Brexit(英国の EU 離脱)ポジションは手仕舞い

今週のマーケットは、英国の EU 離脱の是非を問う国民投票のブックメーカー(賭け屋)や世論調査の結果でアルゴリズムなどの一部短期筋が売買しているだけで、基本は様子見のマーケットである。

先週のレポートで、「米投資会社ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)は、英国の欧州連合(EU)残留・離脱を問う国民投票について、一部の世論調査での離脱派リードにもかかわらず、実際には離脱が否決される可能性が高い」と語っている。(ブルームバーグ 2016年6月15日)」と書いたが、市場は今を時めく当り屋ガンドラックの予想に基づいて、ポンドとユーロを買い戻しに動いた。ドル/円も上値が重いものの、買戻し相場となっている。Brexit(英国の EU 離脱)に向けて構築された売りポジションをとりあえず買戻し、あとは結果をみてから動こうというのが市場参加者の姿勢だろう。

英国民投票は日本時間の 24 日午前 6 時に締め切られ、結果が判明する午後 3 時頃まで続く。筆者が懸念しているのは、日本株の出来高や売買代金をみていればわかるように、昨今の相場は市場参加者が減少し、流動性が大幅に低下していることである。こうした市場環境下では、アルゴリズム売買の相場への影響力が大きいので、選挙情勢をめぐる報道で相場が乱高下する可能性がある。売り方も買い方も振らされやすい環境にあるということである。

日本市場は世界のリスクのヘッジ市場となってしまったようだ。以下のチャートを見ていただきたい。ポンド/ドルはBrexit(英国の EU 離脱)の本命通貨である。そのポンド/ドルは現在、年初来高値を更新して上げている。今週の相場はショートカバー主導とはいえ、当事者の英国人は意外なほどBrexit(英国の EU 離脱)に冷静なのである。

組織というのは敵や仮想的な敵がないとまとまらない。現在はEUを統合する大義名分というのが、見出しにくい状況にある。あるファンドマネージャーは「EUというのはグローバルな拡大を目指しているわけではなく、その反対であるブロック化の流れである。英国にとっては、EUというブロックから出ていこうが留まろうがあまり問題ではない。経済的な問題というより、政治的な問題だ」「多くの投機筋が大儲けを狙っているのは、Brexit(英国の EU 離脱)などではない。中央銀行バブルの崩壊だ」と述べている。

トレンドの発生と消滅

(出所:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~標準偏差ボラティリティトレード~」石原順)

ポンド/ドル(日足)
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

一方、ドル/円はBrexit(英国の EU 離脱)問題で一番軟調な動きとなっている。なぜ、Brexit(英国の EU 離脱)で円が買われなければならないのか、日本人としては腑に落ちないが、海外の運用者から見れば、「日本は相場操縦の限界を露呈しているし、過去数年間のPKOのツケを払う循環が現在到来しているのだ」ということになるらしい。

ドル/円(日足)
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ポンド/円(日足)
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ユーロ/円(日足)
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青) 
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

日経平均先物(日足)
上段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(青) 
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

日経平均先物(日足)
上段:25日エンベロープ±5%(青)・±10%(赤)
下段:3日修正平均ADX
日足相場では<3日修正平均ADX>が70以上や30以下になった時が相場転換の領域となりやすい。相場の転換ポイントは矢印のポイントである。<3日修正平均ADX>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法で、ストップロス注文(トレール注文=トレーリングストップ注文)を置いて参入し、失敗すれば直ちに撤退、トレール注文で利益の極大化を狙う売買手法である。

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ドル/円(日足)
上段:13日エンベロープ±1%(青)・±2%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

筆者はブログ『石原順の日々の泡』でご案内の通り、イベントリスクと流動性リスクを避けるため、大方のポジションを手仕舞ってしまった。後は、英国の EU 離脱の是非を問う国民投票の結果やその他の相場の材料を吟味しながら、次のトレンドについていくだけである。

2016年後半相場の注意点

筆者が2016年の後半相場で一番注目しているのは米国の利上げである。利上げが行われるかどうかについては、S&P500の株価の位置を重視している。FRBはS&P500が2134を上回れば利上げするし、1800を下回れば利下げするとみており、今後、米国株が上がってくれば、逆に利上げへの注意が必要になるのではないか・・と思っている。現在の相場は中央銀行が値付けをおこなっている。そして、すべてのバブルを異常低金利が支えている。

S&P500株価指数(日足)FRBの政策(利上げ)は株価次第?
1,970~2,134ポイントは強烈な抵抗圏

(出所:石原順)

このレポートで取り上げた売買手法の詳細はDVD『相場で道をひらく7つの戦略-短期売買実践編』(石原順)で取り上げております。興味のある方はご参照ください。

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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。