ドル円の相場を予測するためには毎日発信されるニュースや新聞情報を分析し、判断していく必要があります。しかし、日々のニュースや新聞情報は断片的な情報しか伝えていません。もちろん、断片的な情報で単発的に為替相場が反応することはよくありますが、大きな流れを捉えるためには、そのニュースがどのような意味合いをもつのか、今後の世界経済や政治にどのような影響を与えるのかを考える必要があります。そのためには、過去の経済や政策の大筋を理解しておくことは非常に役に立ちます。
下図は、1999年以降の経済事件の大きな流れを示しています。ここ数年の動きを理解するためには、1999年を起点とする10年間の出来事を理解することが重要です。この10年間は実にさまざま出来事が起こりました。現在起こっていることは、この時期に起こったことが原因や遠因になっています。この流れを知っているか知らないかでは相場の見方に違いが出てきます。
1999年以降10年間の世界経済の動き ~ リスクは民間から国家へ
- 1999年ユーロが誕生。第二の基軸通貨あるいはドルに取って代わる基軸通貨との期待から誕生したが、その間イタリア、ポルトガル、ギリシアなどは強い通貨と低金利を享受。経済はバブル気味となり、加えて放漫財政により2010年ギリシア・ショックが発生。ユーロ体制は10年しか持たず、ユーロ圏の中で強いユーロ圏と弱いユーロ圏が同居するという構造的矛盾を露呈。ギリシア・ショックとは、ユーロ圏に留まる財政規律条件をクリアするため、デリバティブを使って財政赤字を縮小していたことが露呈した事件。国債金利が急上昇し、資金調達が出来ずユーロ各国が支援。その後イタリア、ポルトガル、スペインと財政基盤の弱い国に波及。
- 2000年、米国でITバブルが発生し、バブルが崩壊。
- 2001年、米国9.11同時多発テロが発生し、景気が急減速。金融緩和で対応
- ITバブルの崩壊、9.11テロの影響による景気後退を米国は1%まで政策金利を引き下げ、低金利で対応。
- 2005年、米国の低金利政策によって米国住宅市場はバブルとなり、この年がピークに。FRBは2004年から金利を引き上げ住宅バブルに対応。
- 2007年、米国の住宅ローンのひとつであるサブプライムローン問題が発生。サブプライムローンを証券化した商品は全世界の投資家に販売され、金融の引締めとともに損失が発生。米国ではなく欧州のパリバ銀行傘下のファンドが経営不安に(パリバ・ショック)。
- 2008年、リーマン・ショックが発生。米国リーマンブラザーズがサブプライムローン問題で巨額の損失を抱え破綻。米国政府が救済すると市場は期待したが、破綻したことで市場に衝撃(ショック)が駆け巡った。FRBは金利を引き下げ、金融緩和で対応。
- 2009年、ドバイ・ショックが発生。ドバイの政府系持株会社が債務返済繰り延べを要請。世界同時株安が発生。リーマン・ショック後の信用収縮が世界的に波及しているとの認識を与えた象徴的な事件。
- リーマン・ショックを受け、世界的に信用が収縮し、各国は財政拡大で対応。信用のリスクは民間から国家リスクに移転。
- 2010年、ギリシア・ショックに対応するため、ECBは資金を無制限で融通し、各国は財政削減計画を発表し対応。
- 2011年以降、欧州債務問題は世界経済の時限爆弾になったが、中国をはじめとした新興国が世界経済を支える形に。
- 米国は景気減速を超低金利と量的緩和拡大で対応
- 2013年、アベノミクスによって日本の株価が上昇し、日本の景気が回復
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2014年、世界経済はこれまでの出来事の総決算となるような分岐点に直面する可能性
- (米国)
- 1-3月期は悪天候の影響でマイナス成長だったが、その後回復。しかし、株価に天井感が出てきており、株上昇による資産効果が剥落する可能性。また、ドル高の悪影響、新興国の景気後退により回復に力強さが伴わない可能性も。
- (日本)
- アベノミクス効果が後退。消費税増税と円安により消費減退し物価上昇も伸び悩み
- (欧州)
- ロシアに対する経済制裁も加わり景気減速が鮮明に。デフレ回避のためにマイナス金利と通貨安誘導に。
- (新興国)
- 米国の量的緩和縮小によって新興国の通貨、株式市場は大混乱。また、中国も景気が減速し、新興国全般の景気は減速へ。資源価格下落の動きも景気に影響
以上が、1999年以降の大きな流れとなります。
10月10日に閉幕した20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議、いわゆるG20では、世界経済の下振れ懸念が確認されました。対応するための財政出動や金融緩和など政策の足並みがそろわず、共同声明の発表も見送られました。最近のドル高については、これまで米国は「強いドルは米の国益」とドル高を容認してきましたが、日欧に通貨安誘導を牽制する場面も見られました。米国内に影響を与えるこれ以上のドル高に対しては容認姿勢を変えてくるかもしれません。
世界経済が減速する局面は、1999年以降でも何度かありましたが、各国の政策によってこれまでは対応してきました。しかし、各国の政策の許容度が低くなってきており、この先の景気減速の対しての対応スピードは鈍くなってくる可能性があります。また、これまでは、どこかの地域の好景気が他の地域の景気悪化をカバーしてきましたが、現在では米国の景気回復のみに頼るしかありません。しかし、その米国景気も日欧や新興国の景気後退によって、また株価の調整が続くと資産効果の剥落から足踏みするかもしれません。米国の景気回復だけでは世界経済を支え切れないという苛立ちが、ルー財務長官の発言に表れているのかもしれません。
2014年は、これまでの出来事の総決算となるような分岐点に直面する可能性があります。
以上述べた過去の出来事を何度も読み返し、今後の世界経済の流れを見る上での参考にして下さい。為替相場の大きな流れを予測する上で大いに役に立つと思われます。
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