執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 北朝鮮をめぐる緊張はやや緩和。仏大統領選の不安も低下。日米の企業業績に回復色が強まる。その結果、恐怖指数が低下。
  • 日本株は、外国人投資家から見ると、世界景気敏感株であり、世界の政治不安敏感株である。恐怖指数の低下と同時に、外国人投資家が日本株を再び買い越し。

(1) 恐怖指数が低下

25日の日経平均は、前日比203円高の19,079円と、3月30日以来の19,000円台を回復しました。北朝鮮で有事が起こる不安がやや低下、仏大統領選の不安も低下、さらに、日米で企業業績の回復色が強まっていることを受けて、恐怖指数が低下し、外国人投資家の買いが入ったと考えられます。

恐怖指数とも言われる「日経ボラティリティー・インデックス」は、以下の通り、4月に入って東アジアの地政学リスクや仏大統領選の不安を反映して一時上昇していましたが、足元、急低下しています。

日経平均および日経平均ボラティリティー・インデックス推移:
2016年1月4日―2017年4月25日

(出所:日経QUICKより楽天証券経済研究所が作成 ©日本経済新聞社)

上のグラフをご覧いただくとわかる通り、恐怖指数(日経ボラティリティー・インデックス)は、日経平均が急落する局面で上昇します。上のグラフの①と②では、日経平均が15,000円割れまで急落し、恐怖指数が急騰しています。世界経済と政治の両方に、不安が高まっていたことが、恐怖指数の急騰につながりました。

次に、③のところをご覧ください。2017年3月以降、世界経済は回復に向かっていましたが、世界の政治不安が高まり、日経平均が18,335円まで下落しました。ここでも、恐怖指数が上昇しています。ただし、恐怖指数が40や50まで急騰した①や②と比べると、③では24までしか上昇していません。

①および②では、世界の政治不安と経済不安が両方高まり、恐怖指数が大きく上昇していました。③では、世界の政治不安は高まっていても、経済は改善に向かっていました。そのため、恐怖指数は上昇したとは言っても、水準は低いままでした。

(2)外国人が日本株を買い越し

日本株を動かしているのは、外国人投資家です。外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値を叩いて売ってくる傾向があります。3月後半から、外国人の売りが増えたことで、日経平均は下落に転じました。

ただし、4月に入ってから、外国人の売りは止まり、小幅買い越しに転じています。まだ統計は出ていませんが、日経平均19,000円台回復の原動力となった今週の買いは、外国人によるものと考えています。

外国人から見ると、日本株は「世界景気敏感株」で「世界の政治不安敏感株」です。世界景気の回復が続く中、世界の政治不安がやや緩んだことから、外国人は日本株を少し買ってきたと考えます。ただ、世界の政治不安のネタはまだたくさん残っていますので、外国人が本格的な買いモードに転じるか、現時点でわかりません。

日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と日経平均先物の合計):
2016年1月4日―2017年4月25日

(出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成)
(注:上のグラフの外国人売買で、棒グラフが上(プラス方向)に伸びているのは買越、下(▲の方向)に伸びているのは売越を示す)