今年は4年に一度の米国大統領選挙の年です。今年の選挙日は11月8日火曜日になります。選挙日は、11月の第1月曜日の翌日、火曜日と決められています。
今年の大統領選挙は、民主党も共和党も混戦状態となっています。2月1日、アイオワ州で党員集会が開かれ、大統領選挙の火ぶたが切られました。初戦のアイオワ州の勝敗が今後の選挙戦全体に影響を及ぼすと言われています。この非常に重要な選挙戦で、早速大波乱となりました。共和党では、世論調査では首位で人気のあったトランプ氏が敗北しました。また、民主党ではヒラリー・クリントン氏が勝ちましたが、0.2ポイント差という辛勝です。にこやかに勝利宣言していたヒラリーさんですが、舞台裏では相当悔しがっていたそうです。追い上げたサンダース上院議員は、格差是正を掲げ若者から人気がありましたが、ここまで善戦したことは驚きでした。ヒラリーさんは、40代、50代以上の女性には人気がありますが、20代、30代の女性には人気がありません。やはり、男女にかかわらず米国の若者たちは、"We are the 99 %"(『私たちは、99%』)というスローガンを合言葉に、米国のトップ1%が富を独占する社会を批判し、サンダース上院議員を熱狂的に支持しているようです。
この一部の富者が社会の富を独占する状況は、米国だけではなくグローバル世代間格差として広がっているようです。それについて興味深いデータが1月18日に発表されました。イギリスに本部がある国際支援団体オックスファムは、「世界の富豪上位62人が持つ資産が、世界の人口のうち経済的に恵まれない下位半分(約36億人)の資産総額に等しい」とする推計を発表しました。62人の資産総額は1兆7,600億ドル(約206兆円)だそうです。これを62人で割ると約3.3兆円。36億人で割ると約57,000円となります。3.3兆円vs57,000円、圧倒的な数字です。そしてこの格差は急速に拡大していると指摘しています。2010年では下位半分の資産総額は、上位の富豪388人分、2014年には80人分と格差が拡大しているとのことです。そしてこの国際支援団体は「世界の指導者に格差是正に取り組むよう」呼びかけています。米国大統領選挙では、まさに米国の若者たちの間でこの現実の格差が切羽詰っており、指導者に格差是正を求める熱気が選挙戦に反映されているようです。
2月9日の第2戦のニューハンプシャー州予備選挙では、民主党はサンダース上院議員、共和党ではトランプ氏が首位となりました。アイオワ州と違う結果となり、ますます米大統領選挙は混戦状態になっています。
さて、この米国の大統領選挙の年は、為替市場ではどのような影響を及ぼすのでしょうか。2点に注目してみたいと思います。結論から言うと、必ずしもそのような動きになるということではありませんが、このような見方があるということだけでも頭にいれておくと相場予測をする上で役に立ちます。そのひとつは、
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為替市場の一般論として、共和党が勝てばドル高、民主党が勝てばドル安という見方があります。共和党は、為替レートは市場が決めるというスタンスを取りながらも「強いドル」政策を掲げています。一方、民主党は貿易に関し保護主義的であり、貿易上で優位に導こうというスタンスを持っています。従って、米国の貿易上不利になる相手国の通貨安政策や介入(自国通貨売り介入、円売り介入)に対しては批判的です。このような基本的スタンスの違いから、「共和党が勝てばドル高、民主党が勝てばドル安」と言われていますが、必ずしもそのような動きにはなっていません。オバマ民主党政権の時代は(2009年~2016年)、前半は円高(ドル安)が進行しましたが、後半はアベノミクスによって円安になりました。この円安の動きに対して、民主党のオバマ政権から通貨安政策だと批判が飛び出すかと警戒しましたが、結局は何も出てきませんでした。このように、そうなるかどうかは別として、両党の基本的スタンスの違いを知っておくことは役に立ちます。
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第2点は、米国大統領選挙の年は、為替は動きにくいという通説です。米国の大統領が変わるため、投資戦略は新しい大統領の政策をベースにして方針を立てようとして様子見になりやすいようです。ドル円の年間変動幅というデータで見てみるとどうなっているのでしょうか。
米国大統領選挙の年のドル円変動幅(1980年~2012年)
選挙年 ドル円値幅 ドル高・ドル安 1972 20.84 ドル安 1976 19.96 ドル安 1980 58.30 ドル安 1984 28.90 ドル高 1988 16.81 ドル高 1992 16.35 横ばい 1996 13.08 ドル高 2000 13.68 ドル高 2004 13.07 ドル安 2008 23.54 ドル安 2012 10.76 ドル高 1972年以降11回平均変動幅 21.39円 プラザ以降7回平均変動幅 15.33円 プラザ以降(除く2008年)の6回平均変動幅 13.96円
1972年以降11回の年間変動幅は21.39円。1985年のプラザ合意以前は、ドル円は200円台が中心のため値幅も大きくなります。プラザ合意以後は100円台が中心のため値幅も小さくなっているので、1988年以降の7回平均で見てみると15.33円となっています。2008年はリーマンショックが起こったため値幅が大きくなりました。この年を除いたプラザ合意以降の6回平均は13.96円となります。それでは米大統領選挙の年にかかわらず、年間の変動幅はどうなっているのでしょうか。2015年までの10年間の年間変動幅の平均は15.38円となります。15年間の年平均変動幅は15.99円ですので、大統領選挙の年の値幅の方が少し小さいようです。今年は、1月から波乱相場が続いており、安値を更新していますが、まだ年間変動幅は10円を超えていません。リーマンショックが起こった2008年のような大波乱の年にならない限り、今の相場が落ち着つけば今回の大統領選挙の年も落ち着いた年になるかもしれません。いずれにしろ、今年の大統領選挙は民主党か共和党か、そして誰になるのか、その時、相場はどちらの方向に動きやすいのか、前回お話した年間変動幅の推移や、今回のようなデータを頭に入れながら相場を見ていくと新しいシナリオが描けるかもしれません。
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