英国のEU離脱が決まった後、英国でグーグルの検索が急増しました。検索で最も多かったのが“ What happens if we leave the EU ? ”(「EUを離脱したらどうなるの」)。これはわかりますが。第2位だったのが “ What is the EU”(「EUって何?」)でした。投票前の検索だったらわかりますが、EU離脱が決まってからの検索とは驚きです。笑い話にもなりませんが、私たちも今後の英国とEUの問題を考える時に、まずは基本知識を押さえておく必要があります。EUの設立背景、目的、加盟国、そしてEUの基本データを押さえます。基本データとは、人口、面積、経済規模(GDP)の大きさです。これらは、ほかの国や組織・機構を見る時も同じです。

設立の背景 19世紀までは、欧州では諸国間の戦争が頻発していたが、20世紀に入ると戦争規模が拡大。二度の世界大戦を経験したことから、戦後は地域の平和と安定・発展を目指して欧州地域統合体を設立
目的 外交・安全保障、司法などの政策の共通化を進め、「ヒト、モノ、サービス、カネの移動の自由」を基本原則とし、「単一市場」市場の実現を目指す
設立年 1967年、欧州共同体(EC)として6か国で発足
1993年、EU(欧州連合)として12か国で発足
加盟国数 現在、28か国
本部 ブリュッセル
面積 429万㎢ ( 日本の約11倍 )
人口 5億820万人(2015年、日本の約4倍 )
GDP 16兆2240億ドル (2015年、日本の約4倍 )

加盟国の3大国は、英国、ドイツ、フランスとなります。これら3か国を基本データで比較しますと

  英国 ドイツ フランス
面積(万㎢) 24.3 5.7 35.7 8.3 54.4 12.7
人口(万人) 6,411 12.6 8,094 15.9 6,633 13.1
GDP(ドル) 2兆9,888億 18.4 3兆8,682億 23.8 2兆8,291億 17.4

(%)はEU域内で占める割合

EU内の面積第1位はフランス、人口第1位はドイツ、経済規模(GDP)第1位はドイツとなります。この3か国で面積は約27%、人口は約42%、GDPは約60%をEU域内で占めています。また、英国が離脱するということは、人口の約13%、GDPの約18%がなくなるということですので、EUにとってもその影響は軽微ではなさそうです。

下表は、EUの歩みを中心にまとめました。西暦年は各国がEUに加盟した年のことです。EUは1967年に欧州共同体(EC)として原加盟国といわれる6カ国で発足しました。その後加盟国が増え、1993年にEU(欧州連合)として12か国でスタートしました。2016年現在ではEU加盟国は28か国となります。また下表では、ユーロを導入している国、シェンゲン協定に参加している国、EEAの加盟国、NATO加盟国を表示しています(○印は「加盟国」を表す)

よく誤解されるのですが、EU加盟国はすべてユーロを導入しているということではないということです。例えば、英国はEU加盟国ですが、ユーロ圏ではありません。つまり、ユーロを使用せず通貨はポンドをずっと使用しています。そしてシェンゲン協定には参加していません。また、単一市場のアクセスを目的とするEEA(欧州経済地域)には参加しています。デンマーク、スウェーデンもユーロを導入していません。デンマーク・クローネとスウェーデン・クローネを使用しています。下表を一覧するとよくわかります。地図を横に置き、各国の位置も確認しながらじっくりと眺めて下さい。

※シェンゲン協定 パスポート検査などの出入国審査なしで自由に行き来できる協定

※EEA(欧州経済地域)
1994年にEUの前身であるECとノルウェーなどで成る欧州自由貿易連合(EFTA)をまとめる形で発足。欧州統一市場を目指すが、EUと同様に人の移動の自由も認めている。英国はEUを離脱してもEEAに残れば悪影響を小さくできるとの見方もあるが、単一市場のアクセスと移民の制限を求める英国の主張は「いいとこ取り」だと批判されている。

※NATO(北大西洋条約機構:North Atlantic Treaty Organization)
米国を中心とした北アメリカ(=アメリカとカナダ)およびヨーロッパ諸国によって結成された軍事同盟。集団的自衛権発動の義務を負っている。