世界経済見通し

IMFや世界銀行など国際機関の話をしましたが、これら国際機関は定期的に世界経済見通しを発表しています。自国政府や中央銀行も経済見通しを発表していますが、自国びいきのバイアスがかかりやすいため、国際機関の経済見通しの方が中立性が高く、先行きの経済の見通しを把握するのに役に立ちます。

例えば、先日、3月9日に日本の10-12月期GDPの改定値が発表されました。結果は、予想よりも弱く、かつ2月に発表された速報の実質年率2.2%から1.5%に下方修正されました。また同時に発表された2014年の実質GDPは、速報値の前年比+0.04%から▲0.03%に下方修正されました。マイナス成長は東日本大震災のあった2011年以来3年振りのことです。さて、この▲0.03%は、方向的にはどちらを向いているのでしょうか。下方トレンドに入っているのか、それとも消費増税の影響による一時的な減速にすぎず、今後は原油下落の恩恵を受け年央から再びプラス成長に入っていくのか、その方向性や勢いを知ることが必要です。その方向性を知るためのひとつの方法として参考になるのが、国際機関の経済見通しです。

国際機関の世界経済見通し

国際機関の世界経済見通しとして、主なものはIMF、世界銀行、OECDの経済見通しです。GDP成長率を四半期見通しではなく年間見通しで発表しています。これら見通しは新聞にも掲載されてきます。もちろん、各機関のHPにはすぐに掲載されるので、より詳細な内容を読むことが出来ます。日本語の翻訳も掲載されています(これら国際機関以外にアジア開発銀行もアジア諸国中心の経済見通しを発表しています)。 見通しの発表サイクルは以下の通りです。

IMF世界経済見通し1月、4月、7月、10月の年4回、世界各国の経済見通しを発表
世界銀行経済見通し1月と6月、年2回、世界各国の経済見通しを発表
OECD経済見通し5月と11月に、年2回、OECD参加国の経済見通しを発表

各国際機関の発表時期を合わせると、1月、4月、5月、6月、7月、10月、11月と発表されていますので、2、3ヶ月に一回チェックすることが出来ます。これらの経済見通しは発表の都度、下方修正されたり上方修正されたりしているので、経済の先行きの方向性を探るヒントになります。参考までに最近の各機関の日米欧の経済見通しを見てみますと、

※OECD=経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development)

本部はフランスのパリ。第二次大戦後、米国のマーシャル国務長官は経済的に混乱状態にあった欧州各国を救済すべきとの提案を行い、「マーシャルプラン」を発表しましたが、これを契機として、1948年4月、欧州16カ国でOEEC(欧州経済協力機構)が発足しました。これがOECDの前身にあたります。その後、欧州経済の復興に伴い1961年9月、OEEC加盟国に米国及びカナダが加わり新たにOECD(経済協力開発機構)が発足しました。日本は1964年にOECD加盟国となりました。現在加盟国は34か国。EU21カ国、日本、米国などその他13か国。OECDの活動目的は、先進国間の自由な意見交換・情報交換を通じて、1)経済成長、2)貿易自由化、3)途上国支援(これを「OECDの三大目的」といいます)に貢献することを目的としています。(参考:経済産業省HP)

IMFの世界経済見通しは下表の通りです。世界全体の見通しは、時間が経つにつれて下方修正予測となっているのがわかります。日米欧では、米国は上方修正予測ですが、日欧が下方修正予測となっています。

IMF世界経済見通し(2015年1月時点 %)

  2015年見通し 2016年見通し
  2014/4予測 2014/7予測 2014/10予測 2015/1予測 2014/10予測 2015/1予測
世界全体 4.0 4.0 3.8 3.5 4.0 3.7
米国 2.9 3.0 3.1 3.6 3.0 3.3
ユーロ圏 1.4 1.5 1.4 1.2 1.7 1.4
日本 1.0 1.1 0.8 0.6 0.9 0.8

世界銀行の見通しは以下の通りです。

世界銀行も6月時点の予測と比べると、世界経済は下方修正予測となっています。日米欧では、やはり米国は上方修正予測、日欧は下方修正予測となっています。おもしろいのは、IMFの見通しと比べると、世界全体や米国の予測は厳しめで見ていますが、逆に日本については楽観的に見ているのがわかります。

世界銀行経済見通し(2015年1月時点 %)

  2015年見通し 2016年見通し
  2014/6予測 2015/1予測 2014/6予測 2015/1予測
世界全体 3.4 3.0 3.5 3.3
米国 3.0 3.2 3.0 3.0
ユーロ圏 1.8 1.1 1.9 1.6
日本 1.3 1.2 1.5 1.6

OECDの見通しは以下の通りです。2014年11月時点の予測が最新版ですが、2014年、2015年とも世界全体、日米欧は下方修正予測となっています。2015年の米国見通しがIMFや世界銀行は上方修正予測となっていますが、OECDの先進国クラブの中では下方修正予測となっており、米国経済については日欧よりも高いが慎重に見ているのがわかります。

OECD経済見通し(2014年11月時点 %)

  2014年見通し 2015年見通し 2016年見通し
  2014/5予測 2014/11予測 2014/5予測 2014/11予測 2014/5予測 2014/11予測
世界全体 3.4 3.3 3.9 3.7 - 3.9
米国 2.6 2.2 3.5 3.1 - 3.0
ユーロ圏 1.2 0.8 1.7 1.1 - 1.7
日本 1.2 0.4 1.2 0.8 - 1.0

このように、国際機関の予測を見ても違いが出てきますが、方向性を探る上では役に立ちます。ちなみに、日本政府の2015年1月時点の経済見通しは、

実質GDP(前年度比)
2014年度 ▲0.5%
2015年度 +1.5%

となっています。年度ベースなので暦年予測と比較する期間が異なりますが、2015年予測については、日本政府が最も楽観的なのがわかります。