まずは下表を見て下さい。

過去の衆院解散・総選挙と日経平均株価の騰落率

 

解散時の内閣 解散日 解散日→
投開票日
投開票日→
1か月後
為替の動き
第1次田中 1972/11/13 7.1 7.5  
第1次大平 1979/09/07 2.1 -2.7  
第2次大平 1980/05/19 2.7 0.3  
第1次中曽根 1983/11/28 2.9 5.6  
第2次中曽根 1986/06/02 5.1 -1.4  
第1次海部 1990/01/24 1.9 -12.9 144円台→2ヶ月後160円台
宮沢 1993/06/18 2.7 2.2 108円台→1か月後100円台
第1次橋本 1996/09/27 0.3 -2.0 112円台→4か月後124円台
第1次森 2000/06/02 1.0 -2.3 105円台→6か月後112円台
第1次小泉 2003/10/10 -1.3 -4.7 108円台→5か月後112円台
第2次小泉 2005/08/08 7.8 6.8 110円台→3か月後121円台
麻生 2009/07/21 9.1 -3.8 93円台→3か月後85円台
野田 2012/11/16 7.9 8.9 80円台→5か月後95円台

株価にとって「解散は買い」のようです。与党の勝敗に関係なく、少なくとも解散総選挙は株価が上がりやすいという経験則があるようです。1970年以降の解散総選挙と日経平均の騰落率をみると、解散日から投開票日までの騰落率は「12勝1敗」でした。また、投開票日から1カ月後までの騰落率をみると「6勝7敗」となっていることも頭の中に入れておく必要があります。解散から投票までは買われ、投票後は利食いに押されるということかもしれません。

一方、為替の動きを見ると、1990年以降の動きになりますが、与党が大勝すると、それまでの流れを引き継ぐ傾向があるようです。総じて自民党大勝は円安傾向、民主党勝利は円高という動きでした。もちろん、為替の変動要因はもう一方の通貨国である米国の要因や他の要因にも大きく左右されるため、株価程一方的でないことも留意しておく必要があります。

現在の円安は、アベノミクスの結果によってもたらされと言っても過言ではありません。従って、今回の選挙のテーマである「アベノミクスを問う」ということは、「円安を問う」ということに置き換えることが出来ます。円安によって、確かにデフレからの脱却が進んでいますが(足元は停滞していますが...)、円安の効果は大手輸出企業にしかメリットはなく、その効果も世界需要の減退と日系企業の現地化で限定的となっています。一方、円安の副作用は中小企業のコスト増と家計の生活を直撃しています。「円安を問う」選挙は、このような環境の中で行われる選挙ということになります。解散宣言後も円安が進行しているので、選挙を考慮し円安牽制発言が出て来るかもしれませんが、与党大勝となれば再び円安の流れを引き継ぐことが予想できます。しかし、リスクはないのでしょうか。やはり、株価の動きは気になります。アベノミクスによる円安の動きは、アベトレードと言われるように「株買い・円売り」を海外勢が好んで仕掛け、株と連動して動いてきました。この連動性を考慮すると、株価が選挙後、もし、失速するのならドル円も失速するかもしれないというシナリオを考えておく必要があります。

もうひとつ、注目する動きがあります。

ドル建て日経平均

2013~2014年にかけて、日経平均の株価は円建てで2倍になりましたが、ドル建てでは4割程度しか上昇していません。これは、円安がかなりのスピードで進行したことによります。海外投資家は、よく2005年の小泉首相による郵政解散時の「郵政相場」を引き合いにだし、その再来を期待しています。郵政相場では、解散直前から2006年末までで、円建ての日経平均が46%上昇しましたが、ドル建ての日経平均でも37%高となりました。円安が進み過ぎると、ヘッジをしない海外投資家にとっては株の上昇の恩恵も半分以下になるということになります。郵政相場の再来になるのなら、円安のスピードが緩むか、円安以上に、あるいは円安に頼らず株が上昇することが必要です。従って海外投資家は選挙後の成長戦略や改革案を大いに期待しています。それがなければ、ドル高と米国株高の両方を享受できる米株の方が魅力的ということになります。

このドル建て日経平均ですが、2005年の郵政相場の時でも、150ドルで跳ね返されています。過去、150ドルは海外投資家から見ると、ひとつの大きな壁になっています。日経平均18,000円と120円でちょうど150ドルになりますが、今回は、この壁を抜け切れるのでしょうか。18,000円も、150ドルも、そして120円もそれぞれの市場では大きな重要ポイントでもあります。これに、投開票後の株価の経験則、そしてクリスマス休暇、年末という時間的要因が加わるため、12月とは言え、相場はかなり乱高下することが予想されます。