1ヶ月ほど前になりますが、ドル円は9月16-17日のFOMCの結果を受けて108円台から109円台に上昇しました。FOMCは、QE3の証券購入額月額250億ドルを10月から100億ドル減らして150億ドルにすることを決定しました。このこと自体は予想通りですが、何がドル円を押し上げたのでしょうか。
前回、今回のFOMCの注目点は以下の3点とお話しました。
- 声明文の中の超低金利継続期間を示す文言「相当の期間」が残るのか削除されるのか
- 今回発表されるFOMCの各委員が示す利上げ時期の見通し
- イエレン議長のFOMC後の記者会見
まず①の「相当の期間」の文言については削除されず据置かれました。また、イエレン議長は記者会見で、
(1)6月のFOMC時点から米経済の見方に大きな変化はなく、声明の表現は適切であると説明
(2)労働市場は「改善してきたが、活用されていない労働力がかなり多い」と指摘
(3)特にインフレ率が2%を下回る間はゼロ金利政策の維持が適切と、従来の雇用とインフレの懸念事項に言及し、当面ゼロ金利政策を継続すると強調しました。
イエレン議長自身は、金利を上げるとか時期が前倒しになるとかは一言も触れていません。ゼロ金利の解除時期は経済データ次第で予断を持たないと明言しています。
しかし、マーケットが注目したのは、FOMC委員の将来の政策金利水準の予想でした。
FRBはFOMCの会合後、中期の政策金利見通しと経済見通しを公表します。
今回2014年9月時点のFOMC委員の中期政策金利見通しは、
2015年末金利予想(中央値) | 前回(6月時点)年1.125 % |
---|---|
今回(9月時点)年1.375 % | |
2016年末金利予想(中央値) | 前回(6月時点)年2.500 % |
今回(9月時点)年2.875 % |
ポイントは、
- 前回よりも金利予想が上昇しており、マーケットはこのことに反応し金利高、ドル高となった。伏線は、9月8日 に発表されたサンフランシスコ連銀のレポート。「FOMC委員に比べると市場はより緩和的な政策を想定している」と指摘し、投資家が自分たちの見方は甘すぎると動揺。今回のFOMCの金利予想はこのことが裏付けされる見通しとなった。また、今回のFOMCでゼロ金利継続への反対票が一人から二人に増えたことも、FOMC内で利上げ前倒しの議論が活発になり始めているとの見方を市場に与えた。
- 金利数値の刻みが25bp⇒12.5bp(0.25%→0.125%)になっていることに留意。今後、FRBは小刻みに金利を変更してくる可能性があることを示唆。ただこのペースだと1%金利をあげるのに8回かかることになり、ほぼ1年で1%ということになる。従来のFRBのペースと比べるとかなりのスローペースである。
FOMCの公式経済予測(中心的傾向)
(Q4/Q4比%) | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 長期見通し |
---|---|---|---|---|---|
実質GDP成長率 | 2.0-2.2 | 2.6-3.0 | 2.6-2.9 | 2.3-2.5 | 2.0-2.3 |
6月予測 | 2.1-2.3 | 3.0-3.2 | 2.5-3.0 | n.a. | 2.1-2.3 |
失業率(10-12月期平均) | 5.9-6.0 | 5.4-5.6 | 5.1-5.4 | 4.9-5.3 | 5.2-5.5 |
6月予測 | 6.0-6.1 | 5.4-5.7 | 5.1-5.5 | n.a. | 5.2-5.5 |
PCEインフレ率 | 1.5-1.7 | 1.6-1.9 | 1.7-2.0 | 1.9-2.0 | 2.0 |
6月予測 | 1.5-1.7 | 1.5-2.0 | 1.6-2.0 | n.a. | 2.0 |
コアPCEインフレ率 | 1.5-1.6 | 1.6-1.9 | 1.8-2.0 | 1.9-2.0 | - |
6月予測 | 1.5-1.6 | 1.6-2.0 | 1.7-2.0 | n.a. | - |
ポイントは、
①2014~2015年のGDP成長率見通しが下方修正
③失業率見通しおよびインフレ見通しは6月FOMC以降の改善を反映しかし、インフレ率は、長期見通しをみてもターゲットである2%を超えていないため、緩和をやめる理由がないことになる。FRBが将来政策を変更するのであれば、インフレについてどういう見方をするのか今後の議論に注目。
以上の金利と経済の見通しは定期的に見直しされます。FOMCの姿勢(スタンス)を理解する上での定点観測になるため、今後の相場を予測する中で頭の中に入れておくと役に立ちます。
金利上昇ペースに比べると過剰反応か
今回のFRBの見通しは、GDPは下方修正、失業率は多少改善するが、インフレは2%以内と低インフレが続き、そして政策金利を上げるにしても、0.125%の小刻みであり、1年で1%、2年でも2%のスローペースとのこと。これではドル高がどこまで持続するのかやや疑問を感じます。最近のドル円の動きは1ヶ月で5円超の値動きをしており、金利前倒し観測だけでドル高になっているとすれば、この金利上昇ペースに比べると過剰反応ではないかという印象は拭えません。
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