為替の変動要因として、最も注目すべき要因は金融政策です。外国為替市場では、ドルの売買が中心取引ですので、米国の金融政策が最も重要な要因となります。この米国の金融政策を遂行するのがFRBです。そして米国金融政策を決定するのがFOMCです。
FRB | ・連邦準備銀行 Federal Reserve Bank の略称 ・米国の中央銀行制度である連邦準備銀行制度に基づいて設立された機関 ・米国12地区にあり、ニューヨーク連邦準備銀行が全体の要 ・FRBは、連邦準備制度理事会 Federal Reserve Bord の略でもある。 ・この理事会の議長がイエレン議長 (日本の黒田日銀総裁にあたる) |
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FOMC | ・連邦公開市場委員会 Federal Open Market Committee の略称 ・米国の金融政策を決定する最高意思決定機関 ・約6週間ごとに年8回開催。 ・FOMC終了後に声明文を発表。その後イエレン議長の記者会見予定 ・発表時間 夏時間:日本時間午前3時15分、冬時間:日本時間午前4時15分 |
開催日程 |
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フォワード・ガイダンス(Forward Guidance)
FOMCの声明文や議長の記者会見で、金融政策の先行きの方針を説明します。これをフォワード・ガイダンスと言います。マーケット参加者は、政策金利がゼロまで下がり、この先の金利の変化も期待できないことから先行きの金融方針に注目します。先行きの金融方針が変化しないのか(現状維持)、変化するのか、変化するのならどのように変化するのかを注目します。
フォワード・ガイダンスは、1990年代のゼロ金利政策の下、日本銀行が行った「時間軸政策」が先駆けとなり、米英欧も次々と導入しました。政策金利がゼロ金利まで下がったことから、政策金利のコントロールでは対処できないため、量的緩和と並ぶ「非伝統的政策」のひとつとして中央銀行は導入しています。「時間軸政策」とは、ゼロ金利政策を「デフレ懸念の払拭が展望できる情勢になるまで」継続する政策です。このように中央銀行は、政策金利を据え置く期間を市場に説明したり(例えば、米国の場合は金融緩和を「相当の期間」<6ヶ月のこと>と説明)、あるいは将来の政策変更の条件を設けたりして(例えば、「米失業率が7%以下になるまで」)先行きの指針を示し、市場参加者の予想や期待に働きかけることによって金融政策効果の浸透を目指します。
主要中央銀行の金融政策
日銀 | FRB | ECB | BOE(英国) | |
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政策金利 | なし | 0~0.25% | 0.05% | 0.5% |
量的緩和 | 資産規模 拡大中 |
2014/10で終了 資産規模維持 |
検討中 | 資産規模 維持 |
フォワード・ガイダンス | 導入 | 導入 | 導入 | 導入 |
FOMC声明文
FOMC終了後に発表される声明文は、米国の金融政策の方針を示す重要な声明文です。この声明文を読み取ることが為替を予測する上での基本戦略となります。
今や、声明文は、FRBのホームページで原文を簡単に、即座に読むことが出来ます。また、日本語訳もインターネットで検索すれば全文掲載されていますので、一度じっくりと読むことをお勧めします。一度読めば、次回声明文は前回との違いを分析するだけで十分となります。
2014年の12月17日の声明文でフォワード・ガイダンスが変わりました。但し、イエレン議長はくせ球を投げてきました。金融緩和の期間を示す「相当の期間」(約6ヶ月のこと)の文言が削除されるかどうかが注目されてきましたが、声明文には残しながら、新たに、金融政策スタンスの正常化について「忍耐強く待つ」との表現を追加してきました。この表現の追加は、「相当の期間」との表現と整合性があると記述され、文言がいきなり削除される影響を軽減するという「くせ球」を市場に投げてきました。文言削除で前のめりになるマーッケトを静め、新しい文言を加えることによって次のステップへの準備をしたことになります。更に記者会見で、「少なくとも今後2回の会合では利上げをしない」との見通しを示しました。2015年のFOMC日程では、3月までは利上げをしないということになります。この安心感から米国株は上昇しました。
下記に声明文の原文と日本語訳を掲載しています。
声明文の構成は、経済状況、雇用状況、家計・設備投資・住宅など各部門の状況分析、インフレ状況、金融政策の基本方針、経済とインフレの見通し、決定された政策の内容、今後の方向性、賛成者と反対者とその理由、となっています。一度じっくりと読んで下さい。
2014年12月17日のFOMC声明文
日本語訳 | 原文 | |
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経済状況 労働市場 家計支出 設備投資 住宅部門 インフレ率 |
10月の会合以降に入手された情報は、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示している。労働市場環境は幾分一段と改善し、雇用は堅調に増加して失業率は低下した。全体的に、広範な労働市場の指標は労働資源の未活用が縮小を続けていることを示唆している。家計支出は緩やかに増加しているようだ。企業設備投資は拡大している一方、住宅部門の回復は引き続き緩慢だった。エネルギー価格の下落を一部反映し、インフレ率は委員会の長期目標を下回り続けている。市場に基づくインフレ補償の指標は一段と幾分低下した。サーベイに基づく長期的なインフレ期待の指標は安定したままである。 | Information received since the Federal Open Market Committee met in October suggests that economic activity is expanding at a moderate pace. Labor market conditions improved further, with solid job gains and a lower unemployment rate. On balance, a range of labor market indicators suggests that underutilization of labor resources continues to diminish. Household spending is rising moderately and business fixed investment is advancing, while the recovery in the housing sector remains slow. Inflation has continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting declines in energy prices. Market-based measures of inflation compensation have declined somewhat further; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable. |
政策の基本スタンス 政策効果の見通し インフレ見通し |
法で定められた使命に整合するように、委員会は最大限の雇用と物価安定の促進を目指している。委員会は適切な緩和策により経済成長が緩やかなペースで拡大し、労働市場の指標は委員会が二重の使命に整合的と判断する水準に向かうと予想している。委員会は経済および労働市場の見通しに対するリスクは一段とほぼ均衡したと見ている。委員会は労働市場が一段と改善し、エネルギー価格低下の一時的影響およびその他要因が解消すれば、インフレが2%に向けて緩やかに上昇すると予想する。委員会はインフレ動向を注意深く観察し続ける。 | Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators moving toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate. The Committee sees the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced. The Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent as the labor market improves further and the transitory effects of lower energy prices and other factors dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely. |
金融政策 今後の方向性 忍耐強く待つ →新しいガイダンス 「相当の期間」 との整合性 政策変更 経済情勢による |
最大限の雇用と物価安定に向けた進展が続くことを支援するため、委員会は現行の0~0.25%というFFレート誘導目標レンジが引き続き適切だとの見方を本日再確認した。この目標レンジをどれだけの期間維持するかを決定する上で、委員会は最大雇用と2%のインフレ率という目標に向けた進展の実績と見通しの双方を評価していく。この評価では、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力およびインフレ期待の指標、金融動向を含む広範な情報を考慮する。これらの要因の評価に基づき、金融政策スタンスの正常化を忍耐強く待つことが出来ると委員会は判断している。委員会はこのガイダンスが、特に予想インフレ率が委員会の長期目標である2%を下回り続け、長期インフレ期待が十分に固定され続けているならば、10月の資産買取りプログラムの終了後も相当の期間、0~0.25%のFFレート誘導レンジを維持することが適切になる公算が大きいという前回の声明文と整合的だと見ている。しかし、今後入手される情報が、委員会の雇用および物価の目標に向けて、委員会が現在予想するよりも迅速な進展を示す場合、FFレート誘導目標レンジの引き上げは現在想定されているよりも早期かつ迅速に実施されるだろう。一方、予想よりも進展が緩慢なことが示された場合、目標レンジの引き上げは現在想定されているよりも遅く実施されるだろう。 | To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments. Based on its current assessment, the Committee judges that it can be patient in beginning to normalize the stance of monetary policy. The Committee sees this guidance as consistent with its previous statement that it likely will be appropriate to maintain the 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate for a considerable time following the end of its asset purchase program in October, especially if projected inflation continues to run below the Committee's 2 percent longer-run goal, and provided that longer-term inflation expectations remain well anchored. However, if incoming information indicates faster progress toward the Committee's employment and inflation objectives than the Committee now expects, then increases in the target range for the federal funds rate are likely to occur sooner than currently anticipated. Conversely, if progress proves slower than expected, then increases in the target range are likely to occur later than currently anticipated. |
資産規模の維持 | 委員会はエージェンシー債とエージェンシー・モーゲージ担保証券の元本償還金をエージェンシー・モーゲージ担保証券に再投資する既存の政策および満期を迎えた国債の入札でのロールオーバーを維持する。高水準の長期証券を委員会が保有し続けるというこの政策は緩和的な金融環境を維持する一助となる。 | The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions. |
緩和解除の環境 | 委員会が緩和策の解除の開始を決定する際は、最大限の雇用と2%のインフレ率という長期目標に整合的なバランス・アプローチを用いるだろう。委員会は、雇用とインフレが使命に整合的な水準に近づいた後でも、しばらくの間、経済状況がFF金利を委員会が長期的に正常だと見る水準よりも下に維持することを正当化する可能性があると現在予想している。 | When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run. |
賛成者と反対者 | FOMCの金融政策措置への賛成者は:ジャネット・L・イェレン議長、ウィリアム・C・ダドリー副議長、ラエル・ブレイナード、スタンレー・フィッシャー、ロレッタ・J・メスター、ジェローム・H・パウエル、そしてダニエル・K・タルーロ。 この措置に反対したのは、委員会は金融政策の正常化に辛抱強くあるべきだが、10月以降の米国経済実績の改善が、FF金利の引き上げが適切となる時期を大半の委員会が想定するよりも大幅に前倒ししたという考えるリチャード・W・フィッシャー、低インフレの継続および市場に基づく長期インフレ期待指標の下落を背景に、委員会の決定は2%インフレ目標に対して不当な下方リスクを作り出したと考えるナラヤナ・コチャラコタ、声明文は時間の経過をフォワード・ガイダンスの重要な要素として強調すべきではなく、経済状況の改善を踏まえ、現在のフォワード・ガイダンスと前回声明の整合性を強調すべきではないと考えるチャールズ・I・プロッサーだった。 |
Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Stanley Fischer; Loretta J. Mester; Jerome H. Powell; and Daniel K. Tarullo. Voting against the action were Richard W. Fisher, who believed that, while the Committee should be patient in beginning to normalize monetary policy, improvement in the U.S. economic performance since October has moved forward, further than the majority of the Committee envisions, the date when it will likely be appropriate to increase the federal funds rate; Narayana Kocherlakota, who believed that the Committee's decision, in the context of ongoing low inflation and falling market-based measures of longer-term inflation expectations, created undue downside risk to the credibility of the 2 percent inflation target; and Charles I. Plosser, who believed that the statement should not stress the importance of the passage of time as a key element of its forward guidance and, given the improvement in economic conditions, should not emphasize the consistency of the current forward guidance with previous statements. |
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