なぜドル円は米雇用統計に素直に反応しなくなったのか?

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5月6日に発表される4月米雇用統計の予想は、NFP(非農業部門雇用者数変化)が+22.8万人(前回+21.5万人)、失業率は5.0%(前回5.0%)となっています。米労働市場が順調に拡大していることがうかがえます。

しかし、3月のNFPは予想を上回る強さだったにもかかわらず、ドル円の反応は限定的でした。発表後112円台半ばまで上昇したあと、111.58円まで押し戻されています。
雇用統計が強くとも、ドル円は素直に反応していません。昨年12月にFRBが利上げを決定して以来この傾向が強まっているように思えます。

米労働市場が順調すぎるがゆえに相場の材料にならない、というのも理由のひとつかもしれません。しかし、NFPがベンチマークといわれる20万人を割ったとしても、FOMCは10万人程度の増加で十分との認識なので、利上げを中止することはないでしょう。

とにかく、インフレ率が上がらなければ、FRBは利上げできないし、利上げする必要がないのです。たとえ雇用が増えても、賃金が上昇しなければ、お金は回らず、物価も上がりません。これは、失業率やNFPの数字では見えない部分です。そこで、平均労働賃金が最近注目されています。平均労働賃金が上がると消費行動の拡大となって、インフレ率上昇につながるという連想が働くからです。

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グラフを見て、米労働市場が改善していることは明らかですが、賃金が上昇しているかといえば、そうではありません。失業率は順調に低下して、雇用情勢はタイトになっているのにインフレ圧力の兆しがないのです。

FRBは昨年、インフレの弱さは原油価格下落による一時的なものだといいました。最近では逆に、インフレの強さは一時的なものかもしれないと述べています。

しかし、現在の状況が悲観的なのかというと、必ずしもそうではありません。インフレなき雇用拡大は、利上げリスクがない状況で経済が拡大していることになるので、株式市場(リスクマネー)にとってはプラスだからです。

いずれにしても、平均労働賃金という要素が加えたことで、ドル円は、金利差拡大とリスクオンのどちらで動くのか、かえって難しくなりました。ドル円が雇用統計の結果に素直に反応しなくなったのは、このような事情があるのでしょう。