NYダウが“マド空け”で上値抵抗線をブレイク
NYダウが2万ドルの節目を超えてきた。昨日のNY時間に株の運用者に話を聞いたが、「あまり買いたくはないが、“マド空け”でトレンドラインをブレイクという買いパターンが出たので、とりあえずストップを置いて買い出動している」のだと言う。
NYダウ(日足) “マド空け”でトレンドライン(上値抵抗線)をブレイク!
NYダウ(日足) まだ、強力な買いトレンドの示唆はない
上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)
NYダウ先物の買いポジションは依然として高水準で高止まっており、このポジションがある程度整理されないと大幅な上昇は期待できないのが通常のパターンであるが、この市場はまだ<買いの連鎖>が続いているようだ。
1月16日に改定されたIMFの経済見通しで世界経済の景況感が下げ止まったことや、企業業績や経済指標が好調なことに加え、トランプ大統領が就任直後から大統領令を連発していることで、トランプラリー第二幕相場を期待する声が多いのだという。
1月17日現在のNYダウ先物のポジション CFTC発表
買いポジションが高水準で高止まり
米国株の上昇で米長期金利も反発して上昇となっており、米金利上昇初期段階の金利上昇と株高の流れは継続している。米長期金利もNYダウも、現在トレンドが不明瞭な動きとなっている。トレンド指標、即ち、14日修正平均ADXや26日標準偏差ボラティリティが上昇に転じてくるのかがここから数日の焦点となろう。
米10年国債金利(日足) トレンド発生は2月1日のFOMC後か?
上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
1月17日現在の米10年国債先物のポジション CFTC発表
金利上昇に賭けて売りポジションが例をみないほど拡大している
流れが変わったのはドル相場である。先週のレポートで取り上げたが、ウォールストリート・ジャーナルが1月17日に「ドル高が進んだ場合には、価値を引き下げる必要があるかもしれない」というトランプの発言を掲載し、ドル安誘導の可能性に言及したため、ドル高に対する警戒感が市場に拡がっている。ドル/円も非力ながらドル売り基調の相場が続いている。
ドルインデックス先物(日足) 1月にドル高相場が反転
上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
ドル/円(日足) 非力ながらドル安基調が続いている
上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
1月17日現在の円のポジション CFTC発表
投機筋の円売りポジションは減っておらず高水準で高止まりしている
ポジション調整が必要か・・?
日経平均(日足)
上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)
トランプの一挙一動に注目する相場が続いている。日替わりメニュー的な動きが多い直近の相場だが、需給中心の投げと踏みの応酬相場となっているようだ。2017年の相場はトランプとイエレンFRBの政策のバランスで揺れ動くだろう。2月1日のFOMCと2月上旬(2月6日前後か・・?)に発表が予定されているトランプの予算教書をみながら、ファンド勢は3月辺りまでの投資方針を決めてくるだろう。
楽観相場の転機は何時か?そのシグナルは?
すこし、長い目で相場をみてみよう。筆者はレポート、セミナ、ラジオ等で述べているように基本的に年前半の相場は株高・円安が維持されるとみている。しかし、年後半の相場にはかなり警戒感を抱いている。もちろん、それは漠然とした予測であり、予測とテクニカル分析が合致しなければポジションをとることはない。
米国の景気拡大は2017年1月で91か月目に入る。これまでの景気拡大期の平均は58か月であり、現在の景気拡大期間はかなりエクステンション(延長)しているといえよう。フィラデルフィア連銀の<不安指数>やセントルイス連銀の<リセッションモデル>は景気後退への警告は発しておらず、市場参加者の行動を反映するVIX<恐怖指数>やセントルイス連銀の<金融ストレス指数>をみても市場は総楽観と言える状況で、相場下落への準備が全くできていない。
フィラデルフィア連銀の<不安指数>
セントルイス連銀の<リセッションモデル>
VIX恐怖指数
セントルイス連銀の<金融ストレス指数>
こうした総楽観の状況はしばらく続くだろうが、筆者はトランプが打ち出している保護主義的な政策が、市場に期待されているほどうまくいくとは思っていない。
トランプバブル相場がどこまで延命できるかは、実はトランプの政策ではなく、イエレンFRBの金融政策にかかっているのではないだろうか?筆者はないと思っているが、仮にFRBが市場の予測より早めに金融を引き締める(利上げを急ぐ)ようだと、マーケットは癇癪を起すだろう。
米国のイールドカーブ
(現在の米国のイールドカーブは上昇基調である。このイールドカーブがフラット化してくると、米国の株式市場に転機が・・)
米著名投資家ラリー・ウィリアムズは、「GDPが450億ドルの伸びに対して、債務は2.2兆ドルに膨れ上がっている。この対GDPの債務率は過去最大である。金利の引き上げはGDPの低下に直結する。まるで、マイク・タイソンのパンチのように強烈なダメージをもたらす」と述べているが、FRBが急いで金利を引き上げるだけで米国のGDPは下がってしまうのである。
米国の失業率が低下しているのはオバマケアの影響が大きく、正社員を1人クビにして、それに代わって保険料を払う必要がないパートターム労働者を3人雇用しているからである。米国の雇用者数は1億4500万人で月間の失職者は150万人に及ぶ。トランプのアメリカ第一主義という保護主義的な政策で雇用を増やしたとしても、その効果は限定的だろう。米国経済はラストベルトに高給職が増えるような構造にはなっていない。
米国の失業率が低下しているうちは株価の暴落は考えにくい。しかし、今後は米国の失業率に注目すべきであろう。トランプ政権はオバマ政権からこれ以上失業率が下がりようのない完全雇用と91か月間景気拡大という景気過熱の状態で政権を引き継いでいるからである。
米国の雇用の増減と失業率
日経新聞の前田昌孝氏に頂いた資料では、民主党から共和党に政権が移行した場合の初年の景気と株価はかんばしくない結果が出ているようだ。
民主党から共和党に政権が移行した場合の初年の景気と株価
著名投資家マーク・ファーバーは、「トランプ政権のスタートは、レーガンほど"幸運"な経済・金融環境ではない」と指摘している。FRBとしては2019年にかけて毎年数回利上げを行う腹積もりらしいが、うまくいかないだろう。既に歴史的な割高水準まで買い進まれている米国株が、FRBの複数回の利上げに勝てるとは思えない。
1982年と2016年の米主要経済・金融指標
トランプノミクスはレーガノミクスの再来と言われているが、経済状況は全然違う
利上げ3回目まではバブルは延命する?
何度も述べているが、現在、株もドルも大きく下げないのは、まだ、米国の金利上昇の初期段階だからだ。米国の景気や経済指標は悪くないということで、いいとこ取り相場が続いている。こうした金利高とドル高と株高の共存は、<利上げ3回目までは続く>可能性が高い。米国株が大きく下がらない限り、リスク回避の円高の動きも限定的であろう。
NYダウ(週足)と米国の金融政策
「トランプは不動産屋。自分の事業が損をするような政策をするはずがない」という思惑でバブル相場がスタートしている。米利上げ3回目までは基本的にリスクオンか?
新しいDVD『相場で道をひらく7つの戦略-短期売買実践編』(石原順) が楽天ブックスで好評発売中です。
日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。