英国・欧州物価事情
5月の後半に英国と欧州(イタリア、オランダ)に行ってきました。やはり、現地に行ってみないとわからないことがありました。経済状況や物価状況を実感として味わうことが出来ました。
まず、ロンドンの物価の高さには驚きました。下表は英国の消費者物価指数(CPI)の前年比の動きですが、昨年12月の+0.5%から徐々に下がり、2月、3月はゼロになり、ついに4月はマイナスとなりました。反対に欧州のCPIは12月の▲0.2%から1月には▲0.6%と下落幅が広がりましたが、4月にゼロになり、5月には+0.3%と上昇に転じました。この表だけを見ていると、英国は物価下落傾向にあるのに対し、欧州は下落から上昇に転じてきており、英国と反対の動きとなっています。しかし、実際にロンドンに行ってみると、モノやサービスの値段は高く、1ポンド=195円で換算すると恐ろしい値段になります。そしてロンドンから大陸(欧州)に渡ると一気にモノの値段は安く感じました。
CPI(%) | 5月 | 4月 | 3月 | 2月 | 1月 | 12月 |
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英国(前年比) | - | ▲0.1 | 0.0 | 0.0 | +0.3 | +0.5 |
欧州(前年比) | +0.3 | 0.0 | ▲0.1 | ▲0.3 | ▲0.6 | ▲0.2 |
ビッグマック指数
海外へ行った時に、その国の物価を注意して見ることは、為替相場の長期的な流れを予想するのに役立ちます。その国の物価と自国との物価との違い、あるいは他国との物価の違いから、現在の為替レートが割高か割安か、過大評価か過小評価かを探ることが出来ます。
物価の定点観測としてマクドナルドのビッグマックの値段を各国比較でみるという考え方があります。これは、英国経済誌「エコノミスト」が1986年に考案しました。それ以来、同誌は毎年各国のビッグマックのドル建て価格を発表し、ビッグマックの価格によって各国の通貨の購買力を比較しています。これはビッグマック指数と呼ばれています。
なぜ、マクドナルドのビッグマックかというと、世界100カ国以上で同一品質の商品が販売されているため、同じ商品を世界で広く比較できることからビッグマックの価格が参考基準になったということです。ビッグマック指数の考え方は、例えば、日本でビッグマックが320円、米国で4ドルの場合、320円÷4ドル=80円、が日本円でのビッグマック指数となります。そして現在のドル円の為替レートが123円だとすると、現状の為替レートは、この指数80円に比べて円安であると言えます。ビッグマックが日米で同一価値であるならば(購買力が同じになるためには)、現在の123円は、長期的には指数の80円に近付くことになるという考え方です。もしくは、為替が動かない前提に立つと、日米の購買力が同じになるためには、日本の物価が上がるか、米国の物価が下がれば購買力は同じになります。すなわち、日本のビッグマックが320円から492円(4ドル×123円)に価格が上昇するか、米国のビッグマック4ドルが2.60ドル(320円÷123円)にまで価格が下がることを意味します。現実には、為替レートはいろいろな要因で動いているため、この指数の判断だけで決めつけることは出来ません。また、物価も様々な要因で動き、また、一気に上がったり、下がったりするということもありません。しかし、ビッグマック指数は長期予測の参考指標にはなります。また、これらの考え方、つまり、指数に近づくのではないか、あるいは物価で調整が起きるのではないかという考え方は、相場を予測する上で頭を柔軟にしてくれます。
同じような考え方で、やはり世界各国に展開しているスターバックスのトール・ラテの価格を比較する方法やiPodを比較するという方法があります。いずれにしろ、物価の定点観測は非常に興味深いものがあるので、海外旅行や海外出張の時には、是非、マクドナルドやスターバックスに立ち寄って現地の価格をチェックしてみて下さい。そこで感じる物価の違いを肌で感じ取り、勘を養ってください。
今回のロンドンでは、ビッグマックが最も安い店で2ポンド。スターバックスのトール・ラテではないですが、レギュラーコーヒーは1.89ポンドでした。1ポンド=195円で換算すると、ビッグマックは390円、レギュラーコーヒーは368円とやはり割高でした。イタリア、オランダではビッグマックは3.8ユーロ。1ユーロ=140円換算で532円。やはり割高です。また、ロンドンのバーガーキングはもっと高くワッパーで800円ぐらいでした。来店客は少なかった印象です。ロンドンっ子にとっても高い商品のようです。このようにマクドナルドやスターバックスだけでなく、日本にもあるようなファーストフードの店をいくつか見て回るのもおもしろい方法です。
それ以上にお勧めは、大きな現地のスーパーマーケットに行くことです。ロンドンでは、MARKS&SPENCERやSainsbury’s Supermarkets など大手から小さいスーパーまで、また日本の100円ショップと同じような1ポンドショップなど5店ほど回り、イタリア、オランダでも5店回りました。スーパーマーケットに行くと、野菜、肉、乳製品、飲料、スィーツ、雑貨など日常品の物価が一覧して見ることが出来ます。やはり、ロンドンは高く、欧州は安かったです。ロンドンの1ポンドショップも195円換算だと日本の倍の値段ですが、レジには長蛇の列が続いていました。欧州の物価で特に印象に残ったのは、オランダのパンがかなり安くおいしかったことです。1個30円ぐらいからあり、クロワッサンも60~80円ぐらいで大ぶりで売っていました。フランス革命以来、欧州ではパンの値段はあまり上げることが出来ないのかなと思いました。
今回欧州へ行ってみた実感は、現地の物価は1ポンドも1ユーロも100円ならしっくりするなという感覚でした。現在のポンド195円、ユーロ140円は円安気味というのが実感であり、その結果、購買意欲も減退します。これが円の購買力が低下するということです。翻って日本の物価を考えると、日本の物価は総じて安いという印象でした。日本の物価が安く、円安の状態が続くということは、日本人の購買意欲は海外に向かわず、国内に向かうということになります。これは、資金の流れから見ると、あまり円安になると、そこからは円売りに行かないという推論が出来ます。
このように物価や為替水準を比較することによって、相場予想や今後の経済状況をいろいろと推論することが出来ます。もし、今後、海外へ行かれる場合、思いっきりアンテナを伸ばして現地の物価状況を実感として味わって下さい。その通貨に対する感触や相場予想に役立つと思います。
ビッグマック指数
英国経済誌「エコノミスト」が1986年に考案し毎年発表
各国のビッグマックのドル建て価格によって各国の通貨の購買力を比較
世界100カ国以上で同一品質の商品が販売されているため比較しやすい
スターバックスのトール・ラテの価格を比較する方法やiPodを比較する方法もある
例日本ビッグマック320円
米国 4ドル
320円÷4ドル=80円(日本円でのビッグマック指数)
80円<123円(現在の為替レート)→理論的には長期で80円方向に
〈参考〉 2015年1月時点のビッグマック価格 (1ドル=117.77円)
順位 | 国名 | 価格(円) | 価格(USドル) | 価格(各国通貨) |
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1 | スイス | 888 | 7.54 | 6.50 スイス・フラン |
2 | ノルウェー | 742 | 6.30 | 48.00 ノルウェー・クローネ |
3 | デンマーク | 633 | 5.38 | 34.50 デンマーク・クローネ |
4 | ブラジル | 613 | 5.21 | 13.50 ブラジル・レアル |
5 | スウェーデン | 585 | 4.97 | 40.70 スウェーデン・クローナ |
6 | 米国 | 564 | 4.79 | 4.79 USドル |
12 | イタリア | 525 | 4.46 | 3.85 ユーロ |
14 | イギリス | 514 | 4.37 | 2.89 ポンド |
17 | ユーロ圏 | 502 | 4.26 | 3.68 ユーロ |
22 | オランダ | 471 | 4.00 | 3.45 ユーロ |
38 | 日本 | 370 | 3.14 | 370 円 |
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