなり大きな後退といえます。

しかし、昨年12月に利上げしただけでもよかったとFRBは考えているかもしれません。1度とはいえ利上げとしたことで、FRBは、将来の金融危機に対して、利下げという手段を持つことができたからです。すでにマイナス金利を実施しているECBや日銀に比べるとまだ金融政策の余地があるといえます。

いずれにしても、今回の結果と、FRBの夏利上げの関連性はほとんどないと考えてもよいでしょう。

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円安方向反転のきっかけになるか?

では全く意味がないのかというとそうではありません。米雇用統計はマーケットの目を、欧州通貨からドルに向けさせるきっかけとなるでしょう。

結果がよければ、英EU離脱で一時的とはいえ99円を割ったドル円が、反発するチャンスを手に入れます。ドル円は、前回の雇用統計後の高値圏106.95円がクリアできたなら、その次は109.15円、そして5月の高値110.83円がターゲットです。もちろんその逆もあるわけで、サブ100円時代の再開するリスクも考えておく必要があります。

米雇用統計の非農業部門雇用者の減速は、実は4月から始まっています。
非農業部門雇用者数変化が4月を下回る+10万人未満ならば、雇用の減速傾向が強まっていると市場は判断します。1-4月平均値以上の+19.0万人程度まで回復するなら、雇用市場の落込みは一時的なものだったとしてドル高に弾みがつくでしょう。