以前、為替の世界はドルが主体のため、米国のGDPが最も重要であり、市場で注目されるという話をしました。しかし、現在のドル円相場は、日本の金融政策、政局動向、消費税増税動向、そしてその判断材料となる日本のGDPで動いていますので、今回は日本のGDPに触れてみたいと思います。

11月17日に発表された日本の7-9月期実質成長率(GDP)で特徴的な点は、エコノミストの予想が年率換算で+2.0%だったのに対し、発表結果は▼1.6%とプラスではなくマイナス、かつ予想を大幅に下回ったことです。これだけ予想とかけ離れた経験はないと、あるエコノミストのコメントもある程です。

実績は、全ての項目で予想より下目に出ていますが、大きく下回っているのは個人消費と設備投資です。やはり、消費税増税後の駆け込み需要→反動落ち→消費回復の過程を甘く見ていたことになります。これは、政府も同じで国会の議論でも強気の姿勢を貫いていましたが、結果は、景気の回復がもたついたため、消費税増税延期、衆議院解散に追い込まれました。

GDPの構成比率

GDPの構成比率の中で民間需要では消費と設備投資が大きく寄与しています。

消費

消費は、GDPの約60%を占めているため、消費動向が最も景気に左右されます。個人消費の伸び率は、5四半期平均でみると▼0.42%となり、消費はこの1年3ヶ月全く伸びていないということになります。これでは景気はなかなか回復しません。回復の道のりは遠いです。

設備投資

設備投資はGDPの約13%を占めています。消費が低迷すると企業も設備投資を控えることになります。結局は設備投資も消費に左右されるということになります。

純輸出

純輸出(輸出―輸入)はGDPの構成比率としては数%の項目です。

円安で輸出が伸びるということもアベノミクスの狙いのひとつでしたが、世界需要の落ち込みと日本企業の海外生産の増加によって、これほど円安に行ってもほとんどGDPへの寄与はありません。ただし、通貨安による即効性は高いため、輸出依存度の高い国にとっては、景気回復の即効薬として通貨安政策を好むことになります。

在庫

今回、エコノミストの予想を狂わせた大きな要因として企業在庫の増減があります。企業が在庫を積み上げればGDPのプラス要因となり、企業が在庫を取り崩せばマイナス要因となります。今回は、この読みが狂ったということになります。景気が回復し、消費が増え、在庫が減るとの予想とは違った循環、つまり、消費の低迷から企業は出荷を抑え、生産を減らすことによって在庫が予想以上に減少した循環になったようです。

GDPの統計の発表種類と予定は頭に入れておくと相場予測に役に立ちます。今後の日程は財務省や内閣府のホームページで確認できます。

現時点のGDPとマーケットの動き(環境によって変わります)

GDP増加  → 株高 → 日銀追加緩和期待、後退 → 円高(株高による円安も)
GDP減少  → 株安 → 日銀追加緩和期待高まり → 株高、円安

GDPの構成比率

個人消費  約60%   日本の景気を大きく左右
設備投資  約13%   消費動向によって左右、海外需要動向も重要
純輸出(輸出―輸入)   数% 通貨安による景気回復即効性は高いが、日本は低い